Posted on 2012.05.21 by MUSICA編集部

THA BLUE HERB、今歌われるべき闘争の歌

『2012年6月号 Vol.62』 P90に掲載

痛みを提示しなくても、国民全員が深い傷を負ったっていうのが前提としてある以上、改めて傷つける必要はない。むしろ、今回の作品は、傷を負った状態からどう出発するかっていうところから始まってる表現だから

■遂にTHA BLUE HERBの第4段階が始動し、3月にシングル『STILL RAINING, STILL WINNING / HEADS UP』が、そして間髪入れず5月9日にはアルバム『TOTAL』が届きました。まず、今回の始動にあたって思ったのは、THA BLUE HERBのフェーズ4が2012年というタイミングでスタートするっていうのは――運命っていう言葉はあんまり好きじゃないんですけど、とても因果なものだなぁってことで。

「うん、そうかもしれないね」

■THA BLUE HERBは、そもそもは自分達以外はすべて敵と言っても過言ではないような、アンダーグラウンドの反骨と闘争の表現から始まった音楽だったわけですが、そこに共鳴し共闘するリスナーが生まれ、その輪が少しずつ広がっていき、自分達もその実感を得ていく中で、前回のフェーズ3では非常にポジティヴな、かつてなく外に対して開かれた陽性の意志をもった作品を出すに至って。それは、最終的に集大成として出されたDVD『PHASE 3.9』が、初期THA BLUE HERBからは考えられないような、ピースフルな雰囲気を持っていたことに象徴されていたと思うんですけど。

「そうだね……まず俺の感覚では、初期の頃の俺は、闘う場所に身を投じることによって自分達の中の強さを研ぎ澄ませていったところが間違いなくあった。でも、そもそも俺っていう人間は、強さ一辺倒の人間だったわけじゃないんだよ。ただ、当時は自分の場所を手に入れるために、つまり闘うために、強くなる必要があった。でもそれが、3枚のアルバムを出して、札幌から全国へと出ていって、ライヴでいろんな人と知り合い、理解や仲間が増えていく過程で、肯定してくれる人に対して無闇にかみつくことは無益だし、いろんな夜を経て、少しずつ本来の自分に戻っていったという感覚が強くあって。」……(つづきは本誌をチェック!)

Text by 有泉智子

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