Posted on 2014.12.16 by MUSICA編集部

年間総括特集:
レーベル移籍とベスト盤騒動、
その1年を経て誕生した傑作アルバム……
尾崎世界観(クリープハイプ)、
2014年総括インタヴュー!

ずっと先のことを考えて、どんどん削れていって、
つまらなくなっていくのが嫌だった。
そもそもずっとバイトしながら誰にも聴いてもらえずにやってきた音楽が、
これだけいろんな人に聴いてもらって、
状況としても気持ちとしても変わったし。
……常に何かに追いかけられてるような気持ちでした

『MUSICA 1月号 Vol.93』P.78より掲載

 

「3年目ですね、今年も楽しみにしてましたよ」

■メジャーデビューからの3年連続で年末振り返りやってます。勝負の3年目。どうだったですか?

「実感として2014年は、(勢いが)どこかで止まるっていうか、なんとなくでできたものが止まる瞬間があるんだなっていうのを凄く感じた年で。最初のほうは、移籍してベストがあってとか、武道館でやったりとかして名前が出たんですけど、あとはしっかり指標を作っていこうと思って、『クリープハイプってなんだろう?』って作品を出していけばいくほど――ピッチャーで例えると、一巡見られたみたいな。最初は抑えてたけど、2巡目から打たれたりするじゃないですか」

■で、打たれたピッチャーは意味がわからずに呆然とするという。

「そうですね(笑)。だから、『見られてるな、バレてるな』って凄く思うんですよ。凄いやりづらかったけど……そこで新しいことを考えたりするのは嫌だったし、そのまんまいつも通りやってることをやるしかないって思ったっていう。しっかり音楽に向き合って――バンドの状態も上がってきたし、表現力も出てきたから、やりたいことができるようになったし。そういうことは凄くできてるんだけど、凄い不気味さを感じながらやってましたね」

■尾崎自身は、自分らの音楽が王道だと思ってるのか、もしくは異端だと思ってるのか、どっちなんですか?

「異端だとは思ってるし、異端だと思われてると思うんですけど、さっき言ったように異端なまま慣れられちゃうというと、凄く難しいですよね。意識的に作った“社会の窓”とか、ライヴで目立つ“HE IS MINE”だったりとか、そういうところを見られたらやっぱり異端だと思うし。去年も“ラブホテル”っていう曲で勝負したし。本当に興味ない人、バンド聴かない人からしたら、今でも『なんだこれ?』って思われると思うんですけど、ある程度聴いてる人からすると、『あぁ、これね』って見切られてるのはどうなんだろうなって思いますよね。普通にもなれないっていうか、後戻りができないっていうか」

■対談でも話し合ってるんだけど、コンプを思いっ切りかけて凄く音を圧縮させて、音像の厚みを増すと共に隙間を一切なくしていって、そこでお客さんに共有してもらうためになるべくミニマムなリズム構成と、サビのところではみんなが連呼できる瞬発力のあるキーワードを使って歌っていくっていうロックがあるよね。ああいう音楽が今の主流だとしたら、自分らの音楽は、そことは凄くかけ離れてる感触を持つの?

「そうですね。でも、それもやってたし、いまだにサビで連呼するとかはやってるし。やってるけど、そこではないと思うんですよね、居場所は。音に関しては、一番新しいアルバムは今までよりもよくなったと思うし。ちゃんと音と音をバラけさせられてるし。そういう意味では、俺が嫌だなって思ってた波の中にいたっていうのが、今年凄くわかったし。でも……もっとやれるのになって思って。もっと評価されたいって思いますね。ちゃんとやってるから。去年よりも一昨年よりもさらによくなってるし、より言いたいことが言えて、やりたいことがやれてる時に………野球の例えばかりであれだけど、むちゃくちゃ肩が整ってきてめっちゃいい球が投げられるのに、どうしても球が真ん中に集まってるから打たれるみたいな」

■(笑)。

「矛盾してますよね(笑)。余計打ちやすい球になっちゃうっていうか。こっちは完璧な球なんですよ。精度も上がって、いいものなんだけど……『なんだよ、クソ』って思いますね。でも、それがやりたいから。そこに投げたいし、その球がいいと思って投げてるから。でも、相手にとっては打ち返しやすいものなのかなって思いますね。だからと言ってそれをやめるわけにいかないし。そういうズレはいまだにあるんだろうと思ってるし。音楽を聴く人と、こっちがやってることがズレてるっていうか、それを楽しんでもらえる期間もあるんだなっていうのも予想した通りだったし………鹿野さんでしたっけ? 前にフェスでのクリープハイプの立ち位置を言ってくれたのって。『フェスではみんな盛り上がりたくて、一体感を求めてやってきてるのに、それじゃないもので敢えて成立させてる』って言われたのは凄く嬉しくて。今はフェス出るためにワンマンをやるバンドが多い感じがして。それは絶対嫌だったから、今年の夏は(フェスに)出なかったし。やっぱり、ワンマンやるためにフェスに出ると思うんですよね。フェスのデカいステージに出るために自分達のフィールドをデカくするのは違うと思うから」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA1月号 Vol.93』