Posted on 2015.01.16 by MUSICA編集部

凛として時雨、バンド史上初のベスト盤とニューシングルで
新たなシーズンの幕開けを高らかに告げる

自分には向き合うべき確固たる音が見えていて、
ずっとそれに向かって突っ走ってきた。
それに対してちゃんとふたりがついてきてくれることが、
本当に奇跡だなって感じました。
自分は音楽を信じていて、ふたりは僕を信じている。
そういう中でバンドを続けてきた軌跡を改めて凄く感じましたね

『MUSICA 2月号 Vol.94』P.62より掲載

 

■初回生産限定豪華盤を今、見せてもらってたんだけど――。

「はい。すぐ理解できないですよね(笑)」

■この中に音楽が入ってるとは思えないというか、下手したら大辞林とか広辞苑が入ってるんじゃないかぐらいのヴォリュームで(笑)。中を見ても、ヒストリー写真集もとてもぶっちゃけているし、今回のベスト盤、かなり楽しんで作りましたよね?

「はははははは。基本的には、今までのヒストリーみたいな感じで自分の手元にとってあったものなんですけど。いつか出せるタイミングがあるのかな?みたいな……結成当初からいろんなものを自分で持っていて。こんな思い切ったものを出せるとは全然予想してなかったんです。いわゆる曲だけをセレクトして作るベスト盤になるのかな?って最初は思ってたんですよね。でも、自分達にとって今出せるベスト盤って何なんだろうっていろいろ考えていくと、自然とこういう形になっていって。(スタッフなどの)周りが大変だったと思います(笑)。『これはできるのか? じゃあ、あれはできるのか?』とかいろいろ言いながら作ったんで」

■完全にそういうアイテムだよね。製本してからじゃないと印刷できない部分があるんでしょ? こういうのって、本当に面倒なんだよ、周りが(笑)。

「そうですよね、でもフェードアウトされることなく(笑)」

■スタッフに恵まれてよかったよね。

「そうなんです(笑)」

■そういう拘り切った、まさにベスト・オブ・ベスト盤なんですが。そもそもベストを出すに至ったきっかけっていうのは――おそらく10周年っていうところが大きかったと思うんですけど、どういう想いがあったんですか?

「最初は10年っていうタイミングが来たからっていう思いつきではなかったんですよね。たぶん2013年の武道館とかは割とひとつのポイントではあったと思うんですけど、そういう中でちょっと前からベスト盤の話はあって。でも、凛として時雨っていうバンドの性質とベスト盤っていうものがくっつこうにもくっつかないというか……自分の中でそぐわないイメージがあったんです。ミュージシャンとして、やっぱりどうしてもベスト盤に対してネガティヴなイメージがついてしまうというか」

■一般論としてベスト盤は消化試合のようなものがあるからね。

「自分達の意志がそこに組み込まれていないような気もしちゃいますし、それでなんとなく敬遠してたところはあるんですよね。ただ、武道館が終わって、それぞれのソロがあった中で、もう一度ベスト盤ってどうなんだろう?って考えた時に、CDっていうフォーマットがいつなくなるかわからないっていうのもあったし、今だったら面白い形で出せるんじゃないかっていう向き合い方ができたんですよね。凛として時雨のひとつのアルバムとして、ベストっていう選択ができるなって」

■それは、バンドで5枚アルバムを出して、それぞれがソロや他のバンドワークをできるアーティストになってきているっていうことも含めて一周した感じがあったの? もしくは、今の気分がそういうものだったの?

「あんまり一過性の気分っていう感じではなくて。自分達のいろんな表情に触れる中で、凛として時雨っていうものが少しだけ形を帯びて見えたというか……今までは中に入り過ぎていて見えていなかった部分とかもあるし、その中でまた時雨が動き出すタイミングに、一度今までの自分達を1枚の形にしてみるのもいいんじゃないかって思えたんですよね。今出会った人達とかこれから出会う人達にとって、今までの歴史が1枚で掴み取れるようなアイテムを作ることによって、また凛として時雨の新しい扉を開けることができるんじゃないかって思って。そういうオープンな気持ちだったり、前に向かう気持ちだったんです。タイミングとして10周年っていうのはもちろんあったと思いますけど、それ以上に届けたいっていう想いだったり、よりポップでありたいっていう想いだったりがあって。だったら新しい人達にも今までの自分達を一度曝け出して、舞台を真っ白に塗り替えてから新しいスタートを切ってもいいのかなって思って」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA2月号 Vol.94』