Posted on 2013.09.19 by MUSICA編集部

待ちに待ったフルアルバム!
tricot中嶋イッキュウ、ソロインタヴュー敢行しました

自分の悲しさやコンプレックスを消化することで
人が喜んでくれるものが生まれる
それが、音楽っていう表現を選んでいる理由なのかなって

『MUSICA 10月号 Vol.78』P.94より掲載

■実験性と、それを歌とメロディでどこまでポップなものに昇華できるのか?っていう部分のせめぎ合いがより激しく聴こえるアルバムだと感じて。

 

「確かに『99.974℃』を作った時期に、先輩(キダ モティフォ)のリフ、実験性が深くなってきていた感じはあって。それをよりポップなものにしようと思ってメロをつけていくのは変わらなかったんですけど、その時期を超えたら、今度は“おやすみ”や“おちゃんせんすぅす”みたいな、聴きやすい曲もふざけている曲も生まれてきて。だから、マニアックになったというよりは、曲の作り方がひと廻り大きくなったような感じがしてますね。今回に関しては前からの曲がほとんどなんですけど、“おやすみ”や“おちゃんせんすぅす”みたいな最新の曲も入れられて、『3年間のtricot』っていう作品になった感じがしてます」

 

■“おもてなし”から“99.974℃”の頃って、キダさんの持っている音楽性や趣向が突っ走り始めた時期なんじゃないかなと思っていて。それこそ“おもてなし”は破綻しそうなバランスと複雑さの中で「ここまでできる!」っていうラインを一気に広げた曲だったし。そうやってどんどん自由になっていくオケに対して、歌への意識はどうなっていったんですか?

 

「言ってもらったような、インストが難しく複雑になっていった時期に、まずメンバーから『メロディはもっとこうしたほうがいいんじゃないか』っていう意見が飛ぶようになっていったんです。歌は私だけのもの、というより、みんなの歌に対する期待があるのも実感したし、自分達の曲における歌の大事さも改めて実感した時期だったかな、と思います。やっぱり、曲を作っていくにつれてオケはどんどん自由になってきていると思うし、そこに対してみんなで意見を出し合えるようになってきたのが“99.974℃”以降なのかなと思っていて。“おやすみ”や“おちゃんせんすぅす”も、揃っているのが前からの曲ばかりだったから、今の私達の要素が少ないって思ったところから生まれてきた曲なんです。特に“おやすみ”は、凄く久しぶりにメロディと歌詞がすっと出てきた曲で。自分からすっと出てきたものだから、聴く人もすっと聴ける曲になったんじゃないかなって思います。昔なら、出てきた一発目のメロディを持って行ってたんですけど、自分の中で何回も作り直したりすることも増えてきたんですよ。“99.974℃”以降、歌への意見がバンドから出るようになったことで、『もっといいメロディ、歌を出せる!』っていう意識がさらに強くなって」

 

■そういう気持ちが歌に出ている気がして。作品通じて、歌が真っ直ぐで強くなってるんですよ。

(続きは本誌をチェック!)

 

text by 矢島 大地

『MUSICA10月号 Vol.78』