Posted on 2012.08.16 by MUSICA編集部

高橋 優、どうしても歌いたかったリアルミュージック

『MUSICA9月号』P.112掲載

残酷な朝に、それでも音楽は日を昇らせる――
リアルタイム・シンガーソングライター、
決死の3章幕開け

■アルバム以来のシングルで、新しいシーズンのキックオフになる曲だと思うんですけど。非常にエグみのある曲からスタートしたなっていう感触を持ちました。この曲を次のアルバムへのファーストステップにした真意から教えてください。

「エグみというか、自分の本心みたいなものはずっと歌っていきたいというのがあったので。自分が最近思う苛立たしい現実だったり、『なんだよ、チクショウ!』って思っている不条理を並べたいと思ったんですね。その中の最たる言葉が<どんなにあがいてみても なんも変えられやしないなら/最初から諦めた方が賢明>っていう言葉だったんです。これがこの曲で一番初めに出てきた言葉で、その言葉に立ち向かっていくところから次を始めようかなっていう想いで。最高の弱音に対するアンチテーゼみたいなもので、『でも、夜は明けるし、止まない雨はないだろう』と。そういうことをテーマにして書こうと思いました」

■僕はこの曲の歌詞を読んで、特に前半から感じたことがあって。たとえばこの国の政治とか電力会社のように、人のことを聞こうとするふりはするんだけど、結局は最初から自分達で全部の枠組みを決めてる人達がいる、と。一方で、今まであまり政治に興味がなかったり、この国に生きているリアリティを感じていなかった人達が、去年ぐらいから積極的に行動したり必死になってる、と。そのカオスのちょうど真ん中で、ひとり凄く途方に暮れている人が、この歌を歌っているように感じたんですけど。

「そうですね。僕がずっと前から感じていたカオスがあって、その中に混ざりたくなくて、どこか違うところで歌っていたいっていうのはずっと持っていた気持ちで。そのイメージはこの曲にも通じていると思うんですけど……ただ、そういう現状以前に、聞かないのに聞いてるふりをしている人がいたり、自分の言葉を聞いて欲しくてデモどころか生物兵器を作ってばら撒く人がいたり。そういう方々が昔からいたことを考えると、カオスはずっと前から始まっていたと思うんです。この歌は、そういう今に対しての嘆きに聴こえるかもしれないですけど、そんな今にさえ光は射すんだっていう――嘘をついた人は罰で1日が22時間になって、嘘をついてない人はご褒美として1日27時間になります、みたいなことは現実にはないじゃないですか。結局どんな人にも平等に1日は24時間あって、同じタイミングで陽は昇るし、陽は沈むし、雨は止む。それなのに、立場の違いでみんなが差別し合って、上下を決め合ってるっていう……原発とか以前に、子供達ですらそれをやってるこの現状に対しての嘆きなんだけど――」

(続きは本誌をチェック!)

text by 鹿野 淳

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