Posted on 2014.09.19 by MUSICA編集部

アルカラ、さらに大きく結実した狂騒のスペクタクルロック

横断歩道を白線の上だけ歩いて渡るような――
なんでも自分でオモチャにして、勝手にルール決めて、
目の前にあるすべてを面白くする。
文化とか芸術ってそういうものなんかなって思えたんですよ

『MUSICA 10月号 Vol.90』P.112より掲載

 

■えらい真っ向から挑んだ力作というか、歌謡とパンク、物語とフィクション、衝動と技巧性という相反するアルカラの持ち味がバランスよく出てる作品だと思って聴かせてもらったんですが。

稲村太佑(Vo&G)「そうですね。前作の『むにむにの樹』がおとぎ話をテーマにしてたので、それと真逆というか。あれはおとぎ話っていうだけあって、幼い感じを見せながら人間の本質を見せていこうっていう感じやったんですけど。今回はそういうフィルターをあんまりかけずに、素直にロックをやってみようっていうのが最初のきっかけで――前回のインタヴューで『アルカラっていうバンドは東京ディズニーランドのような遊園地だ』っていう名言をいただきましたけど」

■そうでしたね。表向きはもの凄く楽しいエンターテイメントだし無邪気なファンタジーのようだけど、裏側から見ればもの凄くストイックな精神性や完璧に練り上げられた世界観に支えられているからこそっていう。

稲村「そうそう。そういうバンドとして幅を広く出していくべきなんじゃないかっていうところで、歌詞とか雰囲気でふざけた部分を見せる曲もありつつ、意外とそういう曲に関しては演奏面でストイックなことをやってたりして。その両面性が、今までの作品と対比してもより見せられるような作品になっていったというか。……最初は単純に『カッコいいものを作ろうぜ』みたいな感じだったよね?」

田原和憲(G)「うん。前作との対比があればいいなって感じから始まって、作っていくうちにどんどん固まっていった感じですね」

下上貴弘(B)「前は1枚でストーリー性があったんですけど、今回は1曲1曲にストーリーがあって、それが繋がってるというか。フレーズ作りに関してもしっかり分けてヴァリエーションが作れたかなって思いますし、ロックな部分や歌っぽい部分も上手く詰め込めれたかなって」

疋田武史(Dr)「同じアルカラでも前作とは違う顔が見せれたっていうか。自分なりのロックが今作では表現できたかなと思ってます」

■その「自分なりのロック」って具体的にはどんなものでした?

疋田「本当に個人的なことなんですけど、8ビート感があるのがロックなイメージなんですよ。で、今回はベースとドラムで16分の感じがあって。ふたりでは細かく取ってるのに、全体で聴いてみると8ビートみたいに大きく聴こえるようなリズムだったりして、そういう遊びができているっていうのは自分なりのロックの表現なのかなって思います」

下上「なんか『16に聴こえない16ビート』感みたいなのがあって。意識したわけじゃないんで、なんでかって言われるとわかんないですけど(笑)。でも、前作との対比を考えてたのもあったんですけど、結果的にそれ以上に自然に出てくるもの、自分達からナチュラルに出てきたものを曲として作っていくっていうスタイルになっていって、ベースとドラムに関しては、8ビートっぽいんですけど16みたいな感じっていう。単純に聴こえるけど単純じゃない遊びみたいなものになったなと思います」

■うん。今みなさんがおっしゃってくれたことが凄く大きい気がしていて。難しいことを如何にそう感じさせずに聴こえさせるか、単純なことを如何に面白く聴かせるか。そういう逆説的な遊び心のあるロックがアルカラだと思っていて、そういう部分が今回の作品は凄く聴こえてくる気がするんですけど。

稲村「結局、僕は聴いた感じでわかりやすい音楽っていうか、『なんかオモロいな』っていうのが好きなんですよね。まぁ、ある程度デフォルト化されたものも別に嫌いじゃないし、そのデフォルトから外れてるものでも全然ワケわからんなって思うから。そういうのって同じ匂いがしてて、結局、アルカラの曲ってそういう匂いがしてるんだなって僕は思ってるんですけど。まっすぐ赤を赤と見せたり、白を白と見せるだけやったら、掘り下げる側としては面白味がないなって」

■「素直にカッコいいロックをやってみよう」って作り始めた作品が結果的にそういうものになっていくのが、如何にもアルカラらしいよね。

稲村「たぶん、僕が曲とか掘り下げることが好きなタイプやからなんでしょうね。どういう音を使ってるんだろう?とか、どういう音階を並べてるんだろう?とか、その瞬間瞬間のハーモニー的なものが繋がっていって曲になっていくわけじゃないですか。そういう分析的な感覚で言ったら、『無駄に難しいことしてんな』って思うところもいっぱいあるんですよ。でも、全部通して聴くと素直に聴こえるというか。そういう好きなことが今回はできたんじゃないかなと思いますけどね」

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text by 寺田宏幸

『MUSICA10月号 Vol.90』