Salyu、圧倒的なポップスの力
ポップスを追求したかったんです。 半端じゃないポップスをやらなきゃいけないっていう気持ちがありました
■ご無沙汰だね。
「そうですね、いつぶりかな?」
■MUSICAとしては半年ぶりぐらいになるのかな。その間に、こんなにも喜びと希望が見えるアルバムを作ってるとは思いませんでした。
「ありがとうございます(笑)」
■聴いててこんなにも明日っていうものが感じられるアルバムっていうのはSalyuにとっても新しいテーゼな気がするんだけど、自分としてはまずこのアルバムをどう思ってますか?
「今回、『photogenic』というアルバムの制作で一番大事にしてきた指針があったとすると、それはやっぱり3.11の大震災以降の音楽とかポップスというものの成すべき力っていうことで。私の中の音楽というものの価値観だったり、ポップスの在り方を深く考えさせられたっていうのが去年あったんですね。……やっぱり震災のあとにすべてが解決したわけではないし、問題はどんどん深刻化していってるってこともあるから、それを経た後の音楽っていうものの在り方、自分の中での理想っていうのも大きく変化した中で何か意味やミッションを確信できたわけではないんですけど……でも自分がこうなんじゃないかと思ったことをやりたかったっていうか。音楽っていう短い時間の中でどれだけ人に喜んでもらえるか、どれだけ人と共有できるものを私自身が楽曲に見出して表現していけるか。それがテーマとして1個あって、そのために工夫して大切に制作を進めてきたっていう感じですね」
■僕が思うのは、前作の『MAIDEN VOYAGE』とsalyu×salyuの『s(o)un(d)beams』、このふたつが前作だったと位置づけると、共通して言えるのは、Salyuが歌うという喜びを取り戻す、そして見つけるっていう作業だったんじゃないかと思うんだよね。もちろんふたつの作品としての位相は全然違うものなんだけど、『MAIDEN〜』のほうはそれをポップミュージックとしてやってて、salyu×salyuのほうは実験的なものも全部含めて、歌うっていうことの本質を自分の中に見つけることをやってたんじゃないかなと思う。
「あぁ……そうかもしれないですね」
■だから、それは凄く自分のための部分が強かったんじゃないかと思う。だけど今回は、もっと聴いてもらう人のためっていうところに階段を1歩上がったイメージがあるんだけど、その辺は意識的なものだったりする?
「うん、ポップミュージックっていうことは凄く考えたと思う。それは意識的なことだったと思います。本当に、いろいろなことが新しかったし、意識的だったと思いますね。小林(武史)さんとタッグを組んで作るっていうのも、『TERMINAL』以来だったから、自分にとっては最早この作り方は新しいことになってたし――」(続く)
Text by 鹿野 淳
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