Posted on 2013.03.16 by MUSICA編集部

SEKAI NO OWARI、初の代々木第一体育館ワンマンライヴに完全密着

僕らが僕らであるために勝つ方法――代々木第一体育館ライヴ密着&
久しぶりのガッツリインタヴュー

 12時45分に会場に入ると、LOVEひとりだけが入っているらしいが、どこにも見当たらない。
 そして13時5分、FukaseとSaoriとNakajinが一台の車でやってきた。当たり前か、だって同じ家に住んでるんだから。ならばLOVEは何で別行動で来たんだ? と不可解に思いながらも、メンバーとご無沙汰の挨拶をしているうちに、そんなことは忘れてしまった。
 楽屋に荷物を置くなり、食堂で10分間でご飯を食べ、そのまま映像と照明チェックへと会場内へ向かう。何と無駄の無い行動なのだろう。
 チェックは主に“illusion”での仕掛けに費やされた。この日のライヴは大阪と名古屋を経てのアリーナライヴなのだが、実は2ヵ所とは違う仕掛けが何個かあって、その中でもハードルが高い変更が成されたのが、“illusion”での本当のイリュージョンなマジックだったのだ。
 このバンドのライヴ前のチェック、打ち合わせは大変だ。今まで段取っていたものがメンバーの一言で簡単に引っくり返る。以前の渋谷公会堂でも日本武道館でも、メモリアルなライヴで彼らは必ずスタッフを凍りつかせ、そして唖然とさせながらここまで来た。この日はどんなちゃぶ台が引っくり返るんだろう? と内心ワクワクしていると、案外スムーズに物事が確認されていった。スムーズなコミュニケーションの中で物事が動いていくことに若干違和感を感じたが、かつてない30本以上の長いツアーの中でお互いのツボを知りながらここまで来たのだろう。彼らの成長と進化をこんな場面から知ることとなった。
 話を戻すと、この“illusion”の時にFukaseの「瞬間移動」が行われるのだが、ここまでのツアーの中ではダンサーがFukaseをカモフラージュしていたのに対し、今回はダンサーを除いて、シンプルに照明のテクニックだけでマジックを遂行しようとしている。必然的にシビアなやり取りが交わされ、会場いろいろな場所からチェックしたり、何度も何度も試行錯誤が繰り返された。
 その難題が「これで大丈夫だ」と思った所で舞台監督から「もう時間過ぎてます。早速音のリハーサルにいきましょう」という言葉が響き、メンバーは楽屋へ戻ることなく、14時よりサウンドリハーサルが始まった。
 リハーサルも非常にスムーズに進む。唯一スムーズではなかったのは、Fukaseがマイク越しに「お腹の調子が良くないので、胃薬ください」と言った時だけ。すかさずSaoriを始めとするメンバーから「さっき牛丼食べ過ぎたからだよ」と容赦ない突っ込みが入る。
 唯一リハーサルのレベルを超えて、何度も何度も執着をもって繰り返されたのが、この日初披露を果たす新曲“RPG”。5月1日にリリースが決まったこの曲のライヴでの在り方を、舞台監督とPAとメンバーがとことん考える。主にはFukaseの声の響き方なのだが、箱の大きさと残響感を考えながら、次々にヴォーカルのエフェクトやサウンドとのボリュームバランスを変えていく。
 あっという間に2時間が過ぎ、16時13分にリハーサル終了。そしてまたすぐにメンバーはご飯タイム。その食べている中にマネージャーがPC抱えながらやって来て、映像をみんなでチェックし出す。
 その映像は幻想的なアニメーションで、森の中で動物と炎がゆらめくもの。40秒弱の最後には「初の野外ワンマンイベントをプロデュース。10月12&13日。富士急ハイランド?」と出てくる。そうだ、今はHPにアップされている、秋の主宰イベントのプロモーション映像である。
 みんなひたすら感動している。どうやらこの映像は、EARTHのスタッフではなく、Fukaseがネットで見つけて面白いと思った若いクリエーターの方に寝ずに5日間で作っていただいたものらしい。今も彼らと彼らの仲間は、club EARTH時代から何も変わらない「手作り一家」である。

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text by 鹿野 淳

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