Posted on 2015.07.15 by MUSICA編集部

KANA-BOON、『TIME』以降の
確かな自信と新たな挑戦の始まり

人のせいにしたところで変わらない
ってことを知ってるからやと思います。
なんぼ悔しかろうがなんだろうが、
そもそも人は関係ない、自分の問題やと思ってるんで

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.32より掲載

 

■取材は武道館の時も『なんでもねだり』の時もしてるけど、こうやって鮪くんにサシでインタヴューするのは2月号の表紙巻頭の時、つまりライフストーリーを語ってもらって以来ですね。

「そっか、そうですね。よろしくお願いします」

■今回の“ダイバー”は、『BORUTO -NARUTO THE MOVIE-』の映画主題歌として書き下ろした楽曲ですけど。アニメのオープニングテーマに続いて映画ですよ。

「もう最高ですね。自分が好きな作品なんで、ほんまに嬉しいです」

■楽曲はどんな想いで書きましたか?

「映画に向けて作った曲なんで、ちゃんと作品に相応しいものを作りたいと思って作りましたね。そういう部分でも自分に課した課題はちゃんとクリアできたなと思ってます。いくつかタイアップを経験して上達したというか、今までよりも自然にやれるようになったなと思いますし。だから、曲としてはもちろん、シングルとしても凄く自信があります」

■KANA-BOONは本当に、ここぞという時にちゃんといい曲を書いてきますよね。今言ってた自分に課してたことってどういうものなんですか?

「まず、映画のエンディングに流れた時に『この曲すげぇ!』って思えるものっていうのが第1条件で。主題歌って、下手すると映画で芽生えた感情が曲によって台無しになってしまうこともあるわけじゃないですか」

■そうですね。エンドロール次第で余韻が全然違うよね。

「だからそこはちゃんと映画の感動を増強させられる曲を作らなあかんと思ったし、そういうものを作りたいと思って。で、それと同時に、映画を抜きにしてもKANA-BOONの新曲としてちゃんとベストなものになってるかというか、KANA-BOONの『今』にちゃんとフィットしているかっていうのはいろいろ考えて………そういう目線で作りました」

■言ってみれば、この前のシングルの“なんでもねだり”はアネッサというCMタイアップだからこそのあの楽曲だったし、『TIME』を作り上げてひとつ肩の荷が下りたKANA-BOONがより自由かつ無邪気に音楽で遊んだ曲だったわけで。だから『TIME』以降のKANA-BOONの新章という意味で言うと、実は今回の『ダイバー』というシングルが始まりの第一弾であるっていう、そういう重要なタイミングの曲ですよね。

「はい、気を引き締め直した感は強くあります。『TIME』で1回肩の荷が下りたところから、また新たに何かを背負い始めたなっていうリスタート的な感覚は自分でもありますね」

■同じ『NARUTO』のタイアップというところで“シルエット”と比較すると、“シルエット”が少年期から大人への転換点であり、そこから踏み出していく瞬間の気持ちを歌っていたのに対し、今回の“ダイバー”はその先の物語――いざ踏み出して走り始めたからこそ感じる苦悩や厳しさが歌われていて。疾走感のある楽曲なんだけど、より地に足がついたメッセージソングになったなと思ったんだけど。

「………『前に、前に』っていう感覚は強くありましたけど、でも“シルエット”の時よりも振り返る部分が具体的っていうか……この曲は、悔しさとかそういう部分を凄く感じる曲にしてるんですけど」

■そうですね。今までよりもそこが強く具体的に出てるよね。

「はい。今までは曲の中で悔しいっていう気持ちとか、寂しさみたいなものを歌うことはあんまりなかったんですよね。でも、今回の映画の主人公は幼い子供で、そういうものを抱いている子なんで、そこに自分が上手くシンクロできたというか。まぁ僕が振り返ったのはそんなに子供の頃じゃなくて、部活っていうものから離れて1バンドとしてやり始めた時のことなんですけど。あの時感じてたバンドが認めてもらわれへん悔しさとか、見つけてもらわれへん寂しさみたいなことを歌ってて。そういう自分の体験と映画の主人公を上手く重ね合わせられたなと思うんですけど」

■これ、2番の歌詞が凄くいいよね。<強がって強がって、こわいもの知らずだって/また笑ってごまかして、本音は言えないまま(中略)ダメだって立ち止まってしまう>っていう歌詞とか凄く胸に来る。

「あ、嬉しいです。僕もこの2番の歌詞は、今までで一番表に出してなかった部分を書けたかなと思います」

■本当にそうだよね。心の底にある想いをこういう形で書けたのは、やっぱり『TIME』っていうアルバムを作れたこと、特に“愛にまみれて”や“パレード”で自分自身の過去の想いを初めてちゃんと綴れたことが大きいんじゃないかと思ったんだけど。『NARUTO』の主題歌ではあるけど,鮪くん自身の歌っていうものが強く出てきてる印象があります。

「うん、そうですね。ただ、あの時は今ある幸せとか、今抱いている期待が先に先に出てきてたんですけど、そこで味わえるものはもう一旦お腹の中に入ったっていうか。だから、今はまた『TIME』の頃のモードとは違ってきてるんですけど」

■表紙の取材の時、鮪くんは初めて自分の生い立ちを話すということに踏み切ってくれたわけですけど。ああやってそれまでほぼ誰にも語ることのなかった自分の半生を話し、それを公表するということは、おそらく自分にとって凄く勇気が要ることだったと思うし、怖さもあったと思うんです。

「そうですね」

■それこそTwitterでも鮪くんのところに直接感想を送っている子もたくさんいたけど、きっとあのインタヴューに対していろんなリアクションをもらったと思うんです。そのリアクションも含めて、ああいう形で自分の半生を語ったことで、何か感じたことはあった?

「リアクションは、同じような環境の子達からのメッセージが多かったですね。Twitterだけじゃなく、手紙でも『聞いてください、実は私も……』っていう内容のものをもらうことが増えて。そういう人達に何かプラスになるものが与えられたっていうか、その人達の中に何かを芽生えさせてあげられたかなと思って、それは凄くよかったなと思うし……あと、何より自分自身が凄くスッキリしました。前に『TIME』でひとつ肩の荷が下りたって言ったのはバンドとしてのことですけど、あのインタヴューをやったことで、自分自身の肩の荷が下りたような気がしましたね」

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text by有泉智子

『MUSICA8月号 Vol.100』