Posted on 2013.12.18 by MUSICA編集部

悲しみや憎しみに別れを告げて、
圧倒的高揚感の中で美しき絶頂を鳴らしたきのこ帝国、
眩しすぎる快進撃が始まった!

 

25歳って、本当にいろんなことが起きるなぁって。
別れが、悲しいことじゃなくなった。
絶対に認めたくなかったようなことが、
だんだん認めらえるようにもなってきた。
人間って変わっていくんだなって思う

 

『MUSICA 1月号 Vol.81』P.90より掲載

 

■前回、アルバム『eureka』のインタヴューの時に、ようやく過去を捨てて、「未来を思い描いた時に、もう自分はなんでもできるなって思えるようになった」と言ってましたけど、今回の『ロンググッドバイ』はまさにその言葉通りの素晴らしい作品で。

 「ありがとうございます」

 ■今、ちょうど年間ベストとかの時期で、そこで真っ先に思い浮かぶ作品のひとつに『eureka』があるんだけど、この『ロンググッドバイ』を聴いたら、「あれ? あれも2013年でこれも2013年か」って(笑)、本当にこの1年でもの凄くバンドが進化したなって。

 「とにかく年内にEPを出したいっていうのは、『eureka』を出す前から考えていて。で、『eureka』ができ上がって、夏頃には録りたいなって思っていたんだけど。『eureka』には凄く達成感があって、反響も凄くよくて、いろんな人にも聴いてもらえたり、評価してもらえたりしたから、嬉しかった半面、ちょっと次の作品を作る上でプレッシャーを感じてきてしまって。『eureka』を超えるものを作らないとなって思ってるうちに、ちょっと曲が書けなくなってしまった時期があって」

 ■でも、確か5月の代官山UNITでのワンマンの時には、アンコールで新曲をやってましたよね。それが今作にも収録されている“海と花束”というパーフェクトな曲で、バンドの未来に対してすっごく期待が膨らんでいたんですけど。

 「そう。ワンマンで新曲を披露したいなって思って、あの時、本当にギリギリまでみんなでアレンジをして“海と花束”を無理矢理やったんだけど、それ以降、しばらく曲ができなかったんですよ。で、1回『eureka』のことは忘れようと思って。あの作品は、自分たちとしては今のバンドの音を完璧に納得する形で作品に封じ込めようっていう目標でやったんですけど、逆に、今度は完璧なものは目指さなくてもいいのかなって。発展途上のものだとしても、やりたいことを思いっ切りやって、『未完成上等!』みたいなものをパッケージにしたいなと思って。『eureka』を録っていた時から、なんとなく次はこういうのにしたいっていう構想があったんですけど、作っているうちにそこから二転三転あって、結局最初に思い描いていたところに戻ってきたのがこの作品で。完璧じゃないかもしれないけど、ちょっと記録というか、去年の年末から今年にかけて感じたことを、ニュートラルに音源に残しておこうと思った辺りから楽になって。それで、完成までこぎ着けた感じです」

 ■バンドを取り巻く状況も、少しずつだけど変わってきましたよね。

 「今まで、必ず対バンがいくつかいる中でライヴをやってきたんですけど、『eureka』のツアーでは、名古屋と大阪はツーマンで、東京はワンマンでってなって。そうなると、自分たちを観たいお客さんがそこに集まってるわけじゃないですか。こう言ったらなんですけど(笑)、元々求められてないところにいって、そこでぶちかますのが好きだったから(笑)。それが、ステージに出た瞬間にウェルカムな状態で、もちろんそれは嬉しいんですけど、ちょっと調子が狂うっていうか、このままだと気が緩んでしまいそうだなって。変な危機感みたいなものを感じながらツアーをやってて」

 ■それは変な危機感だ(笑)。

 「すべてが受け入れられてしまうと、ミスとかもOKみたいになっちゃうんじゃないかなって。これは気持ちを引き締めていかなきゃなっていうことを考えさせられたツアーでした」

 ■みんな、人生においても、周囲から受け入れられることなく、ここまできたんだろうね(笑)。

 「いやいやいや、みんなちゃんと友達とかもいますよ(笑)」

 ■でも、お客さんみんながきのこ帝国目当てっていう環境でライヴを見たのは、自分もあの時が初めてだったんだけど、同世代の日本のバンドとは全然違う客層だなって思いましたね。UKインディーとかUSインディーの話題のバンドが来て、超満員になってるUNITの感じとほぼ変わらないっていう(笑)。

 「うん。昔から客層が謎とは言われてきていて。どういうタイプのリスナーを想定したらいいのかわかんないって。でも、逆に自分らはそこがいいと思ってて。これだけいろんな人に聴いてもらえたっていうのは、思わぬ誤算っていう感じで嬉しいですね」

 

(続きは本誌をチェック!

 

text by 宇野 維正

 『MUSICA1月号 Vol.81』