Posted on 2015.12.15 by MUSICA編集部

ゲスの極み乙女。、華麗なるお茶の間侵略を果たした
彼らの次なる勝負のニューアルバム『両成敗』、
川谷絵音ソロ&メンバー3人インタヴューで、いざ解析!!

自分の作るものにハズレはないっていう、
今は特にそういうのが確信になっていて。
言葉とメロディの強さっていうのは絶対あると思うんですよ。
それは誰にも真似できないところまで来てるのかなって自分では思ってて

『MUSICA 1月号 Vol.105』P.46より掲載

 

Interview with 川谷絵音

 

■覚えてるかわからないですけど、国際フォーラムで、「誕生日も近いし、ケーキ買ってくるから、美味しいケーキでも食べながらインタヴューしよう」って言ったんですけど。

「ああ(笑)、言ってましたね」

■それを有泉に言ったら固く叱られまして。「そんな時間ないですから! まずそういう状況じゃないんですから絵音くん、ヘアメイクとかスタイリング入った状態で来ますから、それで口とか服とかベタベタしちゃったらどうなるんですか!」ってすっげえ怒られて。

「ははは、そんなに怒られたんですか。今日はちょっと難解な、30分後に一度抜けさせていただくのでご容赦いただければ」

■初体験なんですよ、25年間やっていて。インタヴューとインタヴューの間に中断して他の媒体の撮影が入るって。

「なるほど。僕もあんまりないです」

■でもそんな状態を今このバンドは招いていて。この状態を嬉々として作ってるのは川谷くんなんですって3人も言っていて。まず今この狂騒の中にどういう気持ちでいるの?

「そんな変わってないですけどね。どっちかっていうと去年ぐらいのほうがそういうふうに思ってたかもしれないですね、ヤベえヤベえ、みたいな。どっちかっていうと今年は割と……忙しかったですけど、indigoの国際フォーラムもソールドしたし、上手くいってるからそんなに」

■去年は状況が予感的なものだったよね、上手くいってるんじゃないか、いってるっぽいぞ。でも今年はリアルに数字もついてきたし、特にゲスの極み乙女。に関しては、お茶の間という世界に本当に素足で入り込める状況の中で今を迎えているって感じなんだけど。

「実際はそんなに、やってやったみたいな感じも全然ないんですけどね。『紅白』が決まって、いろいろ連絡が来たり、初めてぐらいの親戚とかから連絡来たり(笑)、じいちゃんばあちゃんとか喜んでるし。そういうの見てると、お茶の間になったんだなというか。……実感ないんですけど、それぐらいですね」

■ちなみにそれは明確に望んでいた世界だったんですか?

「そうですね。『紅白』に出られるとは思ってなかったですけど、『紅白』っていう明確なものじゃなくても、お茶の間に広がるっていうのは最初から言ってたので、それの一番わかりやすい形かなとは思います」

■前作の『魅力がすごいよ』のリリース後に、結果に対してストレスを感じてるし不満足だって言ってた、そこから1年間で立て直してきたことがここにつながってるんじゃないかなと思うんですけど。

「立て直すっていうよりは、焦りでしかなかったんで。去年の10月にアルバム出して、思ったような結果に自分の中ではならなくて。最初はそこから6月までリリースがないっていう状況だったので、だから焦って1月にレコーディングして、4月に曲を出したりもしたし。そこで“私以外私じゃないの”っていう曲を出したことで今年はいろいろ変わっていったっていうのもあったので、あれは本当に今年の1曲っていうか。『レコード大賞』にも“私以外私じゃないの”がノミネートされてたりっていうのもあるし、あの1曲がなかったらどうなってたんだろうなとは思ったりします。あれがあってよかったな、とはずっと思ってます。ゲスの極み乙女。がこういうバンドだっていうスタンダード化したナンバーって、3つシングル出してなんとなく、敢えて結構わかりやすく作っていったんですけど。言葉がキャッチコピー的な感じで、サビがずっと頭に残るっていう。より言葉の力が増したというか。“私以外私じゃないの”を作って広がったから、そういう曲作りができるようになったというか。あの瞬間からですね、ゲスの極み乙女。の本当はこれからと思えたのは。あれ以来、自分の中で今までをもうなかったことにしてて(笑)。ゲスの極み乙女。は“私以外私じゃないの”という曲から始まってる感じに自分の中でできたのかなって今、思ったんですけど」

■最初にゲスの極み乙女。っていうイメージを作っていったのが “キラーボール”であり、それを形成していったのは、音楽シーンというかフェスシーンだったよね。それが“私以外~”はお茶の間がそのバンドの代表曲を変えたというか、イメージを変えたというか。それの違いが凄い大きかったなと思う。でも、そのイメージを変えさせたのは結局絵音くんだと思うんですよ。というところから始まったものの集大成のアルバムが出るわけですけど。まずお訊きしたいのは、この17曲の超大作に結果的になった、これは前作と比べてもの凄く大きな違いなんですけど、これの意図はどういうところにあるんですか?

「意図というよりは、作ってたらそうなったっていうだけであって(笑)。8月にレコーディングをしてたんですけど、12日間合宿やってて。でも11日で全部録り終えたんですよ。17曲ではなかったですけど、当初の予定の曲は。で、1日余って時間ができたのでいろいろ考えてたら、うーんみたいな感じになってきちゃって」

■何が「うーん」なの?

「いいアルバムできたんだけど、バランス的にどうなんだろうなって思いながらレコーディング終了したんです。そこからアリーナツアーだったんで、とりあえずレコーディングのことは忘れてライヴやろうみたいな感じになり、フェスとかもあったので。そしたら『消滅都市』のタイアップが決まるか決まらないかみたいな、『まだわかんないんだけど』みたいなことを言われたので、だったら作りますって、決まってもないんですけど、急遽ゲームやって(笑)、作ってポーンと投げたらタイアップが決まって。『あ、決まるんだな』と思って。かつ、アルバムは1月発売だけど、まだマスタリングの納期まであるらしいって気づいたので、じゃあこれも入れましょうって言って。これ、たぶん今入れなかったら絶対次のアルバムどころか、シングルにも入れないだろうなって。すぐ飽きちゃうんですよ。10月に作ってたので、10月に作ったものを1月以降のシングルに入れるなんてことは考えられなかったっていうのもあるし、今言ったみたいにアルバムをもうちょっと、よりバラエティのあるものにするためにっていうところでピッタリの曲だったんじゃないかなっていうのはあります」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA1月号 Vol.105』