Posted on 2016.02.15 by MUSICA編集部

BUMP OF CHICKEN、20周年突入!!
新たなページに刻む光の名曲集『Butterflies』を
メンバー全員5万字全曲解説で猛祝福!

“Butterfly”っていう曲のアレンジがどうとかっていうことじゃない。
思想とか、概念とか、そういうのは僕はまったく考えていない。
そうじゃないところで、ただただ音楽とイチャイチャしていたいだけなんです(藤原)

 

まずは紅白の話からでも始めましょうか

 

■まずは紅白を。今年の年越しの瞬間は、人生の中でも特別な時間を過ごされたと思うのですが。

直井由文(B)「僕らCOUNTDOWN JAPANから中継で紅白に出場させていただいて。ちょうどライヴの2曲目の“ray”で出させてもらったんですけど、その前に少しだけ中継を繋ぐための間があって、僕らはステージで少しの間を過ごしていたんですけど。たぶん、僕らが情けなかったんでしょうね(笑)。会場中から『頑張れ~!!!! BUMP~!!!!』って声の連発で、本当にありがたいなと思って。BUMP OF CHICKENを知らなかった人も、『初めて“ray”を聴いていいと思いました』とか新たな出会いが生まれたり。本当に貴重な経験だったし、本当にありがたいなと。もう今まで通り俺ら自身はただただ情けないんですけど(笑)」

■ヒロは?

増川弘明(G)「チャマの言う通りで。紅白は、何ヵ月か前、話を聞いた瞬間が一番緊張していたというか。やっぱり蓋を開けてみたら僕らができることっていうのは、いつもと同じことで。目の前にお客さんがいてくれて、一緒にそういう場を過ごせたのが凄く嬉しかったというか。あと僕ら、31日は(毎年)何かしら仕事はしているんですけど、ライヴとかは10年以上してなかったので。それができたっていうのは、久しぶりで楽しかったし。……不思議ですよね。まだちょっと、紅白がどうだったかっていう実感がないんですよね(笑)。でも前は、ライヴ終わってみんなヘロヘロだったし、終わったらすぐ帰りましょうっていう感じだったんだけど。今回は年越しの瞬間までみんなで一緒に過ごせたし、乾杯したりしてね」

■よかったね。ヒデちゃんは?

升秀夫(Dr)「やっぱりお客さんが凄くよかったというか。僕らはいつも(ステージの上から)凄い景色を観ているなぁと思うんですけど、それをああいうふうにたくさんの人が観るテレビに、お客さんと一緒に参加できたっていうのはよかったなぁと思っていて。自分達の音楽っていうのはもちろんですけど、あの場だったり、一緒にライヴを作っているっていう、今までやってきたことが、テレビの向こうに届けられたのはよかったなと思っています。観てくれた人から感想もらったりしたんですけど、『紅白出てたね、よかったね』じゃなくて『ああいう凄いことやっているんだね』って言ってくれたりするのは、凄く嬉しいなと思いました」

■フジはやってみてどうでしたか?

藤原基央(Vo&G)「テレビに出るっていうことは、目の前にいない人も聴いてくれるということで、とてもありがたいことだと思うんですけど、そこにやっぱり恐怖がありまして。どんなふうに聴いてくれてるんだろうかとか、テンションの温度差とかもあるだろうから、この熱量がちゃんと届いているんだろうかっていう不安はあるんです。先月(前号でのソロインタヴュー)もそんな話をしましたけど、当日もそんな気持ちを抱えたままで。それでもやっぱり、僕達は曲を然るべき形で鳴らしてあげたい、曲の役に立ちたいと思っているので、その場に臨むわけですけど、そういう不安は目の前のお客さん達が全部払拭してくれるんですね。ジャーン!って音を出して、それに対してのお客さんのリアクションが『何ビビってるんだよ、大丈夫だよ! 行けるよ! 自分の曲の力、信じろよ! テレビの向こうにも絶対届くよ!』って言ってくれているかのようで。あの場にいてくれたお客さん達の、飛んだり跳ねたりが、あの場にいなかったお客さんまでの確かな音の道筋みたいなものを見せてくれたというか、想像させてくれたっていうか。『ああそっか、大丈夫だ』と。もっともっと自分達の音楽の可能性を信じさせてくれて、結果、『目の前に居ない人達にもきっと届く』と思って演奏できて、それがとてもよかったです。本当にみんなに力を借りて、あの場に立つことができたと思いました」

