Posted on 2015.07.17 by MUSICA編集部

flumpool、初の単独野外ライヴも控える今、
決意の発露たるサマーソング
『夏よ止めないで ~You’re Romantic~』完成

ただ共感されるだけじゃなく、みんなが気づいてるようで気づいてないこと、
知ってるようで知らないことを音楽にして提示することが、
今の時代に音楽をやってる人達の使命であり責任だと思うんですよね

『MUSICA 8月号 Vol.100』P.82より掲載

 

■前作(『FOUR ROOMS』)はバリバリアコースティックだったけど、今回はバリバリサマーで。

「ははははははは、間違ってないですね」

■ですよね。これはどういうことなの?

「でも、今回の作品にもアコースティックの部分は残ってるんですよ。2曲目の“キミがいたから”もそうだし、表題曲の“夏よ止めないで ~You’re Romantic~”も12弦のアコギとかが3本くらい入ってたり、パーカッションの部分だったり、意外とアコースティックな音像はあるんですよ。やっぱりアコースティックっていう部分はいいなと思ってるし、前回の『FOUR ROOMS』という作品では、そこにちゃんと軸足は置けた気がするんですよね」

■そうだね。

「でも、flumpoolはそれだけじゃないなっていうことも見せたくて。前作はミドルテンポやバラードみたい曲が多かったし――それは敢えてそういう形で作ったんですけど――そういう曲調も含めてアコースティック・サウンドをフルに使ったわけですけど、今回はその上で夏の歌を作ろうぜ!みたいな気持ちで作ったんです。前作のような穏やかな部分もflumpoolですけど、それとは違う青くささ――そもそも僕らは幼なじみだし、そういうちょっとした青春感みたいなものもやっぱり好きなんで。特にこの夏には野外ライヴ(8月8日&9日に彼らの地元である大阪・大泉緑地で行う初の単独野外ライヴ)もあるし、そういう側面を全開に出していくタイミングじゃないかなと思ったんです」

■この曲のダンサブルな感じと「夏感」っていうのは、たとえばこれまでの楽曲で言うと“夏Dive”とか“星に願いを”といった曲を思い出すんだけど、そういうファーストフルアルバムの頃、まだバンドがフレッシュだった時期に対する原点回帰感もあるのかなと思ったんですけど。

「ああ、そうですね。まあ、僕らももう歳も歳だやし、それなりに落ち着いてるところはあるんですよ(笑)。だた、それと同時に、やっぱり人間って歳を取れば取るほど勢いを出したくなるというか、残りのエンジン全部使ってやろうっていう気持ちとの間でずっと闘ってる気がしてて――」

■いや、「歳を取れば取るほど」って言うほど取ってないだろ。

「いやいや!(笑)」

■人の顔と年齢見て話しなさい。

「はははははは! やっぱり昔とは勢いの種類が違うというかね。たとえば10代の頃はもっと自分を信じるというか、過信することも大事だと思うし、そういう勢いがあったと思うんですけど。でも歳を取れば取るほど、過信してはいけないことが多くなるし、生き方としては10代の頃とは真逆になっていくと思うんですよね。あの頃と同じように生きたい自分もいるんですけど、でも、それだけじゃリアリティや説得力がない気がするし………最近はその葛藤みたいのが凄いあって。ただ、だからと言って下手に丸くなって渋い音楽を目指していきたいわけじゃないんです。なんかドキドキワクワクするようなことはやりたい――っていうのを、今回は『夏』の感じに重ねて出そうと思って。夏が始まるワクワク感みたいなものを出したかったというか。『この夏で何か変わってやろう!』とか『この夏に何かかましてやろう!』とか、夏ってそういう気持ちが掻き立てられる独特の空気があるじゃないですか。そういう感覚を音楽として出したいな、ぶつけたいなっていうところで、一生(阪井一生/G)と相談して、夏ソングを作ろうぜってことになりました」

■さっきも曲名を挙げたけど、デビューしたばかりの頃にもサマーソングは作ってるじゃない? そこから5年を経た今、サマーソングを作る上で自分が一番変わったのはどういう部分だと思いますか?

「……一歩引いてるところですかね。完全に一歩引いてる」

■引いてる?

「はい。これは歌詞の話ですけど、“夏よ止めないで ~You’re Romantic~”は最後、<Sunset dream>って言葉で締めてるんですよ。これ、前だったら<Summer dream>にしてたと思うんです。サンセットって終わっていく感じがあるけど、それでも夏の夕日って凄く美しいじゃないですか。なんか、あれが今の自分達な気がしたし、それに、今日本の中で生きててそういう何かひとつ終わっていっていることを感じることも多いというか。……今は美しい世界の中で生きてるけど、だけど『今こそ何か始めなきゃいけない』っていうような、焦りに近いものを感じるんですよね。何かを失う前にもう1回花火のように輝かなきゃいけないというか、それぐらい燃え尽きなきゃいけないっていう、そういう焦燥感を感じることが多くて。それが5年前とは違うのかなって感じます」

■それって自分達のこの5年の成長や進化から感じるというよりも、今の日本からそういうものを感じるっていうこと?

「感じますね。僕は日本の社会がどうなってるとか、政治がどうなってるとか、深くは知らないしわからないんですけど、でも少しずつ自分で勉強したりもしていて――」

■最悪な状況になりつつあることは感じるわけで。日本は平気で戦争できる国になりそうだし、世界的にも情勢は不安定になってきていて。あらゆる意味で、日本は今、揺れてる。

「そうですよね。だから実は、そういうヒリヒリした感じも含めて、それをどうやって音楽で表現していくかが今回の裏テーマとしてはあったんです。世の中を見わたした時に戦争や平和というものに対して考えること――今年の夏は戦後70年にあたりますけど、それはひとつ考えるきっかけだと思っていて。世代が代わって戦争を体験した人がいなくなっていく中で、自分達が新しい平和に対する解釈をどう作っていけばいいのか?っていう……それに対しては僕自身も考えることがあるし。で、そういうことを考えていった時に、今の自分達は昔の人達が作ってきた平和の上に生きているんだっていう事実と、バンドとしてもこれまでプロデューサーを始めいろんな人の意見を聞きながらここまでやってきたっていう事実は、なんだか共通するものがあるなと思って。それこそ僕ら自身、デビューの頃は朝日が昇るような高揚感があったのに対して、今は何かサンセットを見ているような気分になることもあるわけで……でも、それでもその中にある美しさっていうのが一番大切なんじゃないかなっていうのは思うんですよ。自分達自身で何かを発する瞬間こそが、人生の中で輝く瞬間なんじゃないかなっていう気持ちがやっぱりある。だったら、そういう気持ちを今回の曲で伝えていこうよって思ったんですよね」

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text by鹿野 淳

『MUSICA8月号 Vol.100』