Posted on 2014.08.20 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、初の東京ドーム独占密着
&ツアー「WILLPOLIS 2014」全総括大特集!!!

忘れ難き東京ドーム、あの光は何だったのか?
かけがえなきツアー「WILLPOLIS 2014」、
この多幸感と今まで観ることなかった
4人の表情は、どこからやって来たのか?
全40ページ、今、そのすべてをあなたに焼きつけたい!

『MUSICA 9月号 Vol.89』P.24より掲載

 

7月31日(木) 東京ドーム

 

 11時少し前に東京ドーム前に到着すると、そこは昼前から祭りが始まっていた――。

 何しろバンドのタオルを掲げた人の多さに驚く。あとで話を聞くと、朝の6時半の時点ですでに2500人、11時の時点で8000人が会場の周りに駆けつけ、グッズを購入する列を成したという。ドームをバックに記念撮影をしたり、木陰を見つけてぼーっとしていたり、思い思いのやりかたでみんなが特別な夏休みの1日を過ごしている。この日は猛暑にして多湿な1日。さぞかし暑く熱い1日を過ごすことだろう。くれぐれも熱中症にはならないようにと願いながらドーム内に入った。

 ドームにそびえ立つステージを眺める。テクニカル・リハーサルの幕張メッセで窮屈そうに収まっていた巨大な要塞のようなステージが、ここドームでは当たり前だが、ピタッっと気持ちよさそうに居座っている。

 広いなあー。

 11時20分に楽屋に入ると、4人共揃ってご飯を食べていた。リラックスしているようにも見えるし、いつもより寡黙な空間から緊張しているようにも見える。

「いや、もしかしたらそういうの(緊張)もあるのかもしれないけど、どっちかというと、いつもと勝手が違うから、居心地が悪いというか、不思議な感じがしてさ」とチャマが笑顔で言う。

「今日はさ、思いっ切り楽しんでよ、しかっぺもさ。こんな広いんだから、好きにしてていいと思うよ、ふふふ」とフジが静かな声で話してくれた。

 楽屋の隅ではこの時間から快活なチョッパーベースが聴こえてくる。チャマが元気よくベースを叩きまくっている。「俺なりの東京ドームへのリスペクトなんだよ」と、新木場スタジオコーストのライヴで着たベースボールユニフォームとも甚平とも言えるような、「TOKYO」というロゴが入った真っ赤な服を着ている。

 隣りにいる升は、彼独特の非常に姿勢のいい恰好でご飯をきちんと食べながら、今年のフジロックがどうだったかという僕の話を、目を輝かせながら聞いている。

 増川がすっと楽屋に入ってきて、なんかモジモジしている。思い出せば、初期のライヴの楽屋の増川はよくモジモジしていた。なんかライヴまでどうしようかね?みたいな感じだったんだと思う。その頃の彼を少しばかり思い出すが、しかし今の増川はライヴまでの自分のモチヴェーションの高め方も、そして何よりも自分のBUMP OF CHICKENとしての役割をしっかり握りしめている。だからこの日モジモジしていたのは、やはりこの日なりのほんの少し特別な感情だったのだろう。

 同じようだと言えば同じ、でもやはりほんの少しだけ違う、この日のバックエリア。でもそれはどこでもいつのライヴでもそうだったなと思うわけでもあり、でもそれでもやはり何かが違う、そんな昼時を過ごした。

 12時半、チャマがアコギを持ち出し、“firefly”、“宇宙飛行士への手紙”などを軽快に、しかし大声で歌い出す。その隣りで「ところでチューニングルームって今日はどこにあるの?」と増川が訊くと、「あそこを曲がって、あそこを降りて」と随分と複雑な説明になり、「やっぱり東京ドームは違うね」とフジと共に笑い合う。そのフジがアコギを手に取ったのが12時47分、喉を転がしながら穏やかな発声練習を始めた。メンバーの多くは巨大なステージにサウンドチェックに向かっている。フジの発声練習はいつもよりゆっくりというか、自分の喉や身体全体のコンディションとだらーんと自然に対峙しながら声を出しているように感じた。

 そのフジが静かに楽屋から出て行ったなあと思ったら、5分ほどして「意味もなく遠くまで行ってしまった。そしてまた帰って来てしまった」と苦笑いしている。なんだか心配ごとがありそうな、落ち着かない表情にも見える。

「みんないなくなっちゃったね。そういえばツアー中、この時間になるとよくしかっぺとふたりっきりになったよね、ふふふふ。ツアーも最後になっちゃったけど、どうだった?」と言ってくれたので、しばし話をした。

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA9月号 Vol.89』