Posted on 2014.11.16 by MUSICA編集部

クリープハイプ、決死の1年間の集大成
アルバム完成翌日インタヴュー

今までだったら、もうちょっと人を傷つけるような言葉で
この1年を表してたと思う。
だけど、『一つになれないなら、せめて二つだけでいよう』っていう
タイトルでアルバムを出せたことで俺は勝てたと思うし、
一連の出来事をちゃんと包めた

『MUSICA 12月号 Vol.92』P.46より掲載

 

■昨日(10月30日)完成したんだよね? おめでとう。

「ありがとうございます(笑)。ギリギリで、発売の1ヵ月ちょっと前になっちゃいましたね……。まぁ元々ギリギリだったんですけど、1曲入れられなくなった曲があって。マスタリングもズレて………クソぉ」

■またそれは後で訊きますが。まず、尾崎自身はこの作品にどういう感想を持ってますか?

「……凄く満足してますね。作れてよかったなと思うし……いろいろあった1年だけど、ソングライターとしての自分がフロントマンとしての自分を助けてたんだ、だからやってこれたんだって、アルバムが完成して思います。いろんな状況の中で、やっぱりできてくる曲に救われてきたし。それを昨日マスタリングして聴いてる時に改めて思いました。1曲1曲ちゃんと作ってたっていう実感があったし、レコーディングした時も手応えがあったけど、完成したアルバムを通して聴いた時に『これが受け入れられないんだったら、新しいバンドが次々に出てきた去年の流れに乗っかってただけってことだな』って思ったし。そうやって思えて今はよかったなって思います」

■素晴らしい音楽集になってると思うし、今回の1曲目“2LDK”と前々作『死ぬまで一生愛されてると思ってたよ』の1曲目“愛の標識”の構造が共通していることとかも含めて、あのメジャーファーストアルバムと通ずる部分が多いと思ったんだよね。何よりもそれを感じたのは、音楽に対する純粋な想いがそのままソングライティングに繋がってるということが、全曲から伝わってくるっていうことで。もう1回、ちゃんと自分の楽曲だけで勝負したいっていう想いというか――。

「でも、そうするしかなかったっていう部分もありますね。バンドメンバーに対しても、一連の移籍騒動があった時に、同じように傷ついてる人が4人しかいなかったし――本当の意味では事務所の人もそうですけど――そこでもう『音楽しかやることがないんだ』と思って。だから………たとえば前作は、『アルバムを作ろう』と思って作ってたんですよ。シングルをメジャーで3枚出して土台ができて、そこからどう組み立てるか考えていくのが嬉しかったんです。だけど今回は、1曲1曲作っていくしかなかったし、1曲で勝てなかったらもうダメだったんですよ。何故なら今回はアルバムを出せるところまで行くかわからなかったし、とりあえず1曲でもリリースできるならそれで引っくり返すしかないっていう状態でしたから……。だから、ツアーに出る直前まで、ほとんどの時間は曲を作ってたんです」

■ホールツアーの前? そういえばライヴのリハーサルでメンバー3人に置いてかれたって言ってたもんね。

「そうですね(笑)。でも、だから8月の頭までには10曲ぐらいはもう完成してて……それがある程度揃った時に結構やりたい放題やってた曲が多かったから、『どうまとめようか』っていうのはあったんですけど。それで、ツアーが終わってから曲をまた作って、レコーディングをしたんです」

■前作ってたぶん、「純粋にいい曲だけを作って、それを遮二無二入れていこう」っていう発想から意図的な脱却をして、「どこまで上手にロックでポップな音楽をやれるか」っていう挑戦をしたアルバムだったと思うんだよね。で、話してもらった通り、今回の作品は、衝動と音楽に対する気持ちにフィルターがほとんどない、以前のような遮二無二な姿勢で作ったアルバムなんじゃないかなと思うんだけど。それはこの1年間の一連のことが大きかったの?

「どうなんですかね………でも、確かにそれによる変化はあったかもしれないです。もちろん、大きな出来事はそれ以外にもあったけど……あとは、単純に調子がよかったっていうのはありますね。曲を作るのにまったく苦労しなかったから、曲を作るっていうことが楽しくて。1曲もボツになってないし、全部作ったままレコーディングしたし」

■それは『吹き零れる程のI、哀、愛』をやってた頃とは何かが違うの?

「うーん、何が違うかっていうのはわからないけど……苦労しなかったかな。歌詞が出てこない時はあったけど、前作の息詰まる感じはなかったですね。まぁ慣れたっていうだけなのかもしれないですけどね、『書けない』っていうことに対して。結局ギリギリではできるから。………でも楽しかったなぁ、音楽というものを作ってて」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA12月号 Vol.92』