Posted on 2015.05.18 by MUSICA編集部

VIVA LA ROCK 2015大特集――
最大の感謝と愛でおくる
ロックの熱狂と感動に溢れた3日間完全総括!

ロックと埼玉にこだわり、新しいステージに執着し、
日本のロックとはっきり向き合う覚悟で臨んだ
2年目の春の祝祭ビバラまでの奔走記
(TEXT by 鹿野 淳/VIVA LA ROCKプロデューサー)

『MUSICA 6月号 Vol.98』より掲載

 

 初回である去年の開催が終わった後に思ったのは、本当にラッキーなフェスであることだった。

 誰もが日々感じている「これだけいろいろやったり、いろいろ考えているのに、何で伝わらないんだろう」という葛藤。これが去年のVIVA LA ROCKではほとんどなかったからだ。

 ロックへのこだわりは参加者のライヴの楽しみ方が何よりも体現してくれていたし、埼玉の音楽シーンを活性化しようという想いは、会場内を歩いているとここかしこで「埼玉にこんなフェスができて嬉しいし感謝してます」という言葉に溢れ出ていたし、新しい音楽を見つけて欲しいという気持ちはニューカマーが中心となっているCAVEステージの数々の入場規制で証明されていたし、家族連れでも楽しんでもらいたいという思いと、さいたまスーパーアリーナ近隣の方々と触れ合える音楽フェスにしたいという気持ちの表れである屋外スペースVIVA LA GARDENは本当に好評で、このフェスの顔にさえなった。

 何しろやろうと思ったことがほとんどそのままダイレクトに伝わった初年度の開催だった。だからこそ反省点や改善点も明確だった。箇条書きにすると――。

・VIVA! STAGEとCAVE STAGEの観れる人数のギャップが多過ぎること(マックス11000人と1700人)。

・館内導線がわかり難いこと。

・オトミセなどの高層階のインフラが閑散としている時が多かったこと。

・クロークの対応力が乏しかったこと。

 2015年に向けては、まず、ここをどう修正するのかから始まった。

 一番悩んだのはステージ入場人数のギャップだった。端的に言えば、CAVE STAGEが小さいことの問題だ。ここに関しては、「フェスの中にあるライヴハウス」みたいで楽しいと言ってくれる人が大半だったが、中には出演した後で不満を漏らす方もいて、相当悩んだ。しかしこのスペースは、新しい可能性、つまりニューカマーをどんどん登用するフェスの役割の中でなくてはならないものだったし、そのまま活かすことにし、もうひとつ新しいステージをどこかに5000人規模で作れないものか?というテーマで知恵を絞り続けた。

 実際に館内をグルグル歩いて探した。このフェスはさいたまスーパーアリーナをほとんどデッドゾーンなしで使用するものなので、もうどこにもスペースはないと思いながら、実はある場所に目星をつけ、検証した。

 それは「地下駐車場」だった。

 一般駐車場をビバラで借り切り、そこにステージを組めば、まさに巨大な「GARAGE STAGE」ができ上がると踏んだのである。

 実際にそれだけのスペースは駐車場の中にあった。あったにはあったが、これがなかなか歪なスペースで。横幅10メートル、縦幅80メートル以上みたいな、割と狭い道路をそのままステージスペースにして縦長にみんな連なって壁に囲まれながらライヴを観るという、奇妙な空間になるスペースだった。音の反響も相当のものだった。

 考えるまでもなく「それじゃライヴが盛り上がらない」わけだが、僕らはもう切実にスペースを探していたので、それでも盛り上がるんじゃないか? ヴィジョンを入れるか?だのと試行錯誤したが、頭を冷やして却下した。

 そんな中。最後の最後に検討したのが今年新設した「TSUBASA STAGE」だった。

 メイン入り口の前にドーンとステージを作る。入り口の横ではなくすぐ手前に。つまり入り口が入り口ではなくなる――これは本当に規格外というか、やってはいけないフェスデザインだ。2万人以上の入場を見込んだフェスが(実際に今回は3日間のうち、2日間は22000人以上の方々が入場された)入り口を封鎖しかねない形でステージエリアを作る。踊る大走査線とレインボウブリッジからお叱りをすぐさま受けそうなこの案を、僕らは実行した。理由はただひとつ。4000人ほどの人がライヴを観られる最後のスペースがここだったからである――。

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA5月号 Vol.98』