Posted on 2015.05.20 by MUSICA編集部

KEYTALK、大舞台を見据えて視野を広げた
必然の野心作、『HOT!』完成!

世の中にヤバい音楽っていろいろあるじゃないですか。
聴いた時に「なんかヤバい」って思うもの。
その「ヤバい」っていうところだけに注目して
そのヤバさをパンクとかロックで
アウトプットするのがカッコいいなって思ったんです

『MUSICA 6月号 Vol.98』P.86より掲載

 

■1曲目の“YURAMEKI SUMMER”からいきなりこの夏のアンセムになっていきそうなアゲアゲのサマーチューンで始まって、アルバムを通して勢いもあるし、「俺もこのバンドに入りたい!」って思わせられるようなノリとグルーヴ感のある、凄く振り切れたアルバムが完成したなと思うんですけど。

小野武正(G)「そうですね。3枚目のアルバムで、KEYTALKがメジャーに行ってから2枚目っていうことで、『OVERTONE』の時は新たなお客さんに向けて『KEYTALKってこんなバンドなんだよ』って再提示できるような大まかなコンセプトだったんです。今までのインディでの活動を経た総集編っていうか。そんな中、フェスにたくさん出させてもらったり僕ら主導のイベントもどんどんキャパが上がっていく中で、今まで以上にたくさんのお客さんを目の当たりにする場所で演奏することが増えて。だから、今後、数千人規模の大きい会場でも一人ひとりに届くような曲を作りたいっていうコンセプトから、今回のアルバムの制作が始まって」

首藤義勝(Vo&B)「そうだね。広い会場でっていうスケールの大きいものっていうのは一番意識したところで」

■つい先日、日本武道館ワンマンも発表されましたけど、そうやって大っきいハコでやることをイメージしながら作っていったってこと?

小野「まぁ、大きいハコっていうか、たくさんの人に届けられるもの――っていうことは、必然的にリリースした際により多くの人に届きやすいっていうことに繋がると思うんですけど。だから、今までずっと大事にしてきたメロディを今回も大事にしつつ、四つ打ちだったりビート感っていうのも義勝とか巨匠の曲だと今までよりちょっと落ちてきたりとか……具体的な曲で挙げていくと、“MONSTER DANCE”とか“YURAMEKI SUMMER”みたいな、いわゆるパンチがあるKEYTALKの武器がひとつと、もうひとつ“エンドロール”とか“バイバイアイミスユー”みたいに完全に歌で聴かせるっていうKEYTALKのもう一面の武器を今まで以上に強化したアルバムっていうのがあるかな」

寺中友将(Vo&G)「歌詞もね、今までのように曲のメロディに合った言葉だったり、耳触りのいいスピード感が生まれる言葉とか、そういう選び方ではなく、今までにやってこなかったストーリー性を作ってみたり、ちょっと特定の人に絞って考えた曲だったり、今回は歌詞で曲を押していくっていうことにチャレンジしてみて。そうやって大きいステージや椅子のあるようなホールでのライヴで特に力を発揮できるんじゃないかって思える曲も入れ込むことができたなって思います」

■アゲるところはアゲて、聴かせるところは聴かせるっていうね。

八木優樹(Dr)「そうですね。そういう意味では振り切れてるアルバム。めっちゃ歌モノだったり、すげぇ変な曲の時はみんな変な感じになって」

小野「うん。今までもやってきたところではあるんですけど、よりその精度を上げられたっていう感じですね」

八木「ビートに関しても大きいノリを出すっていうか。今までの曲って点が凄く近くて、体力使って聴かないと聴けない曲が多かったと思うんですよ」

■点が近いっていうのは、要するに手数が多いってことだよね。

八木「そういうことですね。情報量が多いっていうか。でも今回は、歌がメインに聴こえて、なおかつ大きなノリで聴こえるような曲とかも上手くできたんじゃないかと思いますね。今までのKEYTALKのよさも残しつつ、大きなノリに挑戦できたんじゃないかなと思います」

首藤「スケール感って、ビート感だったり音の作り方だったりいろいろあるんですけど、そこは曲によりけりで。あんまり激しい曲と歌モノの曲みたいな線引きは作ってる時はしてなかったんですけど。ただ、大きなテーマとしてスケール感を大きくするっていうのを凄く意識して、結果的にどっちにも振り切れたって感じですね。個人的に気にしたのはサウンドで、今回は打ち込みの音がいっぱい入ってるんですけど。特に音で作れる広がりみたいなのを意識して、ギターだけだと賄えない部分に積極的に打ち込みを入れてみたりしたんですけど」

■今おっしゃったように打ち込み的な音が非常に多く入ってきて、そのカラフルさも含めて派手さがあったり、終盤のメロウな曲達についてはドラマティックになっていて。

首藤「そうですね。打ち込みを入れないカッコよさもあれば、打ち込みを入れるカッコよさもあると思ってて。僕は、曲が引き立つならそこには入れようっていう考え方で。純粋に奥行きを出したいから入れた部分もあれば、“YURAMEKI SUMMER”とかは歌詞が最後の最後にできて、夏の歌詞ができたから急遽夏っぽいフレーズを打ち込みで入れてみたりして。そういうのってあんまり今までやってこなかったところなんで、新しいかもしれないですね」

■ただ、打ち込みとか同期音みたいなものって、バンドによってはライヴで再現したいからあんまりやりたくないって人達もいたりして。もちろんスタジオはスタジオ、ライヴはライヴっていう考え方で「曲がよくなるんだったらそれでいい」みたいな人達もいるんだけど。KEYTALKとしては、割とそういう部分の躊躇いもなく、打ち込みも全然やっちゃおうぜ!って感じでやれた感じだったんですか?

首藤「うーん……実は、そこに関しては正直そんなにすんなりはいってないですね」

■それは――。

小野「俺が割と反対で。俺がバンドサウンドだけの音楽のほうが凄い好きなんで、結構話し合って。1個前の『FLAVOR FLAVOR』のカップリングで3曲目に入ってた“Stand By Me”っていう巨匠の曲もオルガンから始まってるんですけど、その辺もライヴでどうするか?っていう話があって。僕は凄く同期モノに反対派だったんですけど、でも作詞作曲してるふたりの世界観を尊重するっていうのが一番だと思うんで、そこを大事にしていきたいなっていう」

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text by 寺田宏幸

『MUSICA5月号 Vol.98』