Posted on 2015.07.15 by MUSICA編集部

サカナクション、いよいよ本格再始動!
混沌を抜け次なる航海へと乗り出した山口一郎、
その新しき世界と未来を一気に独白

シーンに影響を与える存在としてもう一回、俺は日本一になりたい。
リスナーにもメディアにも
やっぱりこのバンドが大事だって思われるような存在に。
今のシーンでそういうチャレンジできる人って、少ないと思うんですよ

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.12より掲載

 

Chapter1「NF(ナイトフィッシング)」という、実はサカナクション史上最大にして新たな構想と、その第一歩

 

「今日はMUSICAの100号記念だし、僕らのことだけじゃなくて、いろいろ話せたらいいなと思って、楽しみに来たんですよ」

■ありがとう。100号って、それなりに考えるわけですよ。別にてめえの雑誌の100号を祝ってもらったってしょうがないし、そういうもんでもないし。でも考えるわけ。で、苦楽を共にしたバンド、アーティストが、この雑誌には何組かいて。いろいろな苦楽は共にしてきたんだけど、苦しみをここまで共にしてきたバンドはひとつしかいないなと思って。

「はははははははははは」

■それがサカナクションで(笑)。100号だから今までを振り返るっていうよりは、これから100号続けるために音楽シーンがどう続くのか、よりよく続けるためにはどうしたらいいか?ってことのほうがよっぽど大きなテーマだなと思って。そこに向けての話をしたいなと思うんだけど。

「100号って凄いですね。最近凄い思うのは、たとえば今回僕らリリースするじゃないですか。NFというイベントもそうだけど、こういうことをやるっていうプレスリリースを出すじゃないですか。内容を考えていろいろニュース出しして、いろんなウェブ媒体が情報をバーッと流してくれますよね。でも、最近、それが拡散してないんですよ」

■え?

「そのニュースしてくれた媒体をリツイートする人はいるけど、内容は拡散してないんですよ。みんなあんまり読まないんですよね」

■それは見出しだけで終わってるってこと?

「そう」

■つまりは「サカナクションが新譜をリリースして、そのまま復活していくんだな、わかった。じゃあ次は何?」みたいな。

「そう、リンクを押さないんですよ。だから中に書いてあることの質問とかがTwitter上に来たりするんですよね。で、一番拡散する方法って個人のメディアなんですよ。僕が持ってるTwitterやインスタとか、Facebookとかで内容を説明するほうがみんな見るんですよ。かつ、僕がそのリンクを貼るほうがその内容を見るんですよ。ウェブ媒体の強みって拡散力だったのに、拡散しないってなった時、次に問われるのって内容の重要性じゃないですか。紙媒体って、それこそ鹿野さんがMUSICAやり始めた頃ってそんなにまだ僕は音楽シーンのことを知らなかったけど、鹿野さんが100号やっていく中で結局メディアってウェブになっていったし、紙媒体っていうのはCDとかレコードとかと一緒で時代によって変化していくのかな?と思ったけど、紙媒体ってずっと残るんだろうなって思いました。内容を知りたい人がより濃く知るっていうことって、やっぱり物じゃないと駄目なんだなって。それを手に入れようとする力があるものじゃないと入ってこないんだろうなと思って。WEBは風で、雑誌や鹿野さんのような強い意見は森なんだなっていうか」

■今の話を聞いて思うのは、世の中の人がメディアと言われてるものから情報をどういうふうに求めるのかって、「個人」だと思う。ウェブがどうで紙がどうでより、個人。個人の情報というものを、彼らが必要としてる。何故ならば、それが自分という個人とサイズ感が合うし、共有しやすいからなんじゃないかと思うんだけど。

「ああ、それはそうですね。そうだと思います。やっぱり信頼関係ですよね。あと1個思ったのが、音楽の媒体って、音楽に対するメディアの中でしか拡散しない。たとえばファッションプレスとか、Fassionsnap.comとか、ファッション系のウェブ媒体のアカウントとかが音楽に対してまったく無関心なんですよ」

■それはなんで?

「音楽っていうものが孤立してるんだと思います。そこに何よりも限界を感じてて。前に鹿野さんとVIVA LA ROCKでクラブイベントやりたいって言ってて。ロックって凄いんですっていう体験からもっと違った体験を増やしていかないと、これからのシーンが閉鎖的になってしまうし、フェスを体験した後に、次に聴く音楽がなくなって、音楽を聴かなくなるっていう現象が今起き始めてて。それが凄く危ないんじゃないかって、鹿野さんとそういう話をして。ビバラの後に深夜帯からオールナイトでアフターパーティとしてやらせて欲しいって話して、結果的にいろんな問題があって実現しなかったんですけど。その時からずっと感じてたのは、音楽っていうものを好きな人達って、音楽が好きなんですよ。音楽っていろんなものに関わってていろんな要素があるのに、それに対するリテラシーとか、そういうところも含めてあんまりみんな関心持ってないんですよね。つまり他のカルチャーとの結びつきみたいなものが音楽というものの醍醐味だったはずが、それがなくなったせいで、音楽が好きな人にしか音楽の情報が届かなくなっちゃってるんですよ。音楽から何か他のものが得られなくなっちゃってるんですよね。このままだと音楽っていう文化が縮小していくか、このままアンダーグラウンドだったり、サブカルチャーよりももっとサブな、アナーキーなものとしてしか社会の中での位置を見つけられなくなるような気がして、なんか危ないなと思ったんですけど」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』