Posted on 2013.05.19 by MUSICA編集部

米津玄師、強く美しい名曲“サンタマリア”に込めた覚悟とは

前に進むために、生きていくために。
「人は絶対にわかり合うことができない」
という残酷な真理と諦めを振り払い、
ただ、その心の奥底に秘めた切なる願いを露にした
強く美しい大名曲“サンタマリア”。
大きなターニングポイントとなる
この圧倒的な光の正体に
1年ぶりのインタヴューで迫る

『MUSICA 6月号 Vol.74』P62に掲載

■初めてのインタヴューからちょうど1年ぶり、つまりアルバム『diorama』をリリースしてから1年が経ちましたね。

「そうですね、お久しぶりです(笑)」

■はい、とても待ってました(笑)。で、その待ち望んだ新曲である“サンタマリア”を聴いて凄く感動しまして。音楽的にも内容的にも明らかにターニングポイントとなる新境地を切り開いた、非常に強く美しい楽曲で。今日は何故この曲を生み出せたのかをじっくり訊いていきます。

「よろしくお願いします」

■まずは、昨年、初めて米津玄師として自分の声で歌い鳴らした『diorama』という作品が世の中に出て、いろんな反響があったと思うんですけど、そこでどんなことを感じたのかから伺えますか。

「うーん……出す前はきっと賛否両論があるだろうと思ったんですけど、結構そんなこともなく、すんなり受け入れられた感があって。ちょっと拍子抜けするようなところもあったんですよね」

■その「否」はどこから出てくると思ってたの?

「単純な話、僕の声が気に入らない人も絶対にいるだろうなとは思ってたんですよ。でも、ぼちぼちはいたんですけど、その声はそんなに大きくなくて。だから正直、そういう意味では取り立てて変化はなかったんですけど………ただ、そういうこととは関係なく、自分の中ではもの凄く葛藤があった1年ではあったんですよね。『diorama』を作った後、次に何を作ろう?って考えた時に、そんなにやることが思い浮かばなくて。どうしようかなぁって考えながら、いろんなことを見たり体験したりする生活を送ってたんですけど……僕は基本的に普遍的なものが好きなんですよね。凄いポップなもの、開かれたものが好きで。だからこそ、次は自分もそういうものを作らなきゃいけないと思って。今まで全部自分ひとりでやってきたけど、それも変えたいと思ったし………というのは結局、自分ひとりで作ってきたのも、どこかラクだからっていうニュアンスが強くて」

■要するに、米津くんにとっては人とコミュニケーションを取りながら音楽を作るよりも、ひとりで作るほうがラクだし自分の頭の中を具現化しやすいってことですよね。

「そう。でも、そのラクなところに止まっていると、ずっとそのままだなと思ったんです。そういう閉鎖的な考え方って凄い下品だし、健康的ではないなと思って………だから開いていかなければいけない、もっと自分がやれることを見つめ直さなければならないっていうことを、凄く考えてましたね。それで作ったのが“サンタマリア”で」

■「ずっとこのままではよくない」と思ったのは、そうしないとミュージシャンとしてこれ以上成長できないと思ったからなのか、それとももっと人間的な部分というか、生き方の部分でそう感じたのか、その辺はどうなんですか?

「人間的な部分ですね。『diorama』出した後、どんどん自分に厳しくなっていったんですよ。とにかく『このままじゃいけない』っていう焦燥感がもの凄くあって………前に進まなければならない、変わらなければならないっていうのが強くて」

■何故そんなにも焦燥感が出てきたの?

「何故かはわからないんですけど(笑)。でも、とにかく自分を厳しく律して自分の至らなさを挽回することに必死だったっていうか……まぁ今もそうなんですけど。だから、そのために自分に対していろんな枷(かせ)を設けたりして」

■たとえばどんなことを?

「単純な話、この日までに何曲作るとか、あるいは少なくとも毎日1時間走るとか」

■走る?

「はい(笑)。まず身体的に健康になろうって思ったんですよね。やっぱり心と体って対をなしている、表裏一体なものであるわけだから、どっちかが悪くなればもう片方も悪くなる。肉体的に健康でない状態は、絶対に心にも影響するもので。そのバランスが欠けた状態で生きていたツケみたいなものを感じていて………だから今は、外に出て走ったり、いろんな人と話したり、バランスを取り戻すための日々を過ごしているんですけど」

(続きは本誌をチェック!)

text by 有泉智子

『MUSICA 6月号 Vol.74』のご購入はこちら