Posted on 2015.11.18 by MUSICA編集部

SiM、熱くラウドに燃え尽くした
最初で最後の武道館公演に完全独占密着

SiM、最初で最後の武道館を完全掌握!
聖地を飲み込んだ「こんなの観たことねぇ!」な狂乱の絶景、
その最深部に独占密着!
ロックの使命を引き受け爆走する闘争の音塊、
シーン云々を超え、いよいよ比類なき存在へ

『MUSICA 12月号 Vol.104』P.54より掲載

 

 12時を少し過ぎた頃に到着すると、すでにもの凄い数の人で溢れていた。物販テントが立ち並んだ玄関前から武道館の外二階部分を1周分、この日限定のグッズを求める人の列が伸びている。快晴の昼間にSiMの黒いグッズを身に着けた人々が(文字通り)黒山の人だかりを作っているだけでもインパクト大だが、6月に武道館公演が発表された時点で「武道館公演はこれが最初で最後」とMAHが公言したこともあって、集った人々のこの日に懸ける気合いがすでに凄まじい。さらに、センターステージでのスタンディングライヴを武道館で行うのは、BABYMETALに次いで史上二例目らしい。そんなスペシャル感に胸を躍らせて会場に入ると、まずはそのステージが現れた。

 …………凄い。ここに約1万人が入るのか。

 巨大な「SiM」ロゴがど真ん中に入った八角形のステージで、その八辺それぞれから渡り通路が下ろされ、一段下がった外周ステージに繋がっている。さらに北側の巨大な黒バックには、その上部のSiMロゴを取り巻くようにして歴代の作品タイトルが散りばめられている。その麓には銀の牙のオブジェに囲まれた入場口、そのステージ全体を囲んでスタンディングエリアが配され、ステージの正面ひと区画だけが座席に。こんな配置は初めて見た。

 ステージ北側には巨大なヴィジョンがふたつ設置されていて、まずはSE映像の確認が始まった。真っ赤な空をバックに漆黒の洋城が浮かび上がり、その屋根に立つSiM4人がそこから飛び降りて、こちらに歩いてくる――というオープニングアニメーションで、GODRi、SIN、SHOW-HATE、MAHの入場順にメンバー紹介の画がキマり、前述の「牙の門」の左右からスモークが飛び出すという流れである。この一連、そしてセンターステージを俯瞰して、すぐピンときた。プロレスだ。特にMAHやSINはプロレス好きだし、あの決めの絵と入場口両サイドからのプシャーッ!は、まさに格闘技の入場のアレである。さらにセットリストに目をやると、「Drum solo~ワイヤー」という文字があったり、「MAH CHANCE」という謎のコーナーが設けられていたり。これまでは排されてきた演出の多さが予見できた。そして特に目を引いたのは、アコースティックセットが導入されていたこと。これは今回のZeppツアーで初めてトライしたそうだが、北海道ツアーに密着した際にMAHが話していた「ライヴハウスと同時にアリーナでも人を満足させられるバンドになって、もうひとつ上に行きたい」という言葉が、全方位に同距離で立つステージ、スタンディングの中に座席も混在させたアリーナ、そしてアコースティックセットという形で体現されていた。

 すると、まず13時にSINとSHOW-HATEが、13時半にMAHとGODRiが会場入り。ステージに対面すると、全員が「ヤバくない!?」と少年のような表情を見せる。ロックに夢を見続けてきた男達らしい、高揚に満ちた聖地との初対面だ。

 14時を過ぎた頃、ステージではGODRiとSIN、その次にSHOW-HATEがサウンドチェックを開始。センターステージの特性上、音がグルリと回りやすいため、特にSHOW-HATEは慎重に音を作っていく。ソリッドなだけでなく、不穏な揺らぎや混沌とした世界を作り出す様々な音色が次々に鳴らされていき、いい意味で「本当に変なことをサラリとやるバンドだな」と、改めてSiMの音楽的な面白さを実感した場面だった。

 その頃、楽屋に戻ってきていたMAHに「ツアーはどうでした?」と話を訊くと――。

MAH「今回、自分達としてはかなり短いツアーだったけど、それが凄くよくて。短いツアーだからこそ、ちゃんと仕上げて臨もうと思って、バンド練習だけじゃなくてライヴのリハを4人でやるようになったんですよね。それで、演奏面でも見せ方的にもライヴがよくなったんですよ」

■歌がよくなったり、ライヴのリハをちゃんとやろうと思ったのは何故だったんですか。

MAH「ライヴハウスに軸があるのは変わらないけど、もっと大きいステージでもできるバンドになるためには、音楽的にならなくちゃいけない部分もあるわけで。だから俺個人としてもヴォイトレに通ってみたりして。……暴れたいヤツは暴れればいいし、聴き入るヤツは聴き入ればいいっていうのが、そもそも音楽の理想で。でも、今まではそういう自由な楽しみ方を音だけで提示するほどの実力がなくて。だけど前回(『i AGAINST i』のツアー)売り切れなかった札幌のZeppも今回は売り切れて。そういうのも含めて、ちゃんと音楽的なバンドなんですっていうのを見せるべきなのが、このタイミングだと思ったんですよね」

 そして15時15分、リハーサル開始。この日以前にゲネプロは2回行われたそうで、この日のリハは数曲だけで、どちらかと言えば演出の進行を固める向きが強かった。新曲の“CROWS”、MVを再編集した映像を流す“Amy”、“EXiSTENCE”、本編ラストの“JACK.B”。さらに謎の「MAH CHANCE」を挟んでのアコースティックセットで披露する“Same Sky”とThe Beatlesのカヴァー“Come Together”(ファーストアルバム『Silence iz Mine』にも収録されている)。そして「Drum Solo~ワイヤー」のセクションを順番にチェックしていく。例の「MAH CHANCE」と「Drum Solo~ワイヤー」の謎もようやく解明される時だ。

(続きは本誌をチェック!

text by矢島大地

『MUSICA12月号 Vol.104』