総意なきボカロシーンを牽引するryo、その本質に迫る
VOCALOIDクリエイターのパイオニアにして、
新しい音楽家の一つのロールモデルとなったryo。
本誌初登場にて、そのスタンスと本質を探る
■ryoさんはVOCALOIDシーンから出てきたクリエイターのパイオニアで。今日はそういう立場からシーンをどう捉えているかも含め、いろいろ伺いたいと思っています。
「よろしくお願いします」
■まず12月にsupercellとEGOIST、両名義でそれぞれ新しいシングルがリリースされますが。今のryoさんって、日本のポップスを更新していくような活動の広げ方や制作の方向に向かっているのかなと感じていて。ご自分ではsupercellというものの立ち位置や在り方をどう捉えてますか?
「やっぱり匿名性の高い音楽がずっと好きだったんですよ。BOOM BOOM SATELLITESが凄く好きで、昔いたSILICOMってユニットとか半野喜弘さんとか、エレクトロニカ系の音楽が凄い好きだったんです。名前がどうこうとか、その人の精神性がどうこうとかじゃない、音を聴いたら『あ、この人の曲だな』ってわかる、音色だけで差をつけていく音楽が好きだったんです。自分の場合は、そういう匿名性や記号性の高い音楽をしてると思うんですけど。実際、顔出しもしてないしライヴもしてないので。それはVOCALOIDシーンから出てきてる人特有の感じなのかなって思うんですけど」
■それって、音楽純粋主義みたいなもの?
「というか単純に、自分はそういうものしかできないと思うので。KING BROTHERSとかTHE BACK HORNとかも好きなんですよ。ロックバンドもカッコいいなと思うんですけど、でも、そこには音楽的にいろいろ積み立てて、コードがどうのっていうのとは全然違う観点も入っていて。自分はそこで音楽的な部分に目が行ってしまうタイプの人間なんですね。それがわかっているからこそ、ポップスをやってるんです。サウンドがロックっぽくても、確実に自分はポップスをやってると思ってますね。自分はそっちのシーンではない、と」
■要するに、精神性や生き様、その人間の在り方みたいなものも含めて、ひとつの音楽やエンターテイメントになっていくロックとは違う、純粋に楽曲や音を突き詰めていくタイプの音楽家だと。
「まぁ、よく言うとそうなんですけど、単純にそういうものになれなかったから、これをやってるとも言えると思います(笑)」
■2012年って初音ミクが出てから5年、ニコ動が本格的始動してから5年という年だったんですけど、ryoさんはミクを使って楽曲をニコ動にアップしていった一番最初の世代で。当時、そういうことをやろうと思ったのは何故だったんですか?
「あんまり特別な理由があったわけではなくて……ニコニコ動画が周りで流行ってたんですよね。先輩がβ版の頃に教えてくれて、ネタの場として楽しんでて。くだらない動画がいっぱいあって、自分はそれを観て笑う側だったんですけど、初音ミクが出たことによって、自分も音楽だったらその輪の中に混じれるかなって思って。で、最初はアニソンのカヴァーをやってたんですけど……だから何がしたいっていうよりは、当時はニコニコ動画に投稿して遊ぼうって思ってた感じですね」
(続きは本誌をチェック!)
text by 有泉智子
『MUSICA 1月号 Vol.69』のご購入はこちら