Posted on 2013.12.15 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、
初モノ尽くしの1年と新曲を語る

 

運動会を見守る母親のような、
「うちの子、頑張ってるわ」みたいな感じ(笑)。
その延長上にBUMP OF CHICKENもあって、
それがちゃんと歩いてきたんだなって感じなんです。
そこは僕らも認めてあげたいし、褒め讃えてあげたいんです(藤原)

 

『MUSICA 1月号 Vol.81』P.24より掲載

 

■2013年の最後の号、1年を総括する特集になるんですが、BUMP OF CHICKENも今年は非常に素敵な1年を送ったことと思います。まずはそれを振り返りましょう、よろしくお願いします。

一同「お願いしますっ!!」

■リリースものとかライヴの時系列で言うと、まずは3月6日。これ、何があったか覚えてる?

直井由文(B)「なんだっけ?」

藤原基央(Vo&G)「『firefly』かな?」

■いや、それは去年でしょ(笑)。

増川弘明(G)「え、マジで!? あれが去年?」

■そうそう。初モノ尽くしの年の始まりのようなものだよ。

藤原「………あ、もしかしてブルーレイ?」

■そう(笑)。ブルーレイとDVDで『BUMP OF CHICKEN GOLD GLIDER TOUR 2012』として、代々木第一体育館でのライヴ盤を出しました。バンドとしても初めてのライヴ映像集だったね。

升秀夫(Dr)「凄い嬉しかったですね。手に取ってもらった人はわかると思いますけど、ブックレットだったり箱だったり、いろいろ手に取って嬉しいものができたっていうのと、中身も今まで記録に残してこなかったものなんで。ある種、メモリアルなものを世に出すことができて凄い嬉しかったですね」

■ライヴ大好きな秀ちゃんとしては、自分達の演奏の結晶が、こうやってちゃんとひとつの作品になったということもよかったよね。

升「もちろんそう。内容も番場(秀一)さんの編集で、あの中にその日実際に来ていた人だったり、来たかった人だったり、僕達だったりっていうものの1日っていうのが、凄く綺麗に表現されてて。単純に『ライヴを映像化しました』っていうだけではないものになったかなって思いましたね」

増川「鹿っぺも言ってくれたけど、このビデオのリリースから、今年出したベストだったり、スタジアム(ライヴ)だったり、僕らにとって新しいことが始まって。だからその先駆け的なものだったなと思っていて。昔なら断ってた話を現実的なラインまで考えてみることが、その辺からどんどんできるようになってきたのかなって気はしてますね。単純に、もっといろんな人に聴いてもらうためのことを貪欲に考えたり――それは昔から考えてたんですけど、そのために何ができるかってところまで踏み込めたのが今年で」

■気持ちに対して身体が条件反射するというか、心に対して邪魔が入らなくなった感じね。

増川「そうそう。あと、ライヴの手応えをちゃんと自分の中で持って、納得できるライヴを――もちろん課題はあるけど、その時その時の満足感を得たライヴをしてきたのかなっていう。昔からそうですけど、さらにその先にライヴを持っていけるようなものになってきたのかなっていう気が今はしてるので」

藤原「このライヴ・ブルーレイを出せたっていうのは、バンドがそういう時期に突入したっていう感じなのかなぁ。僕らは基本的にライヴが現場以外のところで観られることに非常に強い不安感を持っていて。で、こういうアイテムが出るっていうことは、それを促すような行為じゃないですか?」

■そうだね。

藤原「当然世の中にいっぱいライヴ映像が商品化されてますし、僕らにも昔からそういう話がありましたけど、そういうことはやらないで来ました。やっぱり『ライヴは、現場で共有し合ってこそのライヴでしょ?』っていう考え方っていうのはずっと変わらずあって。同じ質量で、同じ強さでライヴに来て欲しいわけだから、来て欲しいと思えば思うほど……ね?」

■同じ想いで会いたいんだよね。

藤原「でも、バンドの規模とかを考えると、言ってるだけじゃダメで。『こういうことをやってます』って提示しなきゃいけないところまでバンドが来てるし、さっき増川くんが言ってたように、いいツアーを回ってきたっていう実感もあるから、どうしても来られなかったっていう人にちょっとでもそれを家で体感して欲しい。その気持ちも前述の気持ちと同様にずっと心の中にあって、それが押しくらまんじゅうし合ってるような感じなんだよね(笑)」

 

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA1月号 Vol.81』

Posted on 2013.12.15 by MUSICA編集部

年末恒例、2013年音楽シーン総括鼎談!
ようやく露になった「2010年代シーン」の形とは?

興行至上主義の中で
エンターテイメント性を増すライヴ表現、
久々にお茶の間まで進出したバンドミュージック、
ロックバンドのインディペンデント化、
ネット発アーティストのメインストリーム進出等々――
「2010年代シーン」の形がようやく露になった2013年を一挙総括!

