Posted on 2015.06.17 by MUSICA編集部

ゲスの極み乙女。、
明確なモードチェンジの裏側に潜む覚悟と展望とは

昔は後世に残る名曲を作りたいっていうのは特になかったんですよ。
でも今は、ミスチルの“Tomorrow never knows”みたいな曲を
このバンドで作りたいなって思います

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.94より掲載

 

■ついに政界にまで進出して、びっくりしました。

川谷絵音(Vo&G)「そこからですか(笑)。僕も突然でびっくりしました」

■初めて野音やったら、そのまま国会議事堂まで行けちゃうとは。

ちゃんMARI(Key)「あぁ、場所が近いから(笑)」

■悪法かどうかは置いておいて、なかなか凄いところで話題になりましたが。

川谷「ほんとどうなんですかね? でも“私以外私じゃないの”っていう言葉が時代を先取りしてたんだなっていうふうに思いましたけど。制度がどうのこうのというよりは、言葉の強さみたいなものを感じました(笑)」

ほな・いこか(Dr)「私も母から『とうとう政治にまで!』みたいなメールが来て。友達とかからも凄い来てたんですけど、歌ってるところのURL送りつけてくる人までたくさんいて。無視しましたけど(笑)」

■今回のシングルの3曲目で<気付いたら透明なガラスケースの中に俺はいて 表情がない政治家みたいな/政治家じゃない奴らに囲まれてたんだ>って歌ってますけど、見事に楽曲が政治家に囲まれましたね。

川谷「(笑)そうっすね、だから、これも先見の明というか」

■ははははははは。

川谷「でもそもそもは“ロマンスがありあまる”っていう曲を出すために“私以外私じゃないの”を作ったんで。そのための前段階って思ってたら、コカ・コーラのCMでいろんな人に広がって。自分が最初に思ってたよりはかなりの反響が……。やっぱり言葉がよかったんだろうなって思います」

■世の中の風みたいなものも今までと違うものを感じたりするんですか?

川谷「そうですね、『しゃべくり007』の影響もデカかったし、僕らのことをあんまり知らないライトな人達が増えたっていうか。ライヴも家族連れがほんとに増えたし、この前も岡山のホールでツアーファイナルやったんですけど、後ろのほうで親が子供を肩車してライヴ見せてるとか。どんどんマスな方向に来てますよね。もちろん、自分が目指してる方向ではあるんですけど。なんか急に変わったなって思います」

■課長も状況の変化に驚いてダイエットを始めっちゃったり?

課長(B)「いや、そこはあんまり(笑)。別に僕、痩せようが見てくれで勝負できないんで、体調管理的に痩せたほうがいいんじゃないかというメンバーからの思いやりです」

川谷「成人病とかね(笑)」

課長「そうそう(笑)。今回のツアーに関して真面目に話すと、音楽を聴いてくれてるお客さんが増えたなっていうのは凄い感じます。サビで盛り上がったり、その盛り上がり方もビートに身を任せてるっていうよりは、耳で聴いて楽しんでるっていう雰囲気があって、そこは凄くいいなと思います」

■そういう絶好調な状況で出る新曲なんですが、本当に勝負曲で。

川谷「そうですね。今回は映画のタイアップなんですけど、内容に沿わなかったら映画をぶち壊しちゃう可能性もあるし――」

■映画に合う音楽を作らないといけない。

川谷「そうですね。でも、映画の脚本読んでも映像で観ないとわからないなと思ってたんですけど、途中で“ロマンスがありあまる”って言葉が浮かんでからは、割とそのまま作っていって。“ロマンスがありあまる”という言葉自体は映画の本質的なテーマではないんですけど、単純に僕の中でキラーフレーズだったというか。で、僕の中で映画との世界観的なリンクがあったというか。この曲自体、映画というより結構自分のことだったりするんですよ。実はこれ、“私以外私じゃないの”よりもレコーディングしたのが早くて、去年の『魅力がすごいよ』ってアルバムが出た後に、これからどうすればいいんだろうって悩んでた時に作った曲でもあったんで。僕の中でどうにもならないなっていう感情の延長でもあって。『魅力がすごいよ』を作ったことによってまた生まれたフラストレーションみたいなものを歌詞に書こうかなって思ってたら、若者が悩んでる映画の世界観とリンクして。だから結局、映画のセリフとかは使ったりしてるんですけど、ほとんど自分の世界の歌っていう」

■そうですよね。ゲスの極み乙女。って、最初は凄く無機質であり、無表情な中から生まれてくる不思議さとかカオスさっていうものが音楽の中にあったし、それはどこかバンドの音楽性のコンセプトにもなってたんじゃないかなと思うんですよね。ただ、『魅力がすごいよ』を出した辺りから、どんどん表情とか感情が音楽の中にメロディアスに入ってきて、今回このサビ始まりの曲になってるなっていうふうに思うんですけど。その辺、プレイヤーとして自分の変化みたいなものは感じてるんですか?

いこか「単純にできることが増えてきたっていうところはあるんですけど。最初は別人だったというか。ほな・いこかをやり始めた頃は、どこか演奏してても別人だったところがあって。それが『魅力がすごいよ』からはありのままでできてる感じは、ほんのりあります」

ちゃんMARI「私はあんまり無機的だっていうのは思ってなかったんですけど。歌詞の感じがだんだん違ってきたのかなっていうのは思ってて。前は楽しいな、面白いなっていう感情で。そういうのだけでやってたのが、『魅力がすごいよ』を録り始めた時から歌詞の中身に自然と入るようになってて。演奏も自然とそっちに寄せられていったっていうか。最近はやってる時にちょっと感極まってしまうこともあります」

川谷「だからみんなはそんな変わってないかもしれないですけど、でも俺はひたすらに変わっていってるんですよね。で、さらに自分がどんどん変わっていくのかなって思います」

(続きは本誌をチェック!

text by 鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』