Posted on 2015.09.16 by MUSICA編集部

クリープハイプ、『リバーシブルー』リリース。
新曲は抜群、心中は混沌。尾崎世界観の内側を覗く

この曲で一期終わったなって感じがするんですよね。
インディーズの時の必死さも、メジャーに来てからの作り方も、
全部捨てずに、新しい作り方をここからしていきたいなって

『MUSICA 10月号 Vol.102』P.62より掲載

 

■“リバーシブルー”を初めて聴いたのは今年の2月20日でした。

「あ、そうでしたね……あれ? もうインタヴュー始まってます?」

■はい。

「いきなりだなぁ(笑)」

■高知(キャラバンサライ)で密着取材をさせてもらった時にCM部分の30秒のサビをリハーサルで聴かせてもらったのが最初だったと記憶してます。実際、あの辺から制作は始まってる曲ですか?

「そうですね。1月のツアー中に(CMの制作サイドから)お話をもらって、だからツアー中は打ち上げ行かずにホテルで作ったりしてて……あの時は何回かやり取りをしているうちに曲が決まって詰めている時でしたね」

■この“リバーシブルー”はCMのタイアップ曲なわけだけど。クリープハイプはメジャーにきて以来、数々のタイアップを手掛けてきたと思うんですけど、やっぱり思い出すのは“憂、燦々”で。あの曲は初めてタイアップとして明確にお茶の間と勝負をした瞬間だった。で、いろんなことを考えると、今回はあれに次ぐ勝負曲だったと思うんですけど。

「確かに最近は映画のタイアップが多かったから、CMの限られた中で勝負する感じ−−−−たとえば秒数を気にして曲を作ったりするのは懐かしいなと思って、なんか嬉しかったですけど……でも、難しかったですねぇ。実際、(CM上ではクリープハイプという)クレジットが出ないとか、CMができてからもいろんな制約があったりしたし。それでも『あれクリープハイプだよね』って知ってくれてる人がいっぱいいたのは嬉しかったりもしたし」

■何故クレジットがなくとも多くの人にクリープハイプだとわかったかと言えば、それは尾崎にとってはコンプレックスのひとつでもあり、我々にとっては魅力的だと感じる「声の個性」が圧倒的に強いからで。スカパラ(東京スカパラダイスオーケストラ)のシングル『爆音ラヴソング / めくったオレンジ』でゲストヴォーカルをした時に、本当に「尾崎の声はクレジットが要らない唯一無二の声なんだな」と思った。だって、あの曲は最初の1ヵ月間、尾崎の名前を出さずにOAしていたけど、曲を聴いただけで誰もが尾崎が客演しているとわかってたからね(笑)。

「(笑)。“憂、燦々”の時はクレジットに『クリープハイプ』って出て『なんだこのバンド、クソ気持ち悪い声だな』とか言われてたけど、今回はクレジットがないことによって『あ、これクリープハイプだ!』っていうほうに意識が向いたんで、あんまり前みたいに気持ち悪いとは言われなかったんじゃないかなって思ってます(笑)」

■今日も自虐的な返しが絶好調です。

「ただ、やっぱり『あの声、無理』みたいに言われる状況っていうのは周期的に繰り返されるんですよねぇ。こっちとしては『もう過去に散々言われてきたし、その話は終わってるんだけどな』って思うんですけど、スカパラとやらせてもらっても、あるいはフェスでデカいステージに出させてもらっても、いまだに声のことをいろいろ言われるし。こっちとしては解決して次に向かってるのに『またそれか』っていうのはあって…………まぁ気にしなきゃいいんですけどね」

■うん、いい加減気にしなきゃいいと思う。

「そうなんですけどね………。この間も『ごめんなさい、声が無理です』と書かれてて、『ごめんなさい』って何だよって思って(笑)。…………はぁ」

■逆に言うと、よく毎回ちゃんと傷ついてるよね。

「ほんと凄いですよ、この運動量は(笑)。………そこだけ変われないんだよなぁ。こうやって出れば出るほど言われますからね。まぁ望んで出てるんでしょうがないんですけど。ただ、どうしても無視できないんですよね」

text by鹿野 淳

『MUSICA10月号 Vol.102』