Posted on 2015.08.17 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、
あの東京ドーム以来364日のワンマンライヴ、
インテックス大阪公演に完全密着!!

あの東京ドームから364日ぶりのワンマンライヴ!
久しぶりの選曲満載、久しぶりのあのオープニング、
久しぶりのライヴと向き合う4人の、新曲満載の攻めの姿勢。
こんなバンプと逢いたかった!と、最高の神対応に絶賛のスペシャルライヴ。
恒例の完全密着にて、本当にすべてをここに!!

『MUSICA 9月号 Vol.101』より掲載

 

 12時40分に着くと、10分前にメンバー全員が楽屋入りしていて、ちょうど食事をしていたところだった。外は灼熱、しかし早くから集まった人も多くグッズの列は果てしない。必然的に1年前の東京ドームの、灼熱夏休み感を思い出す。

 そうか、あれが去年の7月31日、今日が7月30日。あの日から364日ぶりに彼らはワンマンライヴを果たすのだ。

「そういうこと、考えるバンドだと思う?」とフジが笑う。「まあそういうこともあるかってことだよ」。

 楽屋の壁に貼ってあるセットリストを見る。詳しいことは後述するが、一目見て僕はシンプルに「久しぶりの曲と新曲が軸になってるな」、「攻めているセットだな」と思った。で、そのことを彼らに伝えようとしたのだが、どうやら言葉が少なかったらしく、単純に僕が脈絡もなく興奮しているように捉えられ――実際にそれ以外の何ものでもなかったのだが――「しかっぺ、理性を諦めるなよ」と早々にフジになだめられる。それを見ながら、そうだそうだと升が笑っている。失礼しました。

 ご飯を食べながらメニューを見て、「この豚ロースのサルティンボッカって何だ?」と独り言をつぶやくと、「あー、たしか口の中に広がる、みたいな意味の言葉だった気がする」とフジが言う。え、なんで知ってるの?と訊ねると、「実家の家族の料理好きが相まって、前に聞いたことがあるんだよね。たしかイタリア語のイタリア料理のソースの名前だった気が」と言いながらスマホで調べ出し、「やっぱそうだ。サルティンバンコってあったじゃない?(シルク・ドゥ・ソレイユの演目)あれもサルティンって超えるとかそういう意味だったから、きっとそういう意味のソースだよ」と、相変わらずの博識ぶりを挨拶代わりに披露される。そうだな、やはり理性を諦めるのはよくないんだな。

 外ではグッズの列がさらに長く長く伸びている。楽屋前の廊下では「お客さんの数が10,000人で、このグッズだけで6,000個も作ったのに、なんでこんな時間に売り切れちゃうの!?」と、これまたもうすぐ理性を諦めかねなそうなスタッフの声がしている。灼熱の中、グッズを求める人も、それを届ける人も、久しぶりのライヴに関わる人も、みんながこの会場で来るべき時を迎える前に、貴重な夏の1日を過ごしているのだ。

「グッズもさ、今回もいろいろ考えたよ。このサメはさ、夏のライヴのグッズの場合、サマーキャンプ感を前から考えてるんだけど、今回はそれがサメだったんだよ。前からサメが好きだというのもあって、いつか作りたかったんだよね。でもこのサメもそのままイラストにしてもなかなかいい感じにならなくて、こうやってスーパーファミコン調にしたら、やっとバシッときたんだ」とチャマが丁寧に過程を話してくれる。

「ウチは『曲』があるじゃない。フジくんの曲ってほんとなんなんだろうね?っていうくらい最高の曲がいっぱいあるじゃない。自分らのことだけど、凄いことだと思うよ、フジくんの作る曲っていうのは。何をするとか何を作るとか何に出るとか、そういうことを軽く超越しちゃってるんだから。俺らはほんと恵まれてる。だからせめて自分はこれ(グッズ)をデザインして頑張ってるよ」

 ご飯を食べ終え、それぞれがブラブラしながら、まずはチャマが13時49分にいつものアコギを抱えながら発声練習を始め、“ハンマーソングと痛みの塔”のサビの一節を歌い出す。なんか、楽屋で聴くととても新鮮な響きがする。単純にライヴでなかなか披露されない曲だし、今回のセットは前半部に割とそういう曲が多くて、それは久しぶりのライヴであることと共に、今の彼らの新しい音楽的な気分を感じられるライヴになるのだろうという予感を感じる。

 14時40分、フジがどこからか縄跳びを出してきて跳ぼうとするが、初めて使うらしく長さ調整に手間どっている。ハサミがないと歩き回り、持ってきてもらったハサミで縄を切るが、慎重に切るので切ってもまだ長くて、再び切ろうとするがハサミはすでにスタッフが持っていってしまって楽屋になく、再びハサミ探しから始まり、その様子を見てハサミを探しにいった舞台監督は実はサウンドチェックのためにギターのヒロを呼びにきたので、今度はヒロが手持ち無沙汰になるという、とても愉快なBUMP OF CHICKENの空気がこの日も立ち込めている。

 14時47分、ベストな長さに縄を切ったフジが、縄跳びを始める。

 涼しい顔で1分半。「今日はこれからが勝負だから、これぐらいでやめとこうかな」と若干の荒息と共につぶやくが、その後1分半、フジは再び跳び、再び「もうこの辺りでいいか」と言いながら縄跳びを置いた。この男、いつしか基礎体力がもの凄く高められている。もちろん筋肉へのフェティシズムなど一切持たないが、これはライヴをはじめとする音楽への立ち向かい方から生まれたものだろう。

「縄跳びをやるとさ、体や喉の通りがよくなる気がするんだよ」と涼しい顔をしながら14時59分、サウンドチェックのためにステージにフジが上ると、久しぶりにステージの上でBUMP OF CHICKENが完成した。

 ――と思ったが、升がいない。

 辺りを見回すと、いた。いつものようにアリーナ内をジョギングしたり歩き回ったり、フロアをひとりで淡々と行き来している。そんな升が15時07分、フジのギターのサウンドチェックに導かれるように、ステージに吸い込まれていった。今度こそ、79年生まれの4人による(今回のグッズシャツの背中に刻まれた「79」は、彼らの生まれた西暦の数字です)BUMP OF CHICKENが久々にステージの上に現れた。

 15時17分、1年ぶりの会場リハーサルが始まった。最初の曲は、ライヴで初披露となる新曲“ファイター”。

 モニターチェックのみをさらっと確認し、次は“才悩人応援歌”へ。ここでチャマが「この曲の前にいつものように僕がMCで煽りますが、いつもよりも短めになる気がしてます。だからいつもよりも早めに準備を始めてください」と細かい段取りを口にする。

――こういうこと、ありそうで今までなかったバンドだなと感じる。少なくともリハーサルでMCの段取りや流れを口にすることはなかったし、如何に去年のWILLPOLISツアーで、ライヴというエンターテイメントへの責任と役割と自覚が確かなものとして息づいたかを、このリハーサルで生々しく感じる。

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text by鹿野 淳

『MUSICA9月号 Vol.101』