Posted on 2015.01.16 by MUSICA編集部

サカナクション、草刈愛美の妊娠と
今秋までのライヴ活動休止――
山口一郎が2015年のバンドの動向と
新たな勝負の1年への想いを語る

不確かな未来へ舵を切った人達の結果が
ちゃんと残せるような未来の音楽シーンに
2015年がなり得るかっていうのは、これからわかることだし。
自分達がその一端を担えたらいいと思う

『MUSICA 2月号 Vol.94』P.54より掲載

 

■2014年の年明けも紅白で一緒に過ごし、『グッドバイ/ユリイカ』の取材をし――。

「はははははは、そっか。去年もそうでしたもんね。今年もこれが仕事始めですか? わざわざすいません、嬉しいです」

■そして2015年も紅白に続き、NHKの新年の特番「NEXT WORLD 私たちの未来」での主題歌の生演奏における取材になりました。まず、今日の生ライヴはどうでした?

「お話いただいたのは夏ぐらいで。実際に今日を迎えるまで、(オープニング用に“グッドバイ”の)リミックス作ったりとかいろんな準備がありましたけど……関わってる人達が、去年パリコレに出品したアンリアレイジの森永(邦彦)さんとか、今や世界のPerfumeの演出をやっている真鍋(大度)さんとか――」

■そして、国営放送のゴールデンの特番という。

「そう(笑)。規模みたいなのは体感しないとわかんなかったところもあったし、実際に今日その日を迎えて……なんか凄い経験したなって思いました。紅白と比較するものじゃないけど、紅白よりも誰も経験できないような、そして二度と同じことができないような凄いいい経験をNHKにさせてもらいました」

■“グッドバイ”っていう曲をリリースから1年おいて再生させるっていうチャンスでもあったよね。そういう気持ちってどれぐらいあって、どういう気持ちで今回やれたと思いますか?

「“グッドバイ”はシングル作った時点でタイアップついてなかったし、ずっとノンタイアップのままアルバムを迎えるだろうなと思ってて。アルバムのタイミングで“グッドバイ”をどういうふうに昇華するかっていうのを模索してましたし、今後どういうふうにあの曲が育っていくかっていうのは次のアルバムのツアーの時にわかるだろうなって思ってたけど……。でも、プロデューサーの寺園(慎一)さんが、<不確かな未来へ舵を切る>っていうキーワードを『NEXT WORLD』、2045年はどうなってるのか?っていうテーマに重ね合わせて、ぴったりな曲だって言ってくださって。実は最初は書き下ろしでお願いしたいっていう話だったんですよね。でも、そこが凄いはまるからこれで行きましょうって言ってくれて。……自分にとってあの曲は大切な曲だし、こういった形で2015年のスタートに“グッドバイ”を歌えるっていうのは凄い嬉しかったですね」

■2013年にタイアップ用に作っていた曲があって(“さよならはエモーション”の原曲)、でも“グッドバイ”のほうが、紅白に出た後の自分の作品としてシングルで切りたかったっていう想いの強い曲だったじゃない? その曲にこういう形でいろんなカルチャーが寄ってきてくれたってことは、かなり格別な気持ちなんじゃないかと思うんだけど。

「格別な気持ちというか、やっぱり自分が当時歌ったあの時の歌を違った解釈で、ああいうような真面目な未来に対しての番組で使っていただけるっていうのはそれだけで感謝だし、純粋に作曲者として嬉しいなって気持ちがあります。あと、サカナクション自体にとっても大事な曲だから、メンバーにとっても凄くいい経験だったかなって思いますけどね」

■というのは?

「ほら、“グッドバイ”を生み出すまでに右往左往したし、あれは2014年の始まりの曲だから――鹿野さんはそう言うな、それだけの結論に済ますなって言ってたけど、紅白出た後であんまり思ったような結果がこの曲で出なかったから。………バラードだったしね。そういった曲だったのがこういうふうに見直されるっていうのは、メンバーにとってもいいことだったんじゃないかと思うし、改めて自分達があの曲を愛する感覚みたいなものを取り戻せた気がしますけどね」

■<不確かな未来へ舵を切る>っていう言葉を私小説として生み出した人として、1年間経ってそれが時代のメッセージになる感触っていうのは、どういうもんですか?

「どちらかと言うと2014年って、不確かな未来へ舵を切ってる人達が損する時代だった気がしてて。わかり切ったものというか、みんなから求められてるものがはっきり、つまり確かなものになってたから。そのはっきりしてるものに気づけてた人もたくさんいたと思うんですよ。それを作ってきた人達が勝ってきたと思うし。そういう時代が2014年にあって、2015年も同じことが繰り返されるのか、求められるものに気づきやすいことなのか、わかりやすいものなのか、そこがこれからはっきりしていくとは思うけど、“グッドバイ”っていう曲のあのメッセージ、あの歌詞が担っている層みたいなのがあると思うんですよ。あの言葉が引き受けてる部分っていうかね。そういったところがまた注目されるっていうか、不確かな未来へ舵を切った人達の結果がちゃんと残せるような未来の音楽シーンっていうものに2015年がなり得るかっていうのは、これからわかることだし。自分達がその一端を担えたらっていうか、ひとつのアクセルになれたらいいなと思いました」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA2月号 Vol.94』