Posted on 2013.02.20 by MUSICA編集部

sleepy.ab、2年ぶりの新作『neuron』で、遂にバンドの真髄を鳴らす

闇は光へ、刹那は永遠へ、悲しみは希望へ
やがてすべては繋がり、未来へと向かう――。
2年ぶりのアルバムにして真骨頂。
孤独な生命から広がる、
果てしなく、深淵で、美しき音楽宇宙『neuron』

『MUSICA 3月号 Vol.71』P98に掲載

■前作の『Mother Goose』は過渡期の作品なんじゃないかっていう話をしたんですけど――。

成山剛(Vo&G)「覚えてます(笑)。インタビューの冒頭でパッと言われちゃって。あれから1年くらい『俺ら過渡期だしな……』って口癖になってましたもん。軽いトラウマというか(笑)」

■すみません(笑)。

成山「いや、自分でも引っかかってたところではあったから。そこを突かれた感じだった(笑)」

■でも今回の『neuron』は本当に素晴らしい、スリーピーの新たな真骨頂を見せるアルバムになったと思います。語弊を怖れずに言えば、『fantasia』(2007年、メジャー移籍前に出した4thアルバム)までに築いたスリーピー像を初めて更新した手応えがある。だから今日訊きたいことはひとつだけで、何故このタイミングでこんな傑作ができたのかってことなんですけど。

成山「結局、メジャーには2~3年いたんですけど、今考えると気負ってた部分があったんだなって。別にレコード会社に何か言われたわけじゃないんですよ。『もっとポップにしろ!』とか、そんなこと全然言われなかったんだけど、でも俺はそういう方向に仕向けていってて。何故なら、自分をこじ開けるチャンスだったから」

■そうですよね。だから歌のメロディや歌詞然り、そこにどんなアレンジを施していくか然り、凄く意図的にポップソングとしての在り方を追究していきましたよね。そこで開いたものは、今回の血肉になっていると思うんですけど。

成山「そう、そういう意味ではよかったと思うんです。そうじゃないと“君と背景”みたいな曲はできなかったし。ただ、やっぱり精神的な部分でちょっと勘違いしてたのかなっていうか……『好きなように作る』っていう前提は持ってたんですけど、今思えば、自分達で勝手にその幅を狭めた部分があったんじゃないかと思って」

山内憲介(G)「やっぱりちょっとバランス崩れてたんですよね。やりたいアイディアはあったんですけど、いつまでに作らなきゃいけないとか、そっちが重要みたいになってたし。あと今回作ってて凄い思ったんですけど、サウンドをどんどんマニアックにしちゃっても大丈夫なんだなと思って。それでも、成山の歌が入れば全然ポップに聴こえるんですよね。サウンドとかアレンジをポップっていうほうに寄せていったりとか、そんなことは気にしなくていいんだな、それよりも自分達が好きなこと、面白いと思うことを詰めていけばいいんだっていうことに気づいて」

■まさにそこだと思うんです、今作は。日本ってポップもロックも歌が強いものが大衆性を帯びていくじゃないですか。まぁ世界的に見てもポップソングはそういうものだけど、ただ日本は特にその傾向が強いし、大衆性を意識した時にそこに引っ張られてサウンドがわかりやすいものになっていく、つまり実験性を失っていくことが凄く多くて。でも本来、歌を聴かせることと音楽的な豊かさや面白さを両立することはできるはずだし、むしろ普遍的な歌に新たなサウンドアプローチを当てていくことでポップミュージックの価値観が更新されていく。それこそが本当に美しいポップミュージックの在り方だと思うんです。で、『neuron』が素晴らしいのは、“euphoria”を筆頭に、メロディのポップさを磨きながら、同時にスリーピーならではの音楽的な深みやアート性を豊潤に響かせた点にあって。逆に言えば、ここ数年のスリーピーに足りなかったのはそこだったと思う。

成山「そういう部分はあったかもしれないですね。“euphoria”はできなかったもんね、やっぱり」

山内「うん」

■“euphoria”はスリーピー流ポップの金字塔だと思いますよ。弾けるような飛翔感のあるアップリフティングなメロディも素晴らしいし、サウンドのオリジナリティと遊び心も抜群で。ほんとにね、初めて聴いた時に思わずマネージャーさんに「これをメジャーの時にやればよかったのに!」って言っちゃいましたよ。

成山「はい(苦笑)。単純なことだったと思うんですけどね、でもできなかった。やっぱり俺達はフィールドみたいなものを意識しちゃってたんでしょうね。人と話すのでも、相手によって自分の出せる部分が結構変わっちゃうというか、誰とでも同じように話せないところがあるから。メジャーっていうフィールドにいる時は、それが特にわかりやすく出ちゃってた感じもあって」

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text by 有泉智子

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