Posted on 2015.12.16 by MUSICA編集部

THE ORAL CIGARETTES、
決定的作品『FIXION』を携え、バンド戦国時代に真っ向から挑む

「人間は元々汚いものだ」って決めつけたほうがラクだし、
歌詞を書きやすいんですよね。
歌詞の土台に汚いものとか醜いもの、自分勝手、自己中心なところを
敷いてるからこそ優しさが浮き出てくるもんだと僕は思ってて

『MUSICA 1月号 Vol.105』P.100より掲載

 

■勝負のセカンドアルバムができたことを喜ばしく思うとともに、2016年のシーンが見えるアルバムにもなったんじゃないかと思いました。まずはそれぞれの想いを聞かせてください。

中西雅哉(Dr)「今作は、今までよりだいぶスケールが大きくなった作品だと思ってて。それは、たぶん今年の夏フェスで立つステージとか自分達のツアーの規模が大きくなったっていうのがあったからだと思うんですけど。そういうスケール感のある曲もできてきたし、それが自分達の今のスケール感でできてるのが凄くいいなって思ってます。前作『The BKW Show!!』のツアーの時もだんだん規模が大きくなってた時期だったんですけど、スケールアップしていってる状況に自分自身が後から追いついてるっていうか、自分自身の気持ちが後追いな感じだったんですよね。でも、最近はステージが大きくなっていくことを見据えて、自分が見えてる範囲で準備してるなって、全然背伸びせずに作れたんですよね」

あきらかにあきら(B)「このレコーディングのタイミングは、拓也(Vo&G)の喉の(ポリープの)件もあったんで――これが最後のアルバムになっても後悔しないような曲をいっぱい詰め込みたいなって思ってたんですよね。だから、何回も聴けるようなアルバムにしたいなって思ってて。具体的には、アルバムにおけるそれぞれの曲の立ち位置みたいなものを凄い考えて。振り幅を見せるために敢えて不気味な要素を入れる曲があってもいいと思うし、勢い重視でひたすら突っ走る曲があってもいいんじゃないかっていろいろ考えたりして。そうやってどんどん曲のイメージをみんなで共有して、その方向性に向かってそれぞれの曲を仕上げていったんです」

■今話してくれた「これが最後の作品でもいいやと思って作った」っていうのは、アーティストとしての覚悟だよね。

あきら「本当は最後なんて絶対嫌なんですけど……今まで入れたかったけど作り切れてなかったリフを入れたりとか、そういう『曲を完成まで持っていく』っていうみんなの意志みたいなのを感じたんで、今出せるもんを全部出そうってことになったんですよね。だから、レコーディングの直前までフレーズを試行錯誤したりして…………本当に自分が納得いかんまま終わるのは嫌だったんです。そこにはストイックになってた気がします」

鈴木重伸(G)「うん。僕自身も凄く挑戦した曲が多いなって思ってます。今までやったら、サビ裏やAメロであっても『僕のギターの音を聴いてくれ!』っていうエゴがあったし、自分オリジナルのフレーズを弾こうっていう意志が強かったんですよね。でも、今回はみんなが歌に寄せたコードをつけてくれたんで、僕自身も歌やメロディに寄り添うっていうことに対して挑戦しにいったんです。ギタリストとして自分ばっか出してるのは違うなってことにも気づけましたし、ちゃんと自分のリードギターっていう立ち位置を再認識できたアルバムになったと思います」

山中拓也(Vo&G)「僕は、今までの『The BKW Show!!』と『オレンジ(の抜け殻、私が生きたアイの証)』込みで、今作は今出すべくして出すアルバムかなっていう感覚があって。さっきまさやんも言ってたんですけど、このアルバムって『等身大』っていう言葉がピッタリやなって思ってて。自分でもこの『FIXION』を作る中で、音楽に対する想いの幅が広がったなっていう感覚があるんですよね」

■『The BKW~』は、ある意味インディーズの時からの総集編となる作品を作ったよね。今回も“エイミー”っていうインディーズ時代の曲が入ってるとは言え、真新しい世界に行った第1期の集大成が今回の『FIXION』なんじゃないかと思うんですけど。

山中「うん、そうですね」

■拓也の中で、そういうインディーズ時代の集大成を作り終えて曲作りがどう変わったのか、もしくはどういうふうに変えようと思ってこのアルバムに結びついてると思う?

山中「僕、鹿野さんがどっかのタイミングで言ってくれた『オーラルはストーリー性のあるバンドだよな』って言葉がずっと頭の中にこびりついてたんですよね。『The BKW Show!!』の時は、サウンドがどうこうよりも、まず僕達の人間性を伝えることが大事だと思ってて、それで歌詞では自分の奥にある本当の部分を書いてみたんです。だから『The BKW Show!!』は、オーラル4人の人間性をちゃんと出せたアルバムだなって今でも凄く思う。で、今回“エイミー”、“カンタンナコト”、“狂乱 Hey Kids!!”をシングルとして出して、オーラルはこれからどう変わっていこう?って考えた時に、サウンド面に目を向けてみたからこそ、これからオーラルがどういう音楽を発信していくのかっていう視点で今回のアルバムを作れたんですよね。今までは、曲作る時にいろんな音楽を聴いて、『この部分をオーラルの曲に落とし込んでみようかな』っていう作り方をしてたんですけど、ちょっと視野が狭い感覚があるなって思って。今は、他の人の曲聴いて自分に曲をインプットする時に、『このジャンルをオーラルのロックを使って表したらどうするんだろう?』とか『自分達の強みを使って表したらどうするだろうな?』っていう感覚で曲を聴くようになったんです」

■日常的に音楽を聴くにあたって、自分がプロデューサーになってたんだ。

山中「あ、そうかも。だから、いろんな音楽をオーラルとして表現できるようになったし、僕らが鳴らせば僕らの音楽になるっていうのも改めて確信できて。喉の手術をするって決めた時に、『自分の声のいいところがなくなるかもしれない』っていう不安も1回抱えたからこそ、こういうことも考えられるようになったと思うんですけど――」

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text by鹿野 淳

『MUSICA1月号 Vol.105』