Posted on 2012.12.24 by MUSICA編集部

THEラブ人間、 生を渇望するバンド第二期の始まり

バンド結成から3年半。
無我夢中で駆け抜けた「青春」に終止符を打ち、
新たな季節が幕を開ける。
これまでになく他者との繋がりを求め、
「生」を貪欲に謳歌しようとする金田康平。
シングル『アンカーソング』に込められた
命のバトン、受け取るのはあなただ

『MUSICA 1月号 Vol.69』P110に掲載

■シングル『アンカーソング』がリリースされるわけですが、まず、最初に7月にあった『恋に似ている』のツアーファイナル、リキッドでのライヴについてお話を訊きたくて。あの夜はバンドにとっても、金田さん自身にとってもとても大きな意味を持っていたと思うんです。MCでもバンドを結成してからの3年半を今夜終わらせるんだということをおっしゃっていましたよね。

「『恋に似ている』のツアーを回っている途中、自分がTHEラブ人間をバンド結成してから目指していたひとつの理想形に到達したなって思う瞬間があったんです。それは……音楽始めた時から思っていたことなんだけど、来てくれた人達に何かしらの『言葉』を持ち帰ってもらうっていうことで」

■それは歌詞っていうこと?

「歌詞だけじゃなくて、MCで喋ったことも含めてなんですけど。だけど、その必要はもうないって思ったんです。今俺がMCで喋ってる言葉も全部楽曲にして封じ込めれば、言葉というものは不純物にしか見えなくなってくるなぁと思って。それで、これまでのライヴのスタイルの完成形をリキッドで見せて、それ以降を第二期にしようって自分の中で決めましたね」

■アルバムのインタヴューをさせてもらった時にも、バンド始めてから3年半、もっと言えば音楽始めて13年ぐらいの時間が過ぎて、初期衝動ってものは既にないけど、その残りカスまで燃やし尽くすためのアルバムなんだってことを話してましたけど。その延長線上にある感覚ですか?

「そうですね。初期衝動を全部封じ込めた『恋に似ている』という作品のライヴとしての完成形をツアーで見せたところで、全部が終わるってことだったと思うので。でも、ツアーも途中からCDになってない最新曲とかをセットリストに織り交ぜて、地方でやってましたね、耐え切れなくて(笑)。やっぱり自分達の最新型を見せたくなって」

■これまではライヴに来てくれた人達に言葉を持ち帰ってもらいたいという意識があったということですけど、でも金田さんはバンドで音楽を作って、ライヴで鳴らしているわけで。それでも音楽全体というよりも、とにかく言葉を伝えたいって気持ちが強かったんですか?

「そうですね。音楽のことって――俺は音楽家だから、たとえばこのリフがカッコいいわとかわかるけど、普通に聴いてる人にはそういうのって正直わかんないんじゃないかなって思うし、演奏が上手いとかカッコいいとかよりも、他に残るもののほうが大切だよなって考えていて。それが俺らは言葉だと思ってるっていうだけのことで」

■なるほどね。そして、大きな区切りとなったリキッド以降最初の作品がこの『アンカーソング』であって、このシングルにはインディーズ時代からリキッドまでのライヴ映像で構成した『青春期終焉GIG映像集【恋に似ていた】』というDVDがつきますけど、金田さんの中ではリキッドまでが青春だったという感覚があったんですか?

「メジャーデビューの作品も『これはもう青春じゃないか』だったし、一番わかりやすくひとつの季節が終わるってことを表すために『青春』という言葉を使ったんです。無知さ、無邪気さというものだけで走れた瞬間を終わらせますっていう」

■そして今、新たな季節に入っているわけですけど、どういう季節にしていこうと考えてます?

「終わらせたというよりも、手に入れたものがあったから第一期が自動的に終わった感じです。あのリキッドで、『俺は全部手に入れた』って言ったんですよね。それは今まで欲しかったものはおおよそ手に入れたなと思ったからで。それは知識だったり、お金だったり、音楽に集中できるための時間だったりというものなんですけど。で、今回の第二期っていうのは、前よりももっと普通の人間、普通の生活というものに歩み寄っていく――優しさが重要というか……」

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text by 板子淳一郎

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