Posted on 2015.04.16 by MUSICA編集部

THE ORAL CIGARETTES、
屈指のラヴソング“エイミー”で
ファンとの絆とバンドの大きな未来を紡ぐ

完全に腹を括ったんです、
自分っていう人間にもオーラルっていうバンドに対しても。
勢いだけで突っ走るんじゃなくて、しっかりお客さんのことを見て、
自分達のこともしっかり見て、
自分がどういうものを提示できるのか考えてるんです

『MUSICA 5月号 Vol.97』P.76より掲載

 

■拓也が初めて書いたラヴソングであり、バンドにとってもインディーズ時代から節目節目で歌ってきた“エイミー”を、新しいアレンジでアップデートさせたオーラルのセカンドシングルになりますが。2枚目のシングルっていうよりは、『The BKW Show!!』の次のシーズンのスタートを切るシングルっていう位置づけのほうが正しいのかなと思っていて。

「あぁ、そうですね。去年の11月に『The BKW Show!!』を出してからは、いい意味でも悪い意味でも進めたなっていう感じが凄くあって。たぶんお客さんからしたら、新鮮味っていう面では少し薄れたんかなって」

■新鮮味っていうのは、バンド自体のニューカマー感が薄れたっていうこと?

「うん。『起死回生STORY』の時に、そういうニューカマー感を凄く感じたんですけど、そっからフェスにも出ていって、『The BKW Show!!』を出すまでは自分達でも目に見えてお客さんが増えていくのを感じてた4ヵ月やったなって思うんですよね。全然心配ないなって思うと同時に、凄く先のことを考えるようになってきた時期が7月から11月までの4ヵ月であって」

■要するに、バンドとして凄く勢いもあったし、どんどん攻めていって勝っていける自信も状況もあった、と。特に、夏のフェスとかイベントとかは手応えがあっただろうし。

「そうです。で、『じゃあ、実際に自分達はどういう音楽をやるのか?』っていうことを考えて、11月に『The BKW Show!!』を出して。表側と裏側の二面性みたいなものをテーマに、この二面性をどうやって上手く伝えたらいいんやろうか?って思いながら作ったんですけど、実際出してみたら、『起死回生STORY』を出した時に比べてニューカマー感が少し薄れたなって感じたんですよね。それはたぶん、僕らが出した楽曲を深く知ってもらえたんじゃないかなってことなんですけど。いい意味でも悪い意味でも『こういう曲もやれる、こういう曲もやれる』っていうのがみんなにわかってもらえたから、離れていったお客さんもいると思うし、もっとついていこうって思ってくれたお客さんもいたアルバムやったなって思って。だから、11月から4月になるまでの今の期間は、それが正しいのか正しくないのかっていうところを考える時間に使ってるんですけど――」

■『The BKW Show!!』の頃を振り返っておくと、あのアルバムは敢えてそういう勝負をした作品でしたよね? “起死回生STORY”から入ってきてくれるお客さんは増えた。ただ、自分達はそういうアッパーでダンサブルなロックだけをやっているわけじゃなくて、もっと湿っぽいミディアムナンバーもやるし、人間の暗部を暴くようなシリアスなナンバーもやる、と。“起死回生STORY”の延長上でウケるものを狙って作るんじゃなくて、ちゃんと自分達の音楽のコアを曝け出した上でバンドを評価してもらおうっていうことに挑戦していったアルバムで。

「そうですね。だから、芯は凄く太くなった気がするんですよ。アルバムでもっとお客さんが求めるほうに寄り添ったアルバムにしてたら今の現状はもっと違ったかもしれへんけど、自分達は意外と勢いみたいなものを感じてなくて、着実に一歩ずつやれてるなっていう感覚というか。やっぱり俺らは一歩ずつ一歩ずつしっかり地面に足つけて、長い目でバンドをやってかなきゃいけないなって実感したんですよね。そこは『起死回生~』を出してからの感覚とは真逆だったというか」

■敢えてはっきりと訊くけど、それは『The BKW Show!!』で自分達が意図していたものとはお客さんの受け止められ方がちょっと違っていたっていうことなの?

「というよりは、いい意味でも悪い意味でも、自分達に期待し過ぎていたし、そういう期待をお客さんにもし過ぎてたのかもしれないって思ってて……言い方が上手く伝わるかどうか難しいんですけど、“起死回生STORY”は自分達の中でもいまだにデカい曲だし、お客さんがあの曲に凄く反応してくれて、フェスにもいっぱい出させてもらって、それがいい流れだったのは間違いないんです。で、そこから先で自分達がやりたいことをしっかり伝えていくためには、もっと自分達の芯を太くしなけりゃ伝わんないなって思った。だから『The BKW Show!!』を出したんです。そこで僕達のことをしっかり知ってくれてる人には『すげぇ、オーラルってこんなこともできるんだ!』って、しっかり僕達の意図が伝わったと思うんですけど、まだまだ『もしかしたらオーラル好きかも』っていうぐらいの人がたくさんいて。そういう人達に対して伝えるには、もっと自分達が頑張らなきゃいけないっていうのもアルバム出してからわかったんですよね。もっともっと自分達の芯――自分達の何がいいのか?とか、自分達のどこを見て『オーラルが好きや』って思ってもらえるのか?とか、もっと自分達について知らないといけないなと思って。じゃないと、応援してくれるお客さんとか『ちょっと気になる』って思ってくれてるお客さんにも失礼やなって。だから、そこはひとつ、山中拓也っていうのがどういう人間なのか?とか、オーラルっていうバンドがどういうバンドなのか?っていうことを見つめ直すきっかけになっていったんですけど」

■じゃあ、そこで見つめ直した結果、自分達のストロングポイントやお客さんが求めている自分達がどういうものなんだって判断して、その上でこのシングルをどういうものにしようと思って今回は作っていったんですか?

「いや、実際に“エイミー”を出すって決めてからも、そこに関しては深く考え続けてるんですよね。なんなら“エイミー”を出すって決めた時には、まだ全然答えが見つかってなかった状態でして。でも、ひとつだけわかってたのは、僕達はお客さんに対しての誠意は絶対にしっかり見せないといけないバンドなんだっていうこと。1回オーラルっていうフィールドに興味を持ってくれたお客さんは、絶対に離したくないっていうか、そういうファンへの感謝の気持ちや誠意を絶対に示していかなきゃいけないなっていうのは確実にわかっていて。だから、4月25日のなんばHatchの上京1周年記念ワンマンもそうやし、しっかり感謝っていうものを見せたかった。そこに向けて出すべきシングルっていうのは何なのか?っていうのを凄く考えて、“エイミー”を出そうと思ったんですよね。流れや相手に合わせただけのセカンドシングルにはしたくなかったから、感謝っていうものをテーマにしたシングルにしようって」

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text by 寺田宏幸

『MUSICA5月号 Vol.97』