Posted on 2015.02.16 by MUSICA編集部

BIGMAMA、初の表紙巻頭 総力大特集!
――ARTICLE 1
金井政人が明かす新作『The Vanishing Bride』と
自らのライフストーリー

ようやくこの1~2年の中で、バンドのメンバーを信頼して、
自分を信頼して、ライヴに来てくれる人を
信頼できるようになったんです。
今一番大切なのは、姿形のあるものより、もっと内面的なもので

『MUSICA 3月号 Vol.95』P.14より掲載

 

■ようやく、こうやって顔(=表紙)として一緒に特集を作り上げることになりました。

「はい、ここまでかかったし、これまでも表紙にして欲しいと強く思ったこともあるし、でも必ずこうやってやれると思ってたし、それが今であることはよかったと思ってます」

■BIGMAMAというバンドサウンドをより強固なものに、しかもこれまでよりも強固なイメージのポップなサウンドを作る、という命題と向かいあった作品になったなと思うんですが。まず訊きたいのは、金井が今回、何を目指してこのアルバムを作ったかということ。

「今までの歴史とか、バンドの歩んできた道は、勝手に自分に染みついてるだろうから、ここではすべてをゼロにするということ。ゼロになるというのは、ピュアを突き詰めるということで、それ-が一番大切でした。それは『メンバー5人で、ちゃんと心からいいと思える音楽を作れてる?』というところを突き詰めるということと、もうひとつ大切なのが、『ちゃんと自分達にしかできないことやれてる? 他の誰かの真似じゃなくて、世の中の、日本だけじゃなく世界中のアーティストに対して、これがBIGMAMAです!って胸を張ってできる?』みたいなこと。僕がバンドに原石を放り投げて、それをみんなでカッティングして宝石に変えていって。それが家に帰って、他の宝石と違って輝いているか?みたいなことに対してピュアでいられるか、ゼロになれるか。今までの自分達のスキル、肉体はもうここに宿ってるから、今話したこと対して没頭する、夢中になる、夢の中にいる感覚っていうのを凄く大切にしました」

■金井は、2010年にロックとクラシックをマッシュUPさせて作ったアルバム『Roclassick』以降、肝になる曲ができると、なんらかの形で急に携帯とイヤフォンを持って、うちの編集部とか僕のところに聴かせに来るんだけど。そういう時って、たいていはどんなリアクションがあるのか、緊張しながら反応を伺ってる感じだったよね。でも今回はサクッと「まぁ聴いてみますか」みたいに堂々と曲を持ってきて。その違いは結構、大きかったんだよね。

「ははははは、そうかもね。今はね、BIGMAMAっていうバンドがすげぇいいバンドだなって思えてるから。2015年のベストディスクを5枚選びなさいって言われたら、僕はたぶんこの『The Vanishing Bride』を5枚選ぶんですね。で、5まわしの解説をするんですよ(笑)。ありとあらゆる、これまで出ている何万枚っていうCDの中で一番カッコいいものを作ろう、一番自分が好きだと思えるもの、素敵だと思えるものを作ろうと思って作って。本当にできあがるその瞬間までそう思うことができたっていうのは、自分の中で初めてです」

■『The Vanishing Bride』というタイトル、これは何を思って、何がきっかけなんですか?

「……“Paper-craft”(2008年3rdアルバム『Dowsing For The Future』の1曲目)という曲で僕は、初めて日本語の歌詞を書いたんですね。その日本語の歌詞で最初に書いた1行って、凄く自分のパーソナルな部分を表してるなって、ある時ふと考えたことがあって。<僕は酷く薄っぺらなんだ>って言葉で始めてるんですよ、自分の日本語歌詞の始まりを(笑)。それって、自分の中で凄く大切なワードとしてずーっと残っていて。改めてこのタイミングで、いざ何を書こう?ってなった時に、その1枚の紙切れのような薄っぺらい中にあるすべてっていうのがざっくりとしたイメージとしてあって。今思うと、その1枚の紙切れの表面が希望で、裏側が絶望だったんですよ。それがその時々によって、薄っぺらい自分がペラってめくれたりとか、なんなら裏返しになってる時もあったりして。で、その当時の自分が希望と絶望が、どっから見てもよくわからないカオスな状態というか、くしゃくしゃっとなって、机の上にポンッと置いてあるみたいな感じになっていったんです。で、ひとつの部屋の中に紙くずがひとつあるっていう状況が漠然とイメージとしてあって。希望と絶望が1枚の紙だとして、それがぐしゃぐしゃとなっている状況をひとつ表現したいなっていう欲求が単純にあったの」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.95』