Posted on 2014.10.16 by MUSICA編集部

グッドモーニングアメリカ、僕達が今生きる場所――
金廣真悟が『inトーキョーシティ』で今最も歌いたかったこと

「みんな、コップ使ったことあるよな」とか
「みんな、カメラ使ったことあるよな」とか――
極端に言えばそれくらい普遍的なことしか歌ってないんだと思うし、
それが希望だとしても、痛みだとしても、
本当のことであればいいって思ってる

『MUSICA 11月号 Vol.91』P.72より掲載

 

■本当に素晴らしい作品だと思いました。

「お、ありがとうございます!」

■純粋にグッドソング集としても素晴らしいし、金廣さんの持っている人間観だったり、生活だったり、痛みだったり、希望だったり――それが、言葉だけじゃなく音楽として鮮やかなポップソングに昇華されている作品だと感じて。金廣さんとしては、どういう手応えを持たれてますか?

「ああ、確かに表現することが上手くなったなぁというか――自分の身近な、小さなことをピックアップして歌にするっていうことが上手くなったのかなって思いますね。それは呼人さん(寺岡呼人/“イチ、ニッ、サンでジャンプ”からプロデューサーとして参加)と出会ったことで歌詞の書き方がより具体的に変わったことが大きいと思うんですけど。そういう自分の小さな想いだったり、小さな悩みだったり、小さな景色みたいなものから大きなことを歌っていくっていうのができるようになってきたというか」

■その「小さなことから大きなこと」っていうのをもう少し具体的に言うと、どういうことですか?

「自分の生活からピックアップして歌にしていくっていう大枠でのテーマは変わってないんだけど、今回作った曲っていうのは、ツアー中とか、より自分の身近な環境の中で書いた曲が多いから、ピックアップしていく身近なものが、さらに小さくなっていったと思うんですよ。誰にでも当てはまるような身近なものから、その身近なものの中でも大きなテーマ――たとえば『何故生きて、何故死んでいくのか』みたいな大枠のところに繋がっていくっていう……そういう振り幅とかギャップが大きくなったと思うんですよね。だから、言ってくれたように、俺っていう人間がより深く伝わる作品になったのかなって思いますね」

■そういう歌を込めた作品にしたいっていう意図がそもそものイメージとしてあったんですか?

「うーん……それは結果としてっていう感じかな。曲の作り方も変わっていないし、結局、歌詞先行で作った曲は“スクランブル交差点”くらいだし。歌の部分だと、まずはオケに対してふっと出てきた適当な言葉を掘り下げてテーマが決まっていくっていう作り方で。たとえば“inトーキョーシティ”だったら、オケに対して適当に歌っているうちに<被害者><加害者>っていう言葉が出てきたところから『それは、自分にとってどういうことなんだろう?』『何を歌いたくて、何に繋がるんだろう』って考えて掘り下げたり、“アブラカタブラ”だったら<平成>っていう言葉が出てきて、『平成って何だろう?』って考えて掘り下げていったり――その結果として、小さなことから大枠のことまで繋がっていく歌になったと思う」

■今おっしゃった、最初に出てくる適当な言葉っていうのは、曲に呼ばれるっていうか、曲の喚起するイメージによるところが大きいんですか?

「そうだと思う。これはいつものことではあるんだけど、曲中の設定とか、曲を書いた時の環境や自分の状態、そういうものにピッタリとくる言葉を探していく感じなんだけど――」

■それで言うと、どれくらいの時期・環境で作った曲が多いんですか?

「大体が6月のツアー中に作った曲なんだけど――こうして見ると時期的には結構バラバラな曲も入ってる。たとえば“スクランブル交差点”とかは、グッドモーニングアメリカになる前(前身バンドのfor better,for worse)から原型があった曲だし、“夕暮れ”は、ほぼ完成した状態で『ウォールペーパーミュージックじゃ踊りたくないぜ』の頃からあった曲で。“inトーキョーシティ”は、書初めみたいな感じで今年のアタマに書いたから、比較的新しい曲なんだけど」

■つまり、より金廣さんの「生活」に近いところで生まれていった曲が多いということですよね。書くことが小さくなっていったっていうのは、そういうことなのかなと。

「そうだね。だから、書くことがより俺の見た身近なものっていう感じになってるんだと思う」

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text by 矢島大地

『MUSICA11月号 Vol.91』