 

『MUSICA 1月号 Vol.81』P.14より掲載

 

有泉「年末恒例の年間総括特集です。今回定義づけたいと思っているのは、2010年代の音楽の在り方――それこそ2000年代後半から、ダウンロードとか定額聴き放題系のサービスとか、いろんなものが出てきたし、バンドの音楽活動のやり方としてもインディーズからメジャーへっていう図式が壊れて、様々に分かれてきた。そういう中で、今の時代にとっての音楽表現っていうものが今年はひとつ形になってきた年なんじゃないかなと思ってるんですけれども。それを、メガバンドといわゆるロックシーンとネットカルチャーの分野にわけて語っていきたいなと思っていて」

宇野「マキシマム ザ ホルモンとかに象徴的なんだけども、ますます特別なことを特別なやり方でやっているバンドが浮上する、ちゃんと数字も残すっていう事実がはっきりした感じはありますよね。それは逆に言うと、特別なことをしないとなかなか結果がついてこないっていうことでもあるんですけど」

鹿野「これは今年に限ったことではないけど、CDが売れないことが当たり前になった今、それでもCDやアルバムという形態に価値を見出そうとするアーティストがその想いだけを伝えていっても、それが結果に繋がっていかない時代がきていて。それを現実的に『音楽と自分のためにすべてをぶっ込む』パッケージで解決していったのがマキシマム ザ ホルモンだと思う。あと、星野源のシングルも毎回、ヴォリューム感が凄いんだよね、シングルだけど、一日かけて楽しめるアミューズメントと執念が込められている」

有泉「でも、その傾向が、CDだけではなく、ライヴに関しても強く言えるようになったのが2013年だったんじゃないかと思いますけど。サカナクションの6.1chサラウンドライヴやSEKAI NO OWARIの『炎と森のカーニバル』、あるいはBUMP OF CHICKENが以前のライヴと比べると格段に派手な演出をするようになったっていうこともそうですけど、ライヴにおいて、より特別な体験を提供することが凄く重要なポイントになっていて。その形はそれぞれによって異なりますけど、自分達の音楽にいかにしてエンターテイメント性を持たせるかっていうのは、マスを目指すためには不可欠なことになったし、それに意識的なアーティストが多いですよね」

鹿野「ライヴのエンターテイメント性が増したっていうことに関しては、昔と比べてインフラの可能性がべらぼうに広がったっていうことも大きく関係してるよね。それこそ5年前と比べて、音響や照明における可能性とか、ステージの設営に関するノウハウとか、そういうものが日本のコンサート技術の中で破格に進化してる。現実的な機材の進化も含めて、スキルが途方もなく向上してるわけで」

有泉「以前は具現化できなかったイメージを、現実的に形にできるようになったっていう」

鹿野「そう。だからライヴにおけるエンターテイメント性の向上は、パッケージにおけるそれとは性格が違って、凄く前向きかつ希望に満ちた発想による進化だと思うんですけど」

宇野「ロック系に関して言えば、今やライヴが一番のプレゼンテーションの場になってる状況は確立しちゃいましたよね。昔はCDを買ってる人の何割がライヴに行くか?だったのが、今はライヴを観た人の中で何割がCDを買うか?っていう状況になってて。アルバムの売り上げ枚数よりもライヴ動員数のほうが多いっていうアーティストが当たり前のようにいる。それこそ、フェスで観たことがあるっていうのまで含めたら、圧倒的にCDを聴いてる人よりも、ライヴを観てる人が多いアーティストが多いもんね」

有泉「シングルやアルバムに特典としてライヴのチケット先行予約を入れる、つまりライヴのチケットを獲るためにCDを買わせるっていうのがひとつの定石になってる状況を見ても、そういう現状は明らかですよね」

宇野「ロックシーンにおいては、それは本当に顕著だよね。逆に、たとえばAKB48が今年ドームツアーをやったんだけど、その集客に苦労したっていう話があって。要は、いろんなやり方を駆使してCD売ってるんだけど、動員がついてこない。で、ロックは逆に、チャートには上がらないんだけど動員力はあるっていう」

鹿野「ただ、今感じていることは、やっぱり僕らが取り上げている音楽っていうものが、本当に音楽シーンの片隅に過ぎないっていうことで。それはアーティスト自体が一番感じているってことだし、それが創作に対するポジティヴィティを失う原因にもなっている」

有泉「去年も話した、ロックというものが本当にマイノリティの音楽になっているっていう傾向が今年より強くなったと感じているということですか?」

鹿野「個人的にはそう。自分は来年でこの仕事を始めて25年になるんだけど、ここまで自分が論じる音楽が片隅の音楽になった経験って今までなかったんですよ。この雑誌の中に登場している音楽というものがアイドルとか女性を中心としたソロシンガーとかにここまで負けてるっていうのは特筆すべき状態だと思ってて。宇野から見て、消費音楽と音楽メディアの関係ってどう思うの? やっぱり大きくズレてると思う?」

宇野「というか、鹿野さんは敗北って言ってるけども、さっき話したようなライヴの動員とかを考えたら、別に負けてる感じはしないなと思ったのが今年だったという感覚のほうが強いですよ」

 

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野淳×宇野惟正×有泉智子

『MUSICA1月号 Vol.81』