Posted on 2014.07.15 by MUSICA編集部

クリープハイプ 、ニューシングル『エロ/二十九、三十』
尾崎世界観が語る、バンドの「今」と自らの覚醒

昔、歌手をめざしてる女の人が出てきて歌って
偉そうなプロデューサーがボタン押すと
歌える時間がちょっと伸びるっていう番組があったんですけど。
あの感覚なんですよ。
その間にいい歌を歌わなきゃ、結果出さなきゃ!みたいな

『MUSICA 8月号 Vol.88』P.33より掲載

 

■ちょうど1年ぶりの表紙です。

「そっか、もう1年なんですね」

■はい。前回はアルバムでしたが、今回は素晴らしいシングルと共に飾っていただきます。今回はふたつのテーマに分けてインタヴューしようと思ってて、まずはシングルインタヴュー。で、もうひとつは、尾崎世界観のラヴソングをまな板の上に乗せて、尾崎にとってのラヴソングおよび恋愛観を紐解いていきたいと思ってます。よろしくお願いします。

「よろしくお願いします!」

■まずはシングルなんだけど、ほんとに最近書けるよね、曲が。

「曲は凄い書けますね」

■この豊作状態は自分の中でどういう状況だと思ってるの?

「うーん……でも、『書けてる』というよりも、『書いてるな』って感じですね。曲を書くことに関しては、地に足が着いてるっていうか」

■乱暴に言えば、インディーズの頃、メジャーに行って2枚アルバム作った時期、そして『寝癖』以降と、今のクリープハイプは3段階目に入ってるとも言えると思うんだけど、ここでもう1回自分の中で明確にギアを上げたっていう意識とか、そういうやり方の違いってあるの?

「いや、そういう感じはなくて、全然続いてる感じです。たとえば車の話で言うと、高速に乗ってるわけじゃなくて、ずっと下道で繋がったまま来てる感じはしますね(笑)。だから『どこで止まって、どういう道を来たか』っていうのは凄い明確に覚えてて。……これ、曲を書くことに関してはですよ。バンド活動に対しては、何回か事故ってますから(笑)」

■そうだよね。

「ただ、曲を作って歌詞を書くっていうことに関しては、今は凄い調子がいいっていうのは自覚してます」

■車の例え話に乗って訊くと、ここでバシッとスーパーチャージャーとかターボを積んだぞって感じではないんだ?

「その感覚はないですね。『こんなところにあったんだな』って気づいて、それを使ってる感じ。途中でそれを手に入れたっていうよりも、『あ、ここにこんなボタンあったんだ』っていうのを発見して、ボタン押してみたらもっと速くなったっていう、そういう感じですね。だから、自分の中にないものが急にっていうわけではなくて、それの使い方がわかったっていうか。それはバンドなんですけどね、一番デカいのは。『このボタン、なんなんだろうな?』って思いながらもなんとなく放ったらかしにしてたけど、それを押してみたら、こんなふうになるんだっていう、バンドのボタンだと思います。やっぱりここまでの過程でバンドが上手くなったし、武道館を経験して自信も持てただろうし。それは凄く大きいですね」

■半年前ぐらいから、バンド側からの尾崎の音楽に対しての反射神経は明らかに凄く増してるんだけど、同時に尾崎からもバンドにサインを送ってるんじゃないかと思うんですよ。で、今までとは違うサインの出し方が自分の中でわかってきた部分があるんじゃないかな、と。で、メンバーも「あ、やっとサインを投げてくれたな」って反応して、音を鳴らしてる感じがする。特に“二十九、三十”なんて、バンドのテンションがないと成立しないバラードだと思うんだよ。

「そこはどっちもあると思いますね。メンバーができるようになったから俺からも自然と出てきたし、で、俺の反応が変わったことでメンバーもそこにまた反応してっていう。どっちが先と言うよりは、交互にっていう感じかもしれない――まぁでも、俺から何かを投げかけたっていう感覚はないですね。先に俺が受け取った気はするな。……ストレスなくできるようになったなっていうのは、いつからかあって。……やっぱり、俺は時間をかけてずっと曲を作って歌詞を書いてるけど、3人は聴いた瞬間に反応しなきゃいけないから、凄い緊張感ですよね。たとえて言うなら、俺はペナントレースみたいなことをやってるわけじゃないですか。年間通して延々とバンドのことを考えて曲を作って、歌詞を書いてる。でも、3人は、俺から(新しい曲が)来た時にすぐ返さないといけないっていう、言ってみればこの1試合しかない!みたいな状態の中で毎回やってるわけで。ポイントポイントで俺から来たものをその場で打ち返さなきゃいけないっていう。だから闘い方が違いますよね、たぶん」

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.88』