Posted on 2014.01.14 by MUSICA編集部

闘い続けたバンドの最重要傑作が完成
Dragon Ash、『THE FACES』を語る

このアルバムを6人で死に物狂いで作ったことが、この後の男としての人生とか、
音楽家としての人生に絶対に活きてくる。それはもう確信してる。
マインドとしてこんなに音楽に向かえるんだっていうのは財産だなと思った

『MUSICA 2月号 Vol.82』P.12より掲載

 

■本っ当に素晴らしいアルバムですね。

 

「ありがとうございまーす!」

 

■Dragon Ashの核心と、この3年の間いろんな苦難に直面しながらも闘い続けてきたバンドのストレートな想いと生き様が素晴らしい楽曲とサウンドに結実したアルバムであると共に、素晴らしいメッセージソング・アルバムでもあって。ご自分ではどうですか?

 

「Dragon AshがDragon Ashであるために作ったアルバムだから、そこは100%できてると思うんだけど、それが素晴らしいかどうかは自分ではちょっとわかんない。でも、みんな誉めてくれるから、やっぱ頑張ったら伝わるんだなとは思ったけど」

 

■なるほど。このアルバムは、この3年間に起こった様々な苦難と悲しみがあったからこそのものでもあるとは思うんですが、そもそも、前作『MIXTURE』を作り終えた後、次にどういうものをめざそうっていうイメージみたいなものはあったんですか。

 

「そもそも『MIXTURE』が終わって次にやるかってなった時に、まず、この状態でここからやるんだったら、コンセプトとか方向性とかそういうことじゃなくて、何も犠牲にせず、1回全部を超越するようなところに行けないとダメだっていうのは思ってた」

 

■それだけ『MIXTURE』に達成感があったってことですよね。

 

「うん。あと、あのアルバムに至るまでに正直遊び尽くしたし、今後また遊ぶために、1回身を削ってガチ

で出さないと意味がないんじゃないかな、みたいな話はしたけどね」

 

■言ってみれば『MIXTURE』ってひとつのコンセプトアルバムでもあったと思うんですよ。それは、ミクスチャーロックバンドっていうのはどういうものなのかってことを他の誰でもないDragon Ashがきっちりと提示し、ポップスに完全に覇権を奪われて存在意義が揺らいでいたロックバンド・シーンに高らかに掲げるっていう。だから曲の作り方も――当時のインタヴューでは、長いやってきて技術もついてるから本当は手首のスナップだけで敵を倒せるんだけど、でも観てる人にとっては『マトリックス』みたいにのけぞったり、派手なKOシーンのほうが盛り上がるわけで、そういう部分も意識をして作ったって話してて。でも、今回の作品はある意味それとは真逆にアプローチで、だけど最もロックバンドっていうものの在り方を体現したアルバムになっていて。

 

「そうだね。今はもう片足ももげてるしさ、『マトリックス』みたいな体勢は取ったり、スレスレのところで見切るってことができない状態だからね。視野に入ってきた人を力いっぱいぶん殴るしか術がない状態だから。前とは違うよね。選択肢の中で身を焦がすっていうのとはワケが違う。選択肢もなく、もう焦げっぱなわけで(笑)」

 

■だからもの凄くエモーショナルだし。スキルであったり音楽的な成熟はもちろんあるんですけど、でも、それこそファーストアルバムのような巨大な初期衝動、しかも切羽詰まった衝動が凄い溢れていて。それが大きな感動に繋がっていくんだと思うんですけど。

 

「うん、わかるわかる。その両立はめちゃくちゃできたよね。どんだけ凝ったアレンジしたりギミック使ったりしても、結果的に衝動性が失われないっていうのが一番カッコよくて。で、そこはできてると俺も思う。それは個人的にめざしてたところではあるけど。まぁでも、そうならざるを得なかったっていう状況もあるよ。だから簡単に言うとゾーンに入ってたって噂もある(笑)。完全に瞳孔開いて研ぎ澄まされた状態のまんま全速力で走るっていう、そういうもの凄い状態を1年間キープして、このアルバム作ったっていう。それをやり遂げることができたっていうのは、やっぱりメンバーのガッツでさ。そこらのバンドとは修羅場の数が違うから。その強靭さとかは放っといても出るんだと思うんだよね。で、それが結実するようなサウンドメイクもできてるし、集中もできてるしっていう状態を1年以上持続できたっていうのが、アルバムを最後まで枯渇せずに作れたことだったり、でき上がって近しいスタッフとか周りのヤツらが『すげぇいい』って言ってくれてる評価だったりに繋がってんだと思うけどね。メンバーの達成感もすげぇ高いし。だからやってよかったなって思ってる」

 

■実質的な1曲目が“The Show Must Go On”という曲で、何故Dragon Ashがあれだけのことがあった上で今もバンドを続けているのかが、シリアスな言葉と共に表明された楽曲なんですけど。この言葉、馬場さんが亡くなった2ヶ月後くらい、つまり2012年の6月末に、“Run to the Sun”の配信リリースに際してウチで記事を作るにあたって建志さんに直筆のメッセージが欲しいってお願いしたんですよ。で、色紙に書いてもらったんですけど、その時に書いてくれたのが、まさにこの「The Show Must Go On」っていうひと言で。

 

「あ、その時からすでにあったんだ! ………ヤバい、間違った認識のまんまインタヴュー30本ぐらい受けたわ(笑)。そっか、そんな早い段階からあったのか」

 

■その時に曲ができてたかどうかはわからないですけど。
 

「いや、曲はなかった。俺の中の座右の銘だよね」

 

■なるほど。このスローガンこそが、今回のアルバムの芯であり、そして今のDragon Ashを走らせているものだと思うんですが。

 

「間違いないね」

 

■曲自体はいつぐらいにできたんですか?

 

「“The Show Must Go On”はレコーディングしたのが6月ぐらいだと思う。そのぐらいの時に『THE FACES』っていうアルバムのタイトルを決めて、アルバムの顔になる“The Show Must Go On”と、あと“Introduction”を録ったんじゃないかな。6月に録ってるってことはもうちょっと前に作ったってことだけど。たしかその頃までにアルバムの半分くらい録ってたんだけど、『まだ1曲目が出てこないな』みたいな感じになって。で、じゃあそろそろ流れ考えて作ってみようかってなって、この“The Show Must Go On”を作ったんだと思う。アルバムの一番最初の歌い出しできっちり自分達のアティテュードを示してから、アルバムに入りたいっていうのは強くあったから。だったらこれを歌うしかないだろうって感じだったんじゃないかな」

(続きは本誌をチェック!

 

text by 有泉 智子

『MUSICA2月号 Vol.82』