Posted on 2015.03.18 by MUSICA編集部

くるり、革命的金字塔『THE PIER』総括と
新曲をいち早く試聴して見えたくるりのこれから

僕がポップソングを聴いて「いいな」と思う時って、
それまでで考えたらあり得ないはずやったものが輝いて見えて、
決まりを作り変えてる時なんですよ

『MUSICA 4月号 Vol.96』P.46より掲載

 

3月18日に、アルバム『THE PIER』のツアーにおける中野サンプラザ公演の模様を収めたライヴ映像『THE PIER LIVE』と、一発録りという条件下で演奏する模様を収めたNHK-BSプレミアムの番組(昨年7月にOA)をパッケージ化した『THE RECORDING at NHK101st』という、ふたつの映像作品をリリースするくるり。『THE PIER』という季節の集大成だったツアーファイナルから約3ヵ月が経ち、今のくるりは次のアクションに向けた準備期間のような時を過ごしているわけだが、この映像作品を機にくるりにとっての『THE PIER』という季節を振り返り、かつ、『THE PIER』以降の今のくるりを探るべく、彼らの秘密基地のようなプライヴェートスタジオ「ペンタトニック」を訪れた―――。

 

■『THE PIER』のツアーが終わり、2013年5月から全国全県を回ったサーキットツアー「DISCOVERY Q」も1月の沖縄で完結し、今はどんなふうに過ごしてるんですか?

岸田繁(Vo&G)「今は特に何もやってない、今年の開幕に向けてのキャンプ情報をチェックしてるような生活でございます(笑)」

■(笑)と言いつつ、日々このペンタトニックスタジオに入ってると聞いてますけど。4月に開催する『さよならストレンジャー』&『図鑑』再現ライヴに向けたリハですか?

岸田「そのつもりやったんやけど、結局新曲を作ったりしちゃってますね」

■おおっ!

岸田「まぁでも割とゆるゆるとやっております」

■その話も訊きたいんですが、まずは今回リリースされる映像作品について。『THE PIER LIVE』は中野サンプラザでのライヴを収録したものですが、前半ほぼ曲順通りに『THE PIER』を演奏したこと含め、あのアルバムをライヴにおいて再現するということをコンセプチュアルにやったツアーだったと思うんです。みなさんにとってあのツアーはどういうものだったと思いますか?

岸田「これまでの僕らって、綿密に作り込んだ作品をライヴでどれぐらい再現するのか、あるいは全然違うタイプのアプローチで曲の魅力を伝えるのかってことで言うと、後者のやり方が多かったんですよね。音数の多いものだったりとか音を録った環境が特殊だったりする場合は、曲の根幹のところと向き合ってリアレンジするっていうのが多かったんですけど、今回は盤石の態勢を作ってアルバムをある程度再現しながら、そこに自由な要素を足していくやり方をして」

佐藤征史(B)「一緒にサポートしてくれはったメンバーのみなさんは、まさに『THE PIER』をやるっていう目的でお呼びしたんですよね。この音数の多いアルバムを再現しようと思ってもなかなか難しいんですけど、それを生楽器で――もちろん同期も流してるんですけど――ちゃんとできたライヴだったんじゃないかなと、自分も映像を観て思いました。思ってるよりライヴ感があったっていう。あんだけの人数でステージでやったから割とレコーディングっぽいものになってるかなって思ってたんですけど、映像観たらそんなこともなく、ちゃんとライヴになってるなって思って」

岸田「俺もそれは思った」

■ファンちゃんはどうでした?

ファンファン(Tr&Key)「あのツアーは結構曲数も多かったので、ライヴの間ずっと集中力が必要で……会場に来る時からもうずっと気を張ってて。リハの間のごはん食べる時間とかも心がギュッとなる感じやったんですけど。でもサポートメンバーの人達も含め、みんなが同じくらい大きな存在感で支えてくれて。自分個人の演奏としては、みんなのおかげでできたライヴだなって思います。そういう気持ちが改めて芽生えたツアーでした」

■アルバムを再現するライヴにしようと思ったのはどうしてだったんですか?

岸田「ひとつは『DISCOVERY Q』が割と小さいハコでラフな形でやってたから、逆にきっちりプロデュースした形でやろうっていうのもあったんやけど。でもやっぱり、『THE PIER』っていうアルバム自体にはとても満足してるんですけど、それをもっと聴いて欲しいっていう単純な動機もありますね。『THE PIER』のテーマに向き合うには、ディテールの面白さに気づいてもらうことが一番やと思うんで。ライヴをそこへの導線にしたいっていう意識はありましたね。最近、ライヴ会場で結構CDが売れるんですよ。それは何故かというと、アルバムを買って聴いてライヴに来るっていうよりは、単純にライヴにポンッと遊びに行くっていう感覚の人が多いからで。昔の自分らってアルバム出してツアーやっても、全然そのアルバムの曲やらへんかったりしたんですけど(笑)、今はライヴからアルバムを伝えるってこともやっていかなあかんのかなって気分にはなってますね。『DISCOVERY Q』で地方都市に行った時に思ったんやけど、やっぱり最近は街でCD買えないんですよね。お店がないし、あっても僕らのような音楽は置いてなかったりするし。大人はamazonで買ったりするけど、子供はなかなか買えない。そうなると、やっぱり定期的にライヴで地方回ってCDを直に売っていかなきゃあかんような気がするっていう……そこは結構痛感したところで」

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text by 有泉智子

『MUSICA4月号 Vol.96』