■実際、皆さん、目の前にいない方々。たとえばご両親とか、遠い親戚の方とか、いろんなリアクションがあったと思うんですが。

升「ついこの間、父親が『ゴルフ友達が観てた』って言ってた(笑)」

直井「ははは、そういうの嬉しいよね!」

■それはまさに顕著な紅白リアクションだね。

升「どういう付き合いなのかもわからないけど、たぶんそういう人はライヴにも来ないだろうし(笑)、そこで引っかかって観てくれたっていうのがあったんだろうなって」

直井「『これ、升さんとこの息子さんだ』って思ったんだろうね(笑)」

升「(笑)それで『観たよ』って言ってくれたっていうね。父親的にそれをわざわざ伝えてくるっていうのは、あんまりないことなんだろうなって」

 

(中略)

 

1:GO

 

■この曲は新録の中でも割と早くでき上がった曲なんじゃないかと思います。

藤原「僕が書いた(シングルなどの既発曲以外では)順番としては、2番目か3番目だったと思うんですけど、アレンジを進めたのはこの曲が最初、みんなには最初に聴いてもらった形になりました」

直井「“GO”はもう、聴いた瞬間に『来ました! これが今回アルバムのリード曲だ!』ってハッキリ思って。僕、めずらしく散歩しながらイヤフォンで聴いたんですよ。そしたら画がバーンと浮かんできて……こりゃあいいな!っ。それでスタッフに電話して『俺、こういう画が見えた!』って言ったら、『あ、そうですか』みたいな(笑)」

■淡々と返されたんだ。

直井「いやいや、淡々とっていうか……ただただフラットな(笑)」

藤原「単なるひとつの意見としてね」

直井「そうそう。僕だって『こうしてくれ!』とか、そういうことを言いたいわけじゃない。『とにかく僕は感動した』っていうことをスタッフに伝えたんです。さっきも話したんですけど、ヒロとヒデちゃんと3人で集まって、お互い自分がこうしたいっていうのをひとつのプロトゥールスに入れて、徹底的に解放していってみよう、と。“GO”の時は、今のとまた違うバージョンも作っていて、それを1回藤原くんに来てもらって、聴いてもらって、『ここはハットがストレートになってノリがよくなったし、俺もこういう解釈もちょっと考えてたんだよね。でもどうなんだろう? 俺もわかんないや』っていう、みんなで議論できるような感想をもらって、藤原くんはまた別の曲のアレンジに戻っていくっていう。その(流れの)すべてが始まったのが“GO”です。このアルバムの作り方が決まったのが、この曲ってことだよね」

■今チャマが言ってくれたことって、たとえばBUMP OF CHICKENサウンドっていうものが確立する前にバンドがやっていくようなことなんじゃないかなと思うんです。つまり、新人バンドがファーストアルバムを作る時のようなコミュニケーションと会話を、僕は今聞いているような気がしたんだよね。

直井「説明すると長くなるんですけど……僕らガラパゴスバンドなので」

■(笑)確かに。

直井「日本で独自の進化を遂げた携帯電話を、今の若い子は知らないかもしれないんですけど、ガラケーって呼ぶんですけど。そのガラっていうのは、ガラパゴスっていう島の名前が由来なんですけど。そこでは独自の進化を遂げた動物達が……」

藤原「そこではね(笑)」

増川「ガラパゴスの説明をしなくてもいいんじゃない?(笑)」

直井「知らない人もいるかもしれないでしょう!? ガラケーって言っても今の若い子はわからないでしょ? 『僕らガラパゴスバンドなんです』って言っても『は?』ってなるでしょう?」

増川「そっか、意味わからないか」

直井「うん。だから、僕らって……『ガラパゴスバンドなんです!』」

■はい(笑)。

直井「さっきも話した通り、元々は4人は友達としていたんですよ。で、いろんなバンドの人と出会いますよね。20年もやってればいろんな人と出会いますよ。そしたらやっぱりバンドメンバーの成り立ちって、『俺がライヴハウスでヴォーカルやってて、隣町にすげぇギタリストがいるって聞いて、その時に誘ったのがコイツ!』とか、そういうのが普通なんですよ(笑)。音、音、音っていうのが合わさったものがバンドっていう。海外でもそうですよね。『あの地区であいつより早くツーバスが踏めるヤツはいなかったぜ。頭ひとつ飛び抜けていたあいつを俺が引き抜いたのさ。笑えるだろ、鹿野。ハハハ』みたいな(笑)。でも僕らはそうじゃなくて、ただ、仲よかっただけなんですよ(笑)。で、仲のいいやつらが音を出して、こんなのになっちゃって。だからアレンジの仕方も言ってしまえば独自で、音の録り方とかコードも独自で、それが今現在も進行形でね。……まぁ、セオリーはありますけどね。でも最近は、独自は独自なりに、悪い部分もいい部分も持ちながら、ガラパゴスバンドとしてここまで来ていて。メディアの出方も明らかに下手ですよね。メインストリームというものがあるとしたら、それとは異なる出方をしていますからね」

(続きは本誌をチェック!

text by鹿野 淳

『MUSICA3月号 Vol.107』