Posted on 2016.01.15 by MUSICA編集部

KANA-BOON、決意と進化のニューアルバム『Origin』完成!
再び強固に結びついた絆を胸に、
いざ真新しい世界に向かう彼らに迫る

「このままじゃどこにも行かれへんな」っていう、決定的な感覚があって。
音楽自体への向き合い方とか、もっと未来のことをちゃんと考えるとか、
そういうことをせぇへんともうどうにもならへん、これ以上先に進めへんなって

『MUSICA 2月号 Vol.106』P.10より掲載

 

■今日は2015年12月31日、つまり大晦日で。

「1年が終わりますね(笑)」

■ね。この1年の想いが詰まったアルバムの取材をその年の最後の日にできるのは感慨深いです。

「よろしくお願いします」

■まずは『Origin』完成おめでとうございます。これは本当に、もの凄く感動させられるアルバムでした。

「よかった、ありがとうございます。そう言われて安心しました」

■自分ではどうですか?

「『TIME』ほどやり切ったっていう感じではなくて。今回ばっかりはいろんな人の反応を聞きたいなっていう……それは作ってる時からずっと思ってたことなんですけど。このアルバムって、自分らのできる範囲の外に出てるんですよね。『TIME』の時はKANA-BOONの得意技というか、自分達も知ってるKANA-BOONのよさっていうのをたくさん詰め込んでたから、これは間違いないなって作ってる時から凄く思ってたんです。アルバムのストーリー性も見えてたし。でも、今回は4つ打ちというところからも凄く外れてるし、今までの範囲の外に出ているアルバムで」

■そうですね。ザ・4つ打ちな曲は“なんでもねだり”以外になくて、8ビートの曲が多いし、“インディファレンス”のようなドラマチックで重厚なロックもあるし、シティポップ調の“グッドバイ”もあるし。今までのKANA-BOONのイメージからは明らかにはみ出していってますよね。

「はい。だからこれが受け入れられたいなっていう気持ちですね」

■私はこの音楽的バラエティもそうだけど、何よりもここに音楽化されている想いと決意に心を揺さぶられました。『TIME』もこのバンドの想いやストーリーがちゃんと作品化されたものだったけど、これは前作よりも踏み込んだところで『TIME』以降に顕在化したであろう鮪くんの心情と葛藤、そして決意が音楽として表されていて。それが、このアルバムを凄く深いところで聴き手を感動させる作品にしているんですよね。

「そう言ってもらえると嬉しいですね」

■歌詞は今までで一番苦労したっていう話も聞いてるんですけど。

「はい、ちょっと時間がなくて。前々から『早よ書いとけよ』とは言われてたんですけど、なかなかモードに入れずズルズルやってたら予想通り大変なことになってしまい」

■でもさ、時間がなかったのは『TIME』の時も同じだったじゃない? 

「そうですね。でも今回のほうがキツかったですね」

■古賀くんが「前は俺が4時間くらいギター録ってる間に鮪が歌詞書き上げてたんだけど、今回はギター録りに1日かけてもまだ上がってなくて。今回は凄くいろいろ考えてるんやと思う」って話してくれたんですけど。

「(笑)そうでしたね、だから歌録りを遅らせたりもして。……『TIME』の時は、歌うことが大体どの曲もはっきりしてたんですよ。でも今回はサウンド的にも一歩踏み込んだところに行ってるから、この曲はどういうテーマなんやろとか、そういうところを探すのに割と時間がかかって」

■音楽的にも今までとは違う挑戦をしているけど、言葉自体も、今までよりも踏み込んだものがとても多いよね。

「はい。今まで歌ってきたことは『TIME』で綺麗に全部歌えた実感はあったんで。だから今回は、その上で今どんなことをテーマにするのかっていうことを考えたんですけど。“インディファレンス”とかは特に、やっと言葉にできるタイミングが来たなという感覚やったし。他の曲もいろいろそういうところがあるんですけど、ちゃんと今のタイミングでメッセージとして出したいことを書き切れたのはよかったです」

■つまり歌詞のテーマとしても、『TIME』でひとつ結成からデビューして大舞台へ立つというバンドの物語は歌い切って、次の段階へと進むべきタイミングだったし、自分自身が進みたいと感じたタイミングだった。きっとそういう意識があったから時間かかったんじゃないかなって思うんだけど。

「そうですね。あと責任感というか、歌詞でもうちょっと曲を昇華させてあげないとっていうのもあったかもしれないですね。今回ギターが頑張って新しい部分を鳴らしてくれたんで、僕は僕でちゃんと、この曲達を今までよりも1歩進めるっていうことをやらんとなって」

■ラス前に“スタンドバイミー”という素晴らしい曲があるんですけど、この曲が今回のアルバムの背骨というか、最も芯の部分にある原動力であり、今のKANA-BOONのテーマを象徴している曲だと思うんです。

「はい、その通りです。最初に歌詞を書き上げた曲ですね」

■で、そのテーマは何かと言うと、「失ったあの頃の自分を取り戻すこと」で。“スタンドバイミー”ではそれをダイレクトに歌った上で、そのためにもう一度信じて飛び出していこうという決意を歌ってるんだけど。鮪くんは前号のウチの総括アンケートで、「デビューからここに辿り着くまでに失ったものを来年は取り戻しに行きたい」とはっきり書いていたけど、そういう話は10月の『talking』の取材の時にもしていて。やっぱり、その気持ちが今回作っていく中では凄く強かったんだね。

「強かったですね。一番最初からそういう気持ちでアルバムに向かったわけではないんですけど、でもこの歌詞を書く前にメンバーと話して、これからどうしていきたいかは明確になって。失ったものを取り戻していくとか、また原点に立ち返るんやっていうことがはっきり見えたから、だからアルバムもこういう結果になったんですけど。そのアンケートのことも、“スタンドバイミー”がもうできてる状態やったからこそ、はっきり書けたことやったと思います」

■「失ったものを取り戻しにいくんだ」っていう気持ちが生まれたのはいつぐらいからだったんですか?

「はっきり言葉にしてメンバーと共有したのはほんまに最近、メンバーとみんなで飲んだ時にそういう話をして」

■『talking』の取材で話してくれたよね。たしか10月くらいだったっけ。

「それくらいかな。やっぱりデビューして以降、バンドの中でいろいろ差は出てきていて。その中で僕自身は凄く寂しい気持ちと『なんでもっと追いついて来うへんねん』っていう気持ちと、『もうちょっと自分が周りを見てあげないといけないのかな』っていう気持ちと、いろんなものが混ざり合ってたんですけど、そのすべてをメンバーに話したんですよね。そしたらメンバーも同じようにその距離は感じてて。で、そういう距離感があるのはあかんやろって話になって、ちゃんともう一回横並びになろうっていう話をしてまとまった感じですね。そういう気持ちはデビューしてからずっと積み上がってきたものやったんですけど、その話し合いでひとまず解消できたから凄いよかったなと思います」

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text by有泉智子

『MUSICA2月号 Vol.106』