Posted on 2012.11.15 by MUSICA編集部

サカナクション、独占レコーディング潜入!

一郎の自宅を私設スタジオ化し、
超クローズ空間で行われている作曲&レコーディング。
バイノーラル録音、ブレイカー落ち、
めくるめく団らんと紛糾――
今、サカナクションは大きな変貌を遂げている!

『MUSICA 12月号 Vol.68』P40に掲載

10月11日 
山口一郎宅にて録音

 14時50分頃に入室すると、江島以外の4人とエンジニアの浦本雅史さんが、えらくミニマルなトラックをずっと流しながら「これからどうやって“夜の踊り子”へ繋げればいいのかな? だって売れたシングルだから前へ持ってこなきゃいけないでしょ?」という話をしている。つまりは、このえらくミニマルなトラックを、アルバムのかなり前半部へ持って行こうとしているということだ。いきなり大胆なイメージを突き詰めていることに驚いていると、「どうすか? 地味でしょ? でも、ここにいいメロディ入れられると思うんだ……うん、見える」と一郎がつぶやいてくる。
「ドイツへ行くと、こういうミニマルでシンプルなトラックって、既に文化になっているんだよね。それこそクラフトワークとか、珍しくもなんともなくて当たり前というか……国民的ミュージックというか」とか、いろいろな話をひねり出し、メンバーにそれとなく話しかけている。
 部屋に流れているのは、ミニマルテクノというべき、均一なリズムが徐々に増幅したり変化を起こし、その音の粒ひとつひとつが脳内神経に働きかけ、やがてさっきまでの自分には想像もできない覚醒を覚えるという、電子音楽ならではのリズムトラック。そのリズム音がとっても硬くて、しかも硬いのに微妙に跳ねていて、何しろ気持ちがいい。今までの彼らのリズムトラックとは、少し位相が違う音にどんどん引き込まれていく。
 実は、このレコーディングの6日前に一郎の連載を彼の自宅で行ったのだが、その時にレコーディング進行中だというトラックを2曲、聴かせてもらった。
 それが本当に素晴らしくて。
 まだ歌詞も入っていないものだが、イントロからもう、空気感が出まくっていて、音だけで物語が始まっていくような、繊細にして大胆なトラックだったのである。あの時僕は、少々大袈裟なことを口走った。
「お前、もう勝ってるじゃん、この時点で」

(続きは本誌をチェック!)

text by 鹿野 淳

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