Posted on 2015.06.17 by MUSICA編集部

LAMP IN TERREN、
より強固になったバンドの絆と人生観の結晶

俺のバンドが俺の音楽より凄くなってきたんです。
今までは「俺が作りました」の一点張りで完結していたけど、
今回はバンドで作ったって言えるし、そう言いたいんです

『MUSICA 7月号 Vol.99』P.100より掲載

 

■アルバム楽しませてもらった。頑張ったね、バンドとして。

全員「ありがとうございます!」

■今作を作る上で心構えとか、大きく変わったんですか?

川口大喜(Dr)「変わりましたね。歌を本当の意味で出せるようになってきたかなと思います。それぞれの楽器が歌に寄り添うようなアレンジや、サウンドに仕上げることが、初めてできたと」

■今までは、寄り添いたくなかったリズムが響いてたよね(笑)。なのに今回、そういう気持ちになれたのは何故なんだろう?

川口「(苦笑)。寄り添おうっていう気持ちはあったんですけど、結果的に違うところに行ってしまっていたんですよね。元々、歌っていうのは音楽の中でも重要なものだと思っているので、それを真剣に考えることが今作ではできたのかなって思います。あと、前以上に歌詞に共感することが多くなって、自分達の曲を聴く回数が多くなったんです」

松本大(Vo&G)「最近、車でずっと流れてるもんね」

川口「寝る時も聴いてて『普通にいいな、このバンド』って思います(笑)。自分の音楽聴くなんて今までは信じられなかったのに。だからここからがスタートラインなのかなって」

中原健仁(B)「僕はバンドや、ヴォーカルに対して、どうベースを弾いてアプローチをするのかにずっと迷っていて……曲を盛り上げるベースラインっていろんな方法があると思うんですけど、それが今作の中でわかった気がしてます。大の歌詞だったり、曲が変わってきたのもあるし、同じリズム隊の大喜の影響もあって、自分はどう変えてみようっていうのを考えていたのが大きいですね」

松本「僕はこのアルバムで自己紹介をしておきたいと思っていたことは全部終わったと思ってるんで、凄く思い入れはあります。一番納得のいく人生観を歌えたし、そういう曲作りができたかなって思ってます。3曲目の“Grieveman”って曲は19歳の頃からずっとあった曲なんです。この曲ができる前に1曲目の“メイ”のテーマは決まっていたんですけど、曲を書くことが全然進まなくて……“メイ”には歌いたい核はあるんだけど、まわりを固めるものが何もない状態で進んでいて……今回のアルバムで絶対にこの曲を書きたいんだ!って思っていて」

■今22歳だよね?ってことは3年越しの曲なんだね。

松本「そうなんです(笑)。当時は東京出てきて、友達もそんなにいないし、何をしに東京に出てきたのかわからなくなったりもして……でも、ここまで生きてこられているのも、いろんな人に出会えたからだし、こういう考え方ができているのも、歌が歌えるようになったのも、全部自分が通ってきた道があるからだと思っていて。それは自分の証明として形にしておきたかったんです。かつ、もうひとつテーマがあるとしたら、1対1を意識しました。今までの曲は自分から自分へ発信していたので、内向きだったと思うんですけど、今回は人に届けることを前提に曲を書いたっていうのは大きな進歩だったと思ってます」

■歌詞の話は後半で訊かせてもらうので、まずはもう少し音楽的なところを掘り下げたいんですけど。今回のアルバムで曲のヴァラエティ感が広がりました。もっと言うと、このアルバムの中には3曲くらい「ポップス」と呼んでもいい曲がある。これはひとつ大きな変化だと思うんですね。自分の楽曲の幅を広げたいとか、そういうことを考えた?

松本「それはありましたね。挑戦って意味合いもあって、いろんな色を見せたいなとは思ってました。あと、これまで曲を書く時は、こうじゃなきゃダメっていう固定概念が自分の中にあったんですけど、そういう境界線みたいなものがなくなったのは大きかったと思います」

■今までの固定概念っていうのは、3ピースでできるギターロックとか、孤独が似合う音楽であるとか、そういうことだよね?

松本「今までは何も考えなかったんですよね。『俺はこういう曲しかやりたくねぇんだ!』みたいな感じで。でも、今回は自分に制限をかけたくないっていうのが大きくて、もっと自由になりたいし、いろんなことを表現したいなって思ったんです。楽しい曲なのに悲しく聴こえるとか、晴れ渡った空なのに虚しく見えるとか。そういうことを音で表現してみたいなって思って。そういうところから始まったんですよね」

■そういう楽曲の変化や進化は感じたりした?

川口「感じましたね。今回叩きやすくなったんですよ。俺と松本は今までいろいろあったけど、必死にコミュニケーションを取ってきて、お互いのことを知っていって。そしたら楽曲も変わってきて、気がついたら叩きやすくなっていったんです。たとえば2年前とかだったら、この曲はこういうふうに叩いたら松本は嫌がるだろうなっていう模索があったんですけど、そういうのが今はなくなって、自分がこうだと思って叩いてみたら松本から『OK!』って言われて。『あ、この感覚は間違ってなかったんだな』って。それで作品を聴いてみると、いよいよ俺しか叩けない楽曲達になってきたなって」

■今、言っていた「いろいろあった」っていうのは、今までお互い勝手にやってきて、それがバンドという音楽として奇跡を呼ぶ場合もあったけど、そこには距離感があったし、それを感じてきたってことだよね。そういう距離感がなくなってきたら、こうも音楽って変わるし、変われるんだね。

川口「漢字でも『聴く』って『心』が入っているじゃないですか? やっぱり、心と音楽って何か通じるものがあるのかなって思います」

松本「僕の場合、昔は自分の音楽にふたりにつき合ってもらっているって感覚が大きかったんですよ。でも“緑閃光”を書いた時くらいからそれが徐々になくなって。今回のアルバムはメンバーに何も言わなかったし、レコーディングをしていく中で、自分が思っていた以上に曲が成長していくので、それは嬉しかったですね。僕の場合デモは、割と完成された状態で渡すことが多いんですけど、余裕でそれを飛び越えてきてくれたんで、『あ、俺が見たかったのはこれだ!』って感覚はありましたね。だから3人で1枚のアルバムを作ったんだって感じが凄くしますね」

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text by 鹿野 淳

『MUSICA7月号 Vol.99』