Posted on 2014.10.15 by MUSICA編集部

ゲスの極み乙女。――今最も新しい日本の音楽シーンの顔、
そのすべてがわかる全20ページ「ゲス白書」!
Section 1. 川谷絵音ソロインタヴュー

僕らは自分達で何もしなくても
勝手にエンタメ性があるバンドだって気づいたんです。
だから、逆に音楽にエンタメ性を求める必要がないなって思ったし、
もっと自分の本当の中身を出して、ちゃんとした音楽にしたかったんです

『MUSICA 11月号 Vol.91』P.18より掲載

 

■本当にゲス印が満載なアルバムになりました。前回の『猟奇的な(キスを私にして)』のインタヴューの時にも、「このアルバムを出したらバンドを辞める人が続出するだろうし、これでひとつのシーンが終わるんじゃないか」っていうふうに話してくれたんだけど。

「そうですね(笑)。自分達の中では金字塔的な作品だと思いますね。今もまた新曲作ったりとかしているんですけど――」

■また!? どっちの新曲なの?

「ゲスのほうです。まぁ、indigo(la End)も作ってますですけどね(笑)。けど、まだまだイケるなっていうか。この作品をずっと繰り返し聴いてて、それでまだまだいろいろできるなって気づいたこともあったんで」

■そういう意味ではさ、一番最初の『ドレスの脱ぎ方』を出してから、まだ1年半強しか経ってないんだよね。今、indigoもフルサイズのアルバムを作ってると思うし、バンド以外への楽曲提供も盛んにしてるし、異常な楽曲数だよね。

「そうですね、もう今年何曲作ったか覚えてないです(笑)。でも、これまでもずっと曲を作ってはいたので曲を作るペースとしては今までとあまり変わらないというか。ただ、『これをよしとする』とか『これは曲として出していい』っていう基準は変わりましたね。最近は『ここまでやらないと出せない』みたいな基準を設けているので」

■その、昔と今で自分の中でのハードルが違うっていうことは――絵音くん自身、世の中のいろんな楽曲を自分なりにセンサー働かせて聴いていたし、それだけの曲を作ってきた中で世の中の楽曲を分析したり、批評してきたと思うんだよね。

「そうですね」

■そういう自分自身がこの1年半の中でソングライターとして進化していて、その進化してる自分とプロデューサーとして分析してる自分とが追いかけっこしながら自然とハードルが上がっていったっていう感じなんですか?

「というよりは、今はやらないといけない状況にあるから、だんだん洗練されていくというか……自分の中で明確に『これ!』っていうものが見つかるんですよ。ポップスイッチみたいなのが入ってきて。今回は結構スイッチを入れて作ったんで、今までとは全然違うものができたと思います」

■今回の曲って、今までの曲とはレベルが全然違うし、総じてドラマ性が強いですよね。要するに、今のお話でいくと、自分の中でポップなスイッチが入ったことによって、絵音くん自身のモードも変わったっていうことですよね。絵音くんの中でどういうポップが自分の中に見つかって、それをどういうふうに噛み砕いてこういう作品になっていったんですか?

「“猟奇的なキスを私にして”を作った時に思ったんですけど、ゲスの極み乙女。が持ってる他3人のプレイヤビリティを――今までは無理に誰かをフィーチャーしたりしてたんですよ。たとえばショパンを入れたり、ベース(のソロパート)を入れたり。でも、あんまりそういうことをしなくてもゲスの極み乙女。になるなっていうのをシングルで確認できたんです。今までは名前に引っ張られて批評性を出したりもしていたんですけど、もっと個人的でもいいというか。だから、歌詞も今回は内省的なものが多いんですけど」

■っていうか、今回の曲は全部内省の極みだよね。

「そうですね(笑)。もっと自分を出したくなって」

■それは、何をもって絵音くんの中でそういう気持ちになっていったんですか?

「本当の話をすると、これまで課長(休日課長/B)が仕事をしながらバンドやってて。その時まであんまりこのバンドにスイッチが入り切らなかったんですよ。自分の中で――」

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA11月号 Vol.91』