Posted on 2013.11.16 by MUSICA編集部

Dragon Ash、“Lily”(=百合)リリース。
新曲にバンドのシンボルを掲げた意図とは?

人間だから欲深いし聖人君子じゃいられないけど、
それでも自分の中に一輪でも純粋な部分があれば、
それだけで美しいと思える。
それが自分達にとっては音楽なんだけど

 

『MUSICA 12月号 Vol.80』P.98より掲載

 

 

■もう、Dragon Ashが“Lily”というタイトルの新曲を出すっていうだけで期待感を持っているファンも多いと思うんですけど、実際、その期待に違わぬ素晴らしい名曲が生まれました。まずは、何故このタイトルで曲を作ろうと思ったのか?から訊かせてください。

 

「これ、本当は違う曲をシングルにしようって話になってたんだよ。で、ジャケも俺がやってるんで、そのアートワークを進めてる時に、仲間に半端じゃなく絵が上手いヤツがいるから、そいつに『ジャケ一緒に作ろうよ、金色のヒマワリを描いてくれ』ってオファーして。で、そいつが2カ月ぐらい悩んで『できた!』って持ってきたんだけど、それが何故か金色の百合だったんだよ。『ごめん、ヒマワリ描けなかった』っつって」

 

■ええええええっ!?

 

「俺も『えぇっ?』って言った(笑)。でもその絵がよかったからさ(実際に『Lily』のジャケになっている絵です)、『だったら曲書き直すわ』って言って、“Lily”ってタイトルにすることを決めて書いたのが、この曲なんだよね」

 

■なんか、凄い経緯ですね(笑)。

 

「ほんとだよ(笑)。で、内容は、その時に自分の身の回りで起こったこと――俺のことじゃないんだけどさ、でも、今の気持ちを曲にしておこうと思ってたことがあったから。それと“Lily”で曲を作ろうっていうのが混ざってできた」

 

■なるほど。とはいえ、このバンドのひとつの象徴でもある百合=Lilyを掲げて曲を書くっていうのは、大きなことでもあるわけで。

 

「………まぁ正直、俺もみんな凄い『Lily』って言葉に反応してるなと思ってる。そこはね、やや反省もしてるんだけど(笑)」

 

■はははは。そりゃ反応しますよ。だって、Lilyだったり百合っていう言葉がタイトルや歌詞に入った曲は、どれも大切な曲ですもん。

 

「みんな割と人気曲だもんね」

 

■そう、代表曲ばかり。改めて訊きますけど、Kjさんにとって百合の花というのは、どういうものの象徴でありメタファーなんですか?

 

「白百合は純粋なものというか、清らかなものっていうイメージかな。俺らは人間だから欲深いし、いろんな邪念も入ってくるから聖人君子じゃいられないんだけど、それでも自分の中に一輪でも純粋な部分があれば、それだけで美しいと思える。それが自分達にとっては音楽なんだけど。だから、自分達の大事な部分みたいなイメージ。ウィリアム・ブレイクの詩みたいに、薔薇も棘があって、羊にも角があるんだけど、百合は咲いているだけで美しさを讃えてる、みたいなさ。何かひとつでもいいから、そういう部分が自分の中にあり続けるようにしていたいっていう、それは昔からずっと思ってる」

 

■その大切なものを失わないまま、その胸に抱いて生きていこうっていうことを、ずっと鳴らし続けてきたバンドだと思うんですよね。それが外との闘争に向かう時もあったし、仲間と共に自分達の王国を守っていくような時もあったと思うけど、ここ最近のDragon Ashはそれがより広い場所、広いリスナーへのメッセージとして開いていってる感じがしていて。だからこそ、そういう時期に“Lily”というタイトルの曲が来たことの意味はとても大きいと思う。たとえきっかけは友達がヒマワリを描けなかったことだとしても(笑)。

 

「はははは」

 

■でも、そこで百合が来たっていうのも、なんだか凄くこのバンドらしいなとも思うし。

 

「そうだね(笑)」

 

■さっき身の回りで起こったことに対する気持ちを曲にしたって話をしてくれましたけど、“Walk with Dreams”然り、自分の近い人に向けて書いたものが、より広い仲間やファン、さらにはその先の人達にまで歌いかけるメッセージソングになっていくというのは、Dragon Ashのひとつの在り方だと思うんですけど。この曲はまさにそうだと思うし、さらに言えば、Dragon Ashというバンドはこういう気持ちを真ん中に抱えて走り続けているからこそ、これだけの支持を得ているという、言ってみればDragon AshをDragon Ashたらしめるひとつの核となるメッセージが真っ直ぐ歌われている気がしたんですけど。

 

「うん、そうじゃないかな。自分のことは一切意識しないでこの曲を書いてるけど、結果的には今、KenKenの手を借りてライヴやってるわけだし、そういうのは自分にも置き換えられるよね」

 

(続きは本誌をチェック!

 

text by 有泉 智子

『MUSICA12月号 Vol.80』