Posted on 2014.04.15 by MUSICA編集部

Gotch、待望の初ソロアルバムで
描き出した音楽の自由と真実

いろんなことに臆病になるのをやめたいなって思った。
「音楽的にこれはどうなのか」っていう問いは置いといて、
もっと自由にやろうよ、元々音楽に正解なんてないんだよって

 

MUSICA 5月号 Vol.85P.60より掲載

 

■『マジックディスク』の頃にソロアルバムを作りたいっておっしゃってた時から本当に待ち望んでたんですけど、遂に完成して。これ、聴いていてもの凄く楽しい、ワクワクするアルバムですね。

「ありがとうございます。よかった、よかった。その楽しいっていう感想は凄く嬉しいです」

■最初に聴いた時、初期のBeckみたいなアルバムだなって思って。Beckがフォーク、ロック、ヒップホップ、ブルースを自由に融合させて彼だけのオルタナティヴを作っていったのと同じ感性とアプローチを感じたんですよね。ご自分ではどうですか?

「今回は特に昇華してないっていうか。意味とか意義とかは置いておいて、日常のルーティーンの中で作りたい、リラックスして作りたいっていうのがひとつの目標としてあったんで。『もういいじゃん、意味とか』みたいな」

■はははははは。

「もちろん考えてないわけじゃないけど、『そういうのはいいじゃん、ちょっと置いておこうよ』っていうようなアティテュードで作ったところもあって」

■聴いていて凄くワクワクするんですよ。それは曲がいいとかもあるけど、何よりも作り手自身が音楽を生み出していく時のワクワクしたフィーリング、閃きや偶発性の中に見た興奮やキラキラ感みたいなものがそのまんま詰まっていて。それが凄くいいんですよ。

「そうですね。作り方として、ラフなスケッチからそのまま完成まで持ってっちゃうっていうやり方をしてるから、最初の思いつきみたいなのが保存されてるっていうのがあると思いますよね。バンドだと、1回キャンパスを変えるから、そこの善し悪しっていうのがあると思って。もちろんそうやって作ったほうがいい音楽もあるけど、今回は、思いついた簡単なフレーズを1回録ったら、そのままそれをベースに重ねていくやり方がいいなって思って」

■「ソロアルバム作りたい」っていうのは『マジックディスク』の頃からあったと思うんですけど、今話したスタンス含め、このアルバムに向かう具体的な作業が始まったのはいつだったんですか?

「でも『マジックディスク』ぐらいから、デモの制作っていうのはやってて。当時からどうしてもアジカンにはあぶれるような作風も出てきちゃってたから。それをどうにかこうにか収めたのが、『マジックディスク』だったような気もするし」

■はい、そうですね。

「だからその時に、すでにある種のアイディアはあったんだと思いますし。で、『ランドマーク』を作りながら――『ランドマーク』はセッションでやっていったんだけど、その中で『これはアジカン向きではないな』ってこぼれたアイディアもあったし。あと、ほんとにパーソナルなフィーリングで作ったものって、バンドに持っていくと噛み合わせが悪いんだなって思ったんだよね。俺は、アジカンに参加する時はアジカンのチャンネルを開いて、それ用に曲作ってるんだなっていうのがわかったというか。だったら、そういうものをバンドに持ち込んで無理なストラグルを抱え込むよりは、自分の作業場でふらっとできたものをふらっと仕上げていったほうがヘルシーなんじゃないかなと思って。実際、そういうやり方にして凄くよかった。風通しがよくなったというか。自分の中に凄くやりたいことがあっても、バンドに持っていった場合はまずどうやってメンバーをこっちに向かせるのか?に労力を使わないといけないから」

■それぞれプレイのスタイルもありますしね。

「そう。重なり合うところと合わないところがあるから。それはどのバンドもそうだと思うけど。そういうところから解放されるっていうのは、ラクと言えばラクですね。いい/悪いはあると思うんだけど、今のタイミングではもの凄くよかったんじゃないかなと」

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text by 有泉智子

MUSICA5月号 Vol.85