Posted on 2014.07.17 by MUSICA編集部

ゲスの極み乙女。
確信を胸に堂々のポップ革命宣言!

このシングルで1個変わって、
次の作品は自分の中で到達してしまった感があるんですね。
「これを出したら、バンドを諦める人もいるんじゃないかな」
ってぐらい手応えがあって。
本当にこれでひとつ終わるんじゃないかなっていう自信があります

『MUSICA 8月号 Vol.88』P.96より掲載

 

■調子はどうですか?

「ちょっと風邪ひいてるみたいです」

■いや、体調ではなく、バンドの調子のほう。

「あぁ(笑)。バンドの調子はいい感じだと思いますね」

■ここ最近、ゲスに関しては世の中の状況的に特急に乗ってる感じになっていて。それを象徴する今回のドラマタイアップだと思うんですけど。川谷くん自身は最近の状況をどういうふうに捉えてるんですか?

「でも、メジャーデビューする前に『僕らの音楽』出たりもしたので、今の状況が『より来てるか』って言われると、そうでもない気がします。というかここ3ヵ月ぐらい、状況っていうよりも、ほんと忙殺されてて」

■そんなに忙しいんだ?

「週末はツアー、平日は全部レコーディングみたいな生活を送ってたんで。だからあんまり状況を考える暇がない(笑)。タイアップの話が来た時も『ヤベェ、曲作んないと』みたいな感じになって。今までは音楽を追っかけてやってたんですけど、逆に追われる立場になったような感じがして………」

■はははははは。「音楽を作る」ということに追われて生きてるんだ。

「そんな感じですね」

■ただ、そういう状況にあっても戦略的なことも考えなきゃいけないわけじゃないですか。ゲスに関しては、特にそうだと思うんだけど。

「でも、そういう意味で言えば、これまでかなり戦略を立ててやってきたんで、逆に今だったら何やっても大丈夫かなっていうふうに思っていて。自分の中では攻めてるというか、あまり考えずに曲を作ってます」

■そうなんだ。『みんなノーマル』の取材の時に、その前の『踊れないなら、ゲスになってしまえよ』というアルバムは、流行りモノである4つ打ちロックに対する批評性として敢えて作った作品だったにもかかわらず、イマイチその真意を理解されないまま表層的なところでヒットしてしまったと。そこに疑問点を抱く一方で、でも、ヒットして状況もブレイクした今だからこそ、今度は敢えてBPMを落として流行とは違う踊れるロックを作っても大丈夫なんじゃないかと作ったのが『みんなノーマル』だった……という話をしてくれたんですけど。実際出してみて、感触はどうだった?

「うーん……それもあんまり変わんなかったというか、『みんなノーマル』もすっと受け入れられたんで……だから逆に『ということは、みんな別になんでもいいのかな?』っていうふうに思ったところもあって」

■その「なんでもいいのかな?」という言葉は、凄くシニカルな意味で使ってるのか、それとも「俺が作るものはみんな面白いと思って聴いてくれるんだ」というポジティヴな意味で使ってるのか――。

「あ、後者です。ポジティヴな意味でなんでもアリというか。自分が『いい』と思うものを作れば受け入れられるんだなっていう自信がついた1枚でもありましたね。だから今回のシングルもその延長線上というか、そのままやってみようっていう気持ちで作ったんですけど」

■表題曲である “猟奇的なキスを私にして”はドラマ『アラサーちゃん 無修正』の主題歌であり、歌詞もドラマと絡めて考えてると思うんですけど。実際、どういうことを考えて作ったんですか?

「でも僕、あんまりアラサーの女の人の気持ちとかわかんないんで、原作の漫画を読んでも共感するところまではいかなかったんですよ。だから最初は何を書いていいのかわからなかったんですけど、漫画の内容がエグ過ぎて(笑)。それで『うわっ』って思った時に、<猟奇的>っていう言葉が浮かんで。そこからはサクサク進んでいきました」

■音楽的には、そんなに猟奇的なサウンドアレンジをしてる曲じゃないと思うんですよ。むしろ凄くポップ。これは内容的に「猟奇的な」イメージが生まれたからこそ、音楽的にはポップなものにしたんですか?

「っていうよりは、ドラマの内容的にもエグいサウンドはあんまり合わないだろうなと思ったんで。僕の中では<猟奇的>っていう言葉がポップにハマったんですよ(笑)」

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.88』