Posted on 2012.11.29 by MUSICA編集部

古川本舗、郷愁のフォークトロニカに秘められた衝動

別れこそが写す、始まりの物語。
静謐な音色に込められた
生命の衝動――
実はメタル/パンクから始まり
繊細なるフォークトロニカへと至った、
ネットから飛び出した次世代型アーティスト。
その異色の背景と核に迫る

■とても繊細で美しい世界を綴る方だなと思って。アコギや鍵盤にしても、エレクトロニックな音色にしても、まるで一枚の絵画を描くように音楽を紡いでいきますよね。ご自分では、今回の作品はどういったところを目指していったんですか?

「ファーストアルバムは、そもそもアルバムを想定して作っていたわけではなく、それまで作ってきた曲を整理したカタログ的な作品だったんですよ。だから今回は、まず自分はどういうものを作りたいのかというところから考えて……2枚目って凄い大事だなと思うんです。音楽的には1枚目より成熟していなくちゃいけないし、かつ、3枚目以降に何をするのかにも繋がなくちゃいけない。その中で今回は、自分の中で美しいメロディとはどういうものなのかっていうことをきちっと形にしてみようというのがコンセプトとしてあって」

■何故メロディに特化しようとしたんですか?

「僕自身が音楽を聴いてて一番何に引っかかるかと考えたら、やっぱりメロディだったんですよね。アーティストの個性を位置づける要素は音色やアレンジもあるけど、やっぱり一番はメロディだと思う。あと、僕はとにかく好きな音楽が多過ぎて、出したいものがいっぱいあるんですよ。だからこの時点でどこかの音楽性に特化して、そういう人だと思われるのも嫌だというのもあって(笑)」

■作品を聴いて、これは相当音楽を聴いてきた人だと思ったんですけど。キャリア的にはいわゆるボカロPとして認知されたところから始まってますが、その頃から、当時まだボカロ曲としては少なかったポストロック、フォークトロニカの音像の上で初音ミクに歌わせていて。一貫して、非常にアーティスティックで文学性の高い世界を描いていますよね。そもそも、音楽的なバックグラウンドはどういうところにあるんですか?

「音楽をやろうと思ったのは14歳の時で。スポーツも勉強もできなかったんで、このままだと将来が危ない!と思ったんですよね。変な言い方ですけど、音楽で何かしら生計を立てないとまずいぞって感覚になって」

■中学生でその意識を持つのは相当早いというか、生き急いでる感じがするんですけど(笑)。

「何に怯えてたのかわからないですけど、危機感みたいなものを持ってたんですよね(笑)。で、当時は流行りのヴィジュアル系を聴いてたんですけど、『ヴィジュアル系の人達がカッコいいと思っていたものを聴けば、自分も同じようになれるんじゃないか?』と考えて、ルーツを掘り下げるようになり。それでメタルとかハードロックに行って、テクニック寄りの音楽雑誌を見て知らないギタリストがいたらその人のコピーをしたりして」

(続きは本誌をチェック!)

text by 有泉智子

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