Posted on 2015.11.16 by MUSICA編集部

星野源、MUSICA初の2号連続表紙特集!
2015年の圧倒的名盤『YELLOW DANCER』を全曲語り尽くす!

『ばかのうた』を作った時って、
「今の俺が全部入ってる」っていう感じだったんですよ。
で、このアルバムもそうなんです。
今の俺の中身を全部表現できていると思う

『MUSICA 12月号 Vol.104』P.24より掲載

 

■とんでもないアルバムを作りましたね。

「おおー! ありがとうございます!」

■前号ではレコーディング佳境の最中、途中経過のドキュメント的な部分も含めてアルバムに向けた第一声インタヴューをさせてもらって表紙巻頭特集を行ったんですけど。その時に次号では完成インタヴューをバックカヴァーでやろう!と話し、実際に告知もしていたんですけど、その後曲が出揃ってみたらこれがあまりにも大・大・大傑作だったもので、2号連続表紙にしちゃいました!

「やったぜ(拍手)!!! こんなことないでしょう?」

■うん、2号連続表紙は創刊以来初めて。

「嬉しい!!!」

■本当に2015年の圧倒的な名盤ですよ、この『YELLOW DANCER』は。前号のタイミングでは新曲4曲+既発シングル4曲という、全14曲中の8曲を聴かせてもらってたんだけど――。

「そっか、あと6曲あったっていうことか」

■そう。結果全14曲のアルバムを通して聴いた時に、正直言って、これは傑作になるだろうと確信してバックカヴァーを決めていた自分の予想よりも、さらにデカいものが来たなと思って。

「うんうん」

■だから今日は完成を祝いつつ、改めてじっくり話を聞いていければと思っています。

「よろしくお願いします!」

 

(中盤略)

 

1. 時よ

 

■ではまず“時よ”。まぁすでに先ほどたっぷり語ってもらったんですが(笑)。年始に最初にできた時から、こういう音のイメージだったの?

「うん。このベーッていうアナログシンセの音と、繰り返し出てくる♪テーテレテレレレっていう間奏のメロディをストリングスで弾きつつパーカッシヴな部分はアナログシンセで出してっていうイメージは元からありました」

■今回、“時よ”、“Week End”、“SUN”という頭3曲でアナログシンセの音が凄くポイントになっていたり、最終曲“Friend Ship”のラストでもアナログシンセが効いていたりと、アルバム全体の中でも強い印象を放ってるんですけど。それはなんでだったの?

「ここまでいっぱい入れる予定はなかったんだけどね(笑)。“時よ”とかでいっぱい使うかなぁぐらいには思ってたんだけど、“Week End”も結果的にいっぱい使ったし。……“SUN”で使った時に、アナログシンセっていうものの奥深さが凄く面白くて。ツマミひとつで音が全然変わっていく感じ――プリセットじゃなくてその場で作っていくから同じ音には戻れないとか、そういうナマの感じが凄くいいなぁと思って。電圧でチューニングが変わったり、急に1個の鍵盤だけならなくなったりするんですよ(笑)。そういうのも含めてチャーミングだなって思うし、あと、温かみがもの凄くあるように感じたんですよね。それが凄く楽しくなったっていうことだと思うんだけど(笑)」

■シンセなんだけど、人間のユーモアみたいなものが表れてくる感じがありますよね。

「うん。なんていうか、凄く現代感がある。もちろん現代はデジタルが主流だとは思うんだけど、でも今また復刻版でアナログ回路のシンセサイザーだったり、アナログ音源のリズムボックスだったりっていうのがどんどん出てきてて。JUNOとかJUPITERとか(80年代に発売された代表的なアナログシンセ)、当時は未来的だったものが、今は凄くリアルタイムな質感として感じられるなぁって思うんですよね。現行で出ているデジタルなものは、もうちょっと先の未来を思い描いているっていうか……自分の中では凄く、アナログシンセの音っていうのが今の日本っぽいなぁっていう感じがあって。で、やっぱりノイズであるっていうことは、自分にとっては凄く大事なことだから。あのベーッていう音が、ノイズなんだけど気持ちいいっていう、その感じがいいなって。今はみんなEDMでもなんでも、もっと強い刺激でも耐えられるようになってるんだとは思うんだけど、俺は過激なことをやりたいつもりはなくて、今のことをしようと思っているだけなんです。その中で自分の想いが一番伝わるやり方としては、手で演奏するアナログシンセっていうのが一番いいだろうなって。それでやってみたらよかったから、いっぱい使ったっていうことです」

■歌詞については、2番の<結んで開く~>っていうところが凄く素敵だなぁと思いました。

「この2番の歌詞を書いたのは、まさにドラマ(『コウノドリ』)を撮っている時だったんです。だから赤ちゃんというキーワードが出てきたのも凄く自然なことで」

■あ、なるほど。

「『コウノドリ』で出産についていろいろ勉強してるんだけど、やっぱり出産って何が起こるかわからないんですよね。100%安全なお産っていうのはなくて。怖がる必要はないけど、でもみんなに平等にリスクがある。で、そういう危うさの中で、生命はずーっと続いているんだなぁって凄く実感するわけです。そういうことの影響が自然と出てきて、この歌詞ができて……みたいな。それも自分では凄く面白かった。あと個人的には3番の<夕立に濡れた君を>っていう歌詞ができた時に、もらった!と思って(笑)」

■季節の移り変わりを書いてる箇所ね。

「春、秋、夏、冬っていう順番なんだけど、四季を1行ずつ書いていこうって思って季語をいろいろ調べたりして。その中で夏っていうものを表す言葉が<夕立>になって、そこに人(<君>)を入れられたのが嬉しかったというか」

■情景の中に人間の存在を入れられたからだ。

「そうそう。それでさっき話したことが一気に表現できたなっていう………なんか、聴いてもらうのが一番!って思ってきた(笑)。どう説明してもダメだわ。それは今回すっごくそれを感じるの。全部できたな!って。補足説明しなくていいやっていう感じがあって(笑)」

■ま、それはわかる(笑)。

「ふふふ。あ、でも、この曲の歌詞を最後<バイバイ>で終えよう!って思いついた時には、凄く興奮したなぁ。この『バイバイ』っていう言葉が、この曲の中では凄く爽快な感じがする。『さよなら~っ! また来週~っ!!』みたいな(笑)。その爽快な感じを<バイバイ>で表現できたなと思って、なんか凄く達成感があったなぁ。この歌詞のテーマの最後の言葉として凄く相応しいというか、新体操で最後に着地がパシッと決まった!みたいな感じがあって」

■この曲は「バイバイ」だけど、「さよなら」という言葉も今回のアルバムではよく出てきていて。前号で「それは意識的に書いてる」と言ってましたけど、その理由を私なりに考えてきたんです。

「お」

■でも、その話は最後の曲でする(笑)。

「ははははははは、了解!(笑)」

(続きは本誌をチェック!

text by有泉智子

『MUSICA12月号 Vol.104』