Posted on 2016.01.16 by MUSICA編集部

10年代後半のシーンを牽引する
新世代バンドMrs. GREEN APPLE。
最初の「ログ」たるフルアルバム『TWELVE』から
大森元貴の心を覗く

自分は愛っていうものを求めてるし信じてるし
自分の中で裏切りたくない。そういう決意表明みたいな
ところはこのアルバムに凄くあるんだと思います

『MUSICA 2月号 Vol.106』より掲載

 

■怒涛の1年を経て、新年開幕と同時にいよいよフルアルバムが出ます。これまでミニアルバム3枚出していて、それは3部作としてどれも元貴くんの中で明確なテーマを設定して作ってきたものだったわけですけど、今回はどういうことを考えて作ったんですか?

「今回のアルバムは、制作を始める時に今までのようにコンセプトだったり、自分の中での答えみたいなものをあまり決めずに、『今のMrs. GREEN APPLE』っていうものを全部詰め込めればいいなと思って作り始めたんですよね。自分自身としても、作りながらそれを模索して、作り終わった時に何か答えが見つかっているようなアルバムにしたいなっていうのがあって。実際そういう話をメンバーともしたんですけど。だから今回は最初から決め込んで、みたいのはなかったです」

■それって初めてのやり方だよね? どうして今回は作りながら模索したいと思ったの?

「なんか未知数なところを楽しみたかったところもありましたし、あとやっぱり、『Mrs. GREEN APPLEとはなんなのか?』っていうことを自分自身でもちゃんと知りたかったっていうのが一番大きな理由だったと思います。『Mrs. GREEN APPLEとは?』みたいなことって、いざ言葉にしようとしても自分達ではやっぱり言えないんですよね、当事者だから。で、それを知るためにも、自分達が今までどういう音を鳴らしていたのか、今どういう音を鳴らしたいのか、そしてこれからどういう音楽を鳴らしていこうと思っているのか、みたいなものを、アルバムっていうひとつの形として今ここでログとして刻みたかったんです。それでこういう今までとは違った作り方にしたんだけど」

■今までの作品は、元貴くん個人の中にある価値観を音楽という形にして提示していくものだったと思うんですよ。で、そうやって提示することこそが、元貴くん自身が音楽をやる理由でもあったと思うんですけど。でも今話してくれた「Mrs. GREEN APPLEとは?」っていうテーマは、それとはちょっと性格が異なりますよね。そこには、音楽を作っていくということにおいて元貴くんの中で「バンド」っていうものに対する意識が強くなった、その比重が大きくなったみたいな部分もあるんですかね?

「それはめちゃめちゃあると思います。僕らインディーズデビューもメジャーデビューも2015年の1年の間にしてて」

■そうだよね。ほんと激動だったよね。

「はい(笑)。見つかるのも気づかれるのも全部が1年の間に起こってて、だから活動の濃度がもの凄く濃い1年だったんですよね。そういう期間を経てちゃんとバンドとして結束というか、団結できた1年で……その中で、自分が純粋にメンバーに対して心を開けるようになってきたっていうのが凄い大きな事実としてあると思う。本当にそれだけだと思いますね、今までと違うところっていうのは」

■でも、それはとても大きな変化ですね。

「そうなんです。もちろん今もMrs. GREEN APPLEの核の部分を作っているのは自分だっていう意識があるし、それはずっと変わらないんですけど、でも前はひとりで曲を作って発信しなきゃっていう意識とかプレッシャーが凄く強かったのが、今は周りに4人がいてくれるっていう感覚が、以前よりずっと強くなったんですよね。たとえば作品を作っていく時にも、今までは言葉にして共有しなきゃいけなかったところが、言わずとも共有できてたり、ライヴでメンバーとパッと目が合った時の、『ドキッ』っとする瞬間が以前よりも凄い増してきたり……なんか漠然としたことばかりなんだけど(笑)、でもそれは自分にとっては凄い変化で。なんというか、自分の砦というか、居場所が固まってきたのかなぁっていう実感があります」

■前にインタヴューした時に、自分は寂しがりやで、仲間意識を強く持ちたい人なんだけど、小中学校時代にそれが持てなかったショックは大きかったと話してくれたけど。

「そうでしたね(笑)」

■そういう自分がちゃんと居場所を見つけられた感覚は、この1年で生まれたんだ。

「たぶんそうなんだと思います。それによって本当に肩の力が抜けてきたのも感じるし」

■実際に今回のアルバムはバンド感も増しているし、曲のポップさはもちろん、突き抜けていくエネルギーが凄く強くなっていて。それは最近のライヴでも強く感じたところなんですけど。前は「楽しませよう」という意識が空回りしてる瞬間もあるように見えたけど、今はバンドとしてのパッションがちゃんと出てきてるよね。それによって曲自体もどんどん活き活きしてきているし。

「うん。ちょっと吹っ切れたところもあるかもしれない。『これがMrs. GREEN APPLEだよね』みたいなイメージの制約を作りたくないっていうことは凄くメンバーとも話してるんですけど、でも、やっぱり僕らのひとつの武器として、あんまり周りのバンドが歌おうとしないポップスとそこにあるキラキラ感みたいなもの――それって深い意味でもあるしダサい言葉でもあるんだけど、そういうものを思い切り表すことができるっていうのは、自分らが今持てている切符なのかなって思ってて。だったらそこを最大限に活用しようよっていう吹っ切れた考えみたいなものは、メンバーとの信頼関係ができてくるのと共に生まれてきたように感じてます」

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text by有泉智子

『MUSICA2月号 Vol.106』