Posted on 2015.04.16 by MUSICA編集部

ゲスの極み乙女。、満を持しての新章突入!
快進撃を続けるバンドの次なる照準を川谷絵音に問う

『魅力がすごいよ』はセールス的には好調だったのかもしれないけど、
自分は全然ダメだったと思っていて……
このバンドがもっと大きくなっていくためには、方向性をグイッと変えて、
何をやりたいのか明確に示さないといけないと思ったんです

『MUSICA 5月号 Vol.97』P.62より掲載

 

■ゲスの極み乙女。のリリースは半年ぶりなんだね。

「そうですね、半年も経っちゃいましたね」

■僕の中で絵音くんは、2ヵ月タームの人で。少なくとも4ヵ月以上はリリースに間を置かない人っていうイメージなんですよね。

「なるほど、間違ってないですね(笑)。僕個人で言ったら2ヵ月ごとにリリースはしているんですよ。10月にゲスの極み乙女。でアルバム出して、12月にindigo la Endのシングル出して、2月にindigo la Endでアルバム出して……本当はこのシングルも2月くらいには出したかったんですよ。でも物理的に時間がかかっちゃって、このタイミングになりました」

■そのシングル、ゲスの極み乙女。としてはかなり攻めているシングルだと思ったんです。今回の曲はまとまりがいいじゃないですか。必ずしもゲスは今、こういう曲がリスナーやマーケットから求められているわけではないと思うんですよ。そういう意味では意図的に盛り上がるものというより、音楽性に寄っていったシングルだと思ったんですけど。

「さっき鹿野さんが言っていた通り、10月にアルバムを出してシングルのリリースが4月ってことで、少し間が空く印象も持たれるのかなとは思ってたんです。『魅力がすごいよ』はセールス的には好調だったのかもしれないんですけど、自分の中では全然駄目だったなって思っていて。このバンドがもっと大きくなっていくためには、この先もアルバムの方向性をそのままやっていくのは違うなっていうのはありましたね。だからここからグイっと変えたいと思ったし、自分達が何をやりたいのかっていうのを明確に示したいなって思ったんです」

■それは、具体的にどういうことだったの?

「歌詞に関しては、“私以外私じゃないの”は凄くメッセージ性が強いんですけど、今回に関してはゲスがどうこうっていうよりは、自分以外は自分じゃないし、自分じゃないとできないっていう僕個人としての所信表明的なシングルにしたいなと思ってました。音楽的には、その時にやりたいことを詰め込んでいったっていう感じで」

■おっしゃる通り、この曲の歌詞は自分へのメッセージソングとして受け取れるし、自己葛藤や忙殺されて頭の中がカオスになっている今の自分へのSOSが歌われてますよね。

「そうですね、正直、体力的に限界がきていて。……バンドをふたつやっていくことの難しさをようやく今、感じてきたんですよね。今までは、どちらかのペースが落ちた時にどちらかのペースを上げていくっていうやり方でやってきたんですけど、今はどっちのバンドもフルにアクセルを踏んでいるので、両方アクセルを踏むとこうなってしまうんだなっていうのが自分の中でわかったんです。今まで以上にindigoとゲスを比べられることも増えたし――『どっちのほうがいい』っていうのは僕としてはどうでもいいんですけど、でも『差別化をしないといけない』と考えた時に生まれる新しい葛藤もずっとあって。その答えは出てないんですけど、今回のシングルに関してはその光が少しは見えてきた作品なのかなっていうのはありますね。ゲスでやりたいのはこういうことなんだな、ってなんとなくわかったというか」

■絵音くんにとって、ゲス優位の状態から、両方のバンドがちゃんとしたスタンダードになったわけだよね。そうなったことによって味わった感覚はどういうものだったの?

「嬉しい悲鳴なのかもしれないですけど、単純に難しいですね。曲はいくらでも書けるけど、俺以外の6人のメンバーに対してどういうバランスをとればいいんだろうって……バランス感覚がちょっと悪くなってきているというか、どっちかが動いている時はそっちに集中しないといけないし、でもその間に片方のレコーディングがあったり、ライヴがあったり……今まではなんとかやってきたんですけど。そこをなんとかしないといけないなって思います。嬉しい悲鳴もありつつ、シリアスな悩みが増えたなって」

■両方のバンドで結果を出したから、どちらかが表で、どちらかが裏って感じではなくなってきたってことだと思うんです。そうなった時に自分の中で活動やパフォーマンスを差別化することが難しくなってきたのか。もしくは、両方とも成功しているバンドとして現状を維持していくっていうプレッシャーにやられてしまっているのか。どういう感じなの?

「プレッシャーもあるんですけど、どちらかっていうと前者のほうが大きいのかなって思いますね。まぁ、今年終わってみて俺がどうなっているのかによるのかな?って思うんですけど。……お互いの差別化を考え込んでも、もう決まっているスケジュールが年内ずっとあるので、まずはそれに向かっていかないと壊れてしまいそうだなっていう感じですね」

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA5月号 Vol.97』