Posted on 2012.09.23 by MUSICA編集部

ナノウ、過渡期を迎える音楽カルチャー、その新たな「現場」から

3ピースバンドLyu:Lyuとしての活動の傍ら、
人気VOCALOIDクリエイターとして
今最も漂白されていない表現の現場で
純粋にして自由な切磋琢磨を果たし、
その音楽の才能を羽ばたかせたナノウ。
過渡期を迎える音楽カルチャー、そのリアル

■MUSICAには前にLyu:Lyuとして出てもらったんですが、今回はナノウとしてお話を聞かせていただければと思っています。

「はい、よろしくお願いします」

■まず、Lyu:Lyuとしてのバンド活動と平行して、ナノウ名義でニコ動にVOCALOID作品をアップしているわけですが、どういう経緯でこういう活動形態になったのか、から教えてもらえますか?

「歴としてはバンドのほうが遥かに長くて。そもそもバンドに憧れて音楽を始めて、20歳くらいからバンドを組んで、何度かバンドが解散したりもしながら、ずっとライヴハウスでライヴをやってたんですけど。Lyu:Lyuをやり始めてしばらくして、ネットでVOCALOIDの存在を知り、どうやらニコニコ動画っていうところへアマチュアが楽曲を投稿しているらしいという話を聞きまして。で、実際に曲を聴いて、単純に凄くびっくりしたというか。合成音声のソフトでここまで表現できるのかって本当に驚いて、それで自分も興味を持って始めたのがきっかけでしたね」

■それは、言ってみれば初音ミクという「楽器」に興味が沸いたっていうこと?

「やっぱり、自分が曲を作る時って、自分の声っていうものがあって。当然自分の音域とか得意なところに則って曲を作るんですけど、自分が歌わずにVOCALOIDに歌わせることによって、今まで自分ができなかったような表現ができるっていうところに面白さを感じて。単純に女性キーのメロディもそうだし、自分が歌うって考えるとどうしても書けなかった歌詞だったり、意識的に避けていた表現がたくさんあったんですけど、それを全部取っ払って書くことができるっていうことに凄く面白さを感じたんですよね。たとえば、恋愛の曲って自分の中ではタブーだったんですよ。自分の声だったりアーティストイメージってものを考えた時に、恋愛の歌を自分が歌うなんて気持ち悪くて絶対にノー!っていう感じで(笑)。それに、バンドで作詞作曲をして歌う時っていうのは――そもそも自分の場合はバンドっていうものへの憧れが強い分、『あれはイヤだ、これはイヤだ』っていうこだわりが凄く強く出てしまうんですね。かつ、バンドはメンバーの総意で動いてるものであるので。もちろん、そこがバンドの醍醐味だと思ってるので、そこは大切にしながら活動してるんですけど。でもVOCALOIDでやる時って完全にひとりなので、制限とか縛りが一切ない。だから、凄く自由に制作ができるっていうのはあって」

(続きは本誌をチェック!)

text by 有泉智子

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