Posted on 2015.06.16 by MUSICA編集部

BRAHMAN、結成20周年にして
不惑と変革の中で辿り着いた無二のバンド道

言ってみれば「なんとなく」っていう、
全然面白くない言葉に全部表れてるんだと思う。
実体がないけどみんなが持ってる確信――
たとえば「じゃあ明日ね」っていうなんとなくの約束や希望があって、
「明日会える」って思うから続けていられるんだよ

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.70より掲載

 

■だいぶご無沙汰です。今年20周年っていうこと、そのタイミングでシングルが出ること、そのシングルの曲が『ブラフマン』っていう映画の主題歌になること。いろんなことを情報としては伺ってるけど。まず、シングルの『其限~sorekiri~』(それきり)は、『ブラフマン』っていう映画が先にあってのものだったのか、20周年っていうことがあっての流れになっているのか、どんな感じだったんですか?

TOSHI-LOW(Vo)「そもそも、この映画がいつ決まったものなのか、俺らがよくわかってないんだよね(笑)。ただ、実際にいろいろ始まったのは今年からだと思う。で、映画を撮ります、映画には主題歌が必要です、では主題歌を作ります、っていう流れでこの『其限~sorekiri~』を作って」

■じゃあ映画に関しては、送り手っていうより受け手に近い気分なんだ?

TOSHI-LOW「だって作るのは自分達じゃないからさ。そこに介入してもしょうがないじゃん。あとは、今までにスペシャとかでもBRAHMANのドキュメントはやってるわけだから。だから、何も介入せず空気のように箭内(道彦:監督)がそこにいるっていうのが何日も続くっていうだけ」

■自分達で「節目だから」って言って始めた映画かもしれないと思ってた。

TOSHI-LOW「まあ、節目じゃなかったらやってないとは思うけどね。ただ、自分達で『映画化してください!』っていうのは別にないじゃん?」

■じゃあ『其限~sorekiri~』は、映画の主題歌だっていうのは別にして、そろそろ新しい曲を届けたいっていう気持ちがどれくらいあってのシングルなの?

TOSHI-LOW「新しい曲を届けたいって常に思ってはいるけど、そんなに曲を作らない、作れないので。今回の主題歌みたいに『課題』があって作ることは少ないバンドだしね。少しずつ作って、アルバムになりそうだと思ったら大掛かりに作っていくっていうのをいつも4、5年かけてやってるからさ。こういう宿題みたいなものをもらってやるってことに対しては、『やるしかないよね』って、いつもとは違う感じだったと思う」

■じゃあ『超克』からいつもと同じような4、5年を過ごして行く過程で曲を作っていて、その上で20周年っていうエポックメイクなタイミングがあったからこうして形になったっていう感じだったの?

RONZI(Dr)「曲は……まあ、曲のパーツとかフレーズとかはちょこちょこ作ってるっていうくらいだったのかな?」

TOSHI-LOW「こういうのやりたいな、っていう話をして、そこでみんなのアイディアとかフレーズが出て、『やっぱりまとまんない』つって、それで1年くらい放ったらかしになってたりとか。そういうのはあったかな」

■でも、まとめたいじゃん。

TOSHI-LOW「そりゃそうさ。でもまとまらない時もあるじゃん(笑)。誰かがデモを作ってそれをコピーするバンドじゃないから。だから二転三転するし、最初に『こういうの』って言ってた部分がいつの間にかなくなっていても、最終的によければいいって感じだから、時間はかかるよね」

■そっか。今回の『其限~sorekiri~』を聴いても、『超克』の中の数曲を聴いても思ったんですけど、この3、4年、歌が凄く強くなってるんですよ。

TOSHI-LOW「でも、それもパートの1個だからね。その使命は果たしたいなとは思ってるし、それくらいなんだけど――」

■たとえば、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDを始めた頃に、TOSHI-LOWと「歌うことの意味」っていう話をさせてもらったこともあるんだけど。ただ、それだけじゃなくて、歌うこと・言葉を発することに対して以前と違う部分って今あるの? それは、震災があったっていうことを抜きにして。

TOSHI-LOW「うん、震災を抜きにしても歌とは向き合わざるを得なかったからね、個人的にも。それは自分の音楽人生として、そろそろやるのか、やらねえのかって決めなければいけない時だったから。それがあった上で、ちゃんと歌と向き合える自分に気持ちが向いたので今があるよ。だから、ヴォーカルっていうパートとしては『まだ伸びんじゃねぇかな』っていう部分を自分でも感じているんだけど」

■そういうヴォーカリストの心境の変化は、BRAHMANのメンバー全体にも何か変化をもたらしたんですか?

KOHKI(G)「変化……。僕、曲はそんなに変わらないと思うんですけど、歌う人が変わったのなら、それは変化してるんじゃないですかね。まずメロディが変わるんでしょうけど。――っていうのも、僕は曲がグルーヴを持っているとは思ってないから」

■人がグルーヴを持っているっていうこと?

KOHKI「そうです。だから、変わったんでしょうね。やっぱり、TOSHI-LOWくんが前よりも歌を大事にしている印象は自分も受けるから。何よりもそれでバンドは変わったと思います」

TOSHI-LOW「まあ、やっぱりみんな頑張ってるしさ。たとえば、ふとスタジオに行ったらRONZIが何時間も叩いてるとかね。俺はそれを横目に見ながら挨拶もしないで帰るんだけど、そういうのはお互いに見てるし、今もお互いにそういう関係や努力はあると思ってるので」

■でも、そういうストイックさは、昔からBRAHMANっていうバンドは潜在的に持ってるものじゃない?

TOSHI-LOW「でもさ、きっと昔からBRAHMANとしてのパフォーマンスには突出したものがあったと思うんだけど、各個人が音楽家としてどうなのか?っていう部分には、それぞれそんなに触れてこなかったと思うんだよ。それが弱点だとも思ってなかったしさ。だけど近年、『自分のパート』としていろんなセッションやいろんな人に呼んでもらったりすることがそれぞれ増えて、みんなが自分のパートに対して詰めなくちゃいけなくなってきて。それもあって、バンドだけじゃなく、いちギタリスト、ドラマー、ベーシスト、ヴォーカリストっていう部分にも向かわなくちゃいけなくなったんだと思う。で、それがまた楽しさを生んでいくと思うし、実際、そうやって他のパートが深くなっていくのを見てると『楽しそうだな』って俺も思うんだよね。それに『こいつ上手くなったな』って思うと、こっちも頑張るじゃん? そこに差があるとバンドの中でガタガタになるし、『頑張ってる』っていう質に関しては、『お前が5時間やってんなら俺も5時間やるよ』みたいな(笑)、自然な張り合いが生まれ続けてるんだと思う」

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text by鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』