Posted on 2012.10.19 by MUSICA編集部

People In The Box、遂にその牙を露にす

さようなら、誰かが定めた正悪に縛られた世界――
僕らの声を、僕らの生を、僕らの自由を真に獲得すべく、
鋭利さを増したメッセージと新ピープル・サウンドの確立。
羊の皮を取り払い、鮮烈な核を露にした傑作『Ave Materia』。
この音楽が突きつける真実の先に踏み出すのは、あなた自身

『MUSICA 11月号 Vol.67』P78に掲載

■サウンド的にも『Family Record』の次を示す新たな音像が確立した作品であり、そして何より非常にメッセージが強い、今までの中でも最も明確に問題提起を発する作品になりましたね。

「作り始める時に、メンバーに『世に問うものを作りたい』って言ってて。やっぱり言いたいことが山のようにあったんですよね。もちろん今までもあったんですけど、ただ今までとは前提のようなものが全然違って………ちなみにどういうメッセージだと思いました? 相変わらず全然客観的になれなくて(笑)」

■『Ave Materia』っていうタイトルが象徴的だと思うんですけど。Aveは「さようなら」、Materiaは「物質」って意味ですけど、言葉通りの物質だけでなく、既成概念――世の中で常識とされている概念や、社会システムを盲目的に信じることをやめよう、そこに惑わされず、自分達の本当の意志や豊かさをもって生きていこうっていうメッセージだと受け取りました。

「なるほど。…………今までは、僕は自分で反社会的な部分があったと思っていて。社会通念上『普通』とされてるものに対するアンチ心というか、『それって凄く窮屈だよね』っていうことをアピールしたくて歌詞を書いていたところがあったと思うんです。でも、今はそういうアンチ心はなくなって。僕はやっぱり、気持ちの上では『Family Record』の頃とはまったく変わっちゃったんですよね。それは自分という人間もそうだし、音楽家として音楽をどう捉えるかもだいぶ変わったと感じていて。やっぱり震災が凄くデカかったんです。自分にとって音楽とは? 社会にとって音楽とは? 何故自分は音楽をやらなくてはいけないか? さらに何故自分が生きてるのか?っていうところにもの凄く生々しく直面する事態になって。たぶん僕だけじゃなくていろんな人がそうだったと思うんですけど。そうなった時に、僕はこれまで自分がやりたいことをやってきたつもりだったんですが、やりたいことがなくなってしまったんです。自分のエゴとして何かを発信したいっていう気持ちがなくなって。そうなった時に、じゃあ自分は何をやろうかなと思って…………最終的には音楽に戻ってきたんですけど」

(続きは本誌をチェック!)

text by 有泉智子

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