Posted on 2015.01.17 by MUSICA編集部

BOOM BOOM SATELLITES、
病と闘いながらも一切の妥協を許さず
魂からけずり出した渾身のアルバムと制作の日々……
川島道行・中野雅之へのソロインタヴュー×2で迫る

interview with 川島道行――
武道館の後、このバンドが作る音楽で歌いたいなって強く思ったんですよ。
あと2年だって言われた時も、
ここで歌って死んでいくんだと思った

『MUSICA 2月号 Vol.94』P.138より掲載

 

■とんでもなく素晴らしいアルバムができましたね。このアルバムはBOOM BOOM SATELLITESが完全体として立っているような作品であり、ひとつのBBSの完成形と言ってもいいだけの作品であり、そして個人的には1リスナーとしても今後自分の人生を支えてくれるアルバムに出会えたなと思える作品です。まず、川島さんの手応えを聞かせてください。

「僕らはいろんな時代背景を受けながら、その時々でアルバムというアートフォームを使って音楽を表現してきてるわけですけど。それを今回もまた更新できたと思うし、音楽の在り様が人の人生にとってどのように存在できるのかっていうことのひとつの力強い提示をしている作品になったなと思っていて。僕自身にとっても自信作です」

■前作『EMBRACE』が誕生した時に、これまでのBBSが培ってきた様々な音楽要素を全部昇華した上で、もっと大きな、より普遍的な響きと深みを持った音楽を作り上げたことに驚いたし感動したんですけど。でも、今回のアルバムは、またそこからの飛躍幅がもの凄くて。音楽的には前作から何か大きな変化があったわけではなく、延長線上にあると思うんですけど、ここまで更新することができたのは何故だと思いますか。

「他のアルバムと違うのは、表層的な部分での変化ではなくてもっと内面的なもの、人間の根底の部分から湧き出ているものがより強く楽曲に反映されているってことだと思うんですよ。客観的に聴いた時に――自分が作ったものが自分に大きな力を与えてくれることがあるんだけど、それが今回は凄く深いところまで訴えかけてきているなと思って。たとえば、昨今の音楽シーンでEDMが流行っていたりするけれど、でもそれにしたって、これまでのミュージックシーンの流れから言えば今のムーヴメントって小さなものだと思うんですよ」

■ミュージックシーンの流れを掌握したり、決定的な何かを象徴したりするような規模のものではないという。

「そう。ニューウェイヴ・リヴァイヴァルと言っても有象無象にバンドが出てくるような感じでもないし。そんな中でも、僕らは凄くドッシリと構えて、自分達の音楽を表現することができているということを、今回の制作の途中で実感できた部分があって。そういう音楽を作れた理由は、僕の病気とか、バンドがここまで続いてきた歴史とか、すべてが深く絡み合ってるんだと思うんですけど。今までこういうスタンスで活動してきたからこそ、根源的な命のエネルギーに満ち溢れた音楽が鳴らせたんだと思う」

■川島さんが途中で実感したっていうのは、いつ頃だったんですか?

「6~7月あたりだったと思います。凄く芯がしっかりしている楽曲とか、バンドの姿勢が貫かれているデモが揃っていたので、その時点でこれは大丈夫だと思った。僕らはふたりでやっているので、毎日その日のスタジオワークが終わると中野に『今作ってるの、大丈夫かな?』って何度も訊かれるんですよ。きっと、その『大丈夫かな?』っていうのは、世の中で聴かれて喜ばれているものと、自分が今やってることの間に関連性があるのかどうかってことだと思うんだけど。でも僕としては、今回の作品はそういう次元じゃないところに来ているなって思っていたので、ずっと『絶対大丈夫だから』って言い続けて。……僕はある種、当時はこのアルバムが最後かなって思ってたし、中野もそう思いながらやっていた時期が長かったから、その『絶対大丈夫だから』っていう言葉は、自分の中で重く考えた上での言葉だったんだけど。でも、そこまで考えた上でも、本当に大丈夫だとその頃から思えてたんです。……印象に残ってるのが、BAYCAMPで朝方ライヴをしたんだけど、もの凄い嵐だったんだけどお客さんは残っていて、その中で夜が明けていったんですよ。で、お客さんの後ろが海で、そこをタンカーが通るのが見えて。こっちでは爆音鳴らしてお客さんがワーッて言ってるのに、その後ろをタンカーがスーッと静かに走っていって……その様子を見ながら、僕らのバンドの姿勢はいつでもこうだったんじゃないのかなって思って。自分達の周りで何が流行っていようが、どんな嵐が起ころうが、僕らは僕らの音楽をやり続けてきて、その上で今9枚目を作ってるんだっていう感覚が湧き上がってきた。それを最後までやり遂げることができて凄くよかったなと思っています」

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text by 有泉智子

『MUSICA2月号 Vol.